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画文の人、太田三郎

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このマガジンで取り上げるのは、明治大正期にスケッチ画や絵物語で活躍した太田三郎という画家である。洋画家として名をなしたが、わたしが関心があるのは、スケッチ画の画集や、絵葉書、伝承…
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#婦女界

太田三郎『欧洲婦人風俗』を読む(中)

 さて、『欧洲婦人風俗』には6枚の女性画像が収められ、その画像の裏に解説文が印刷されている。  今回は、前半の3枚の絵を紹介することにしよう。  原文は総ルビ、すなわち、すべての漢字にふりかながうってあるが、引用に際しては適宜取捨した。 1 アルサスの女  まず、画像をみていただこう。  印刷は三色版であるが、三色版については稿を改めて説明することとしたい。  貼り込みといって、図版は別に印刷されたものが、厚手の凹凸のあるモスグリーンの紙に貼り付けられている。  グラ

太田三郎『欧洲婦人風俗』を読む(上)

1 太田三郎の渡欧  太田三郎は、第7回文展に出品した《カツフエの女》で受賞した後、欧州にわたることを模索していた。しかし、実際渡欧したのは、大正9年(1920)から同11年(1922)にかけてであった。渡欧が遅れたのは、第一次世界大戦(1914−1918)のためであった。  父不在の時に生まれた3男は、父の渡欧の船の旅にちなんで浪三と名付けられた。  美術界をとりあげた『藝天』という雑誌があって、1928年12月号に「昭和美術名鑑―百家選第十七―太田三郞氏」という記