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画文の人、太田三郎

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このマガジンで取り上げるのは、明治大正期にスケッチ画や絵物語で活躍した太田三郎という画家である。洋画家として名をなしたが、わたしが関心があるのは、スケッチ画の画集や、絵葉書、伝承…
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#多色石版

太田三郎の雑誌口絵の切り抜き

 知人から、太田三郎の雑誌口絵の切り抜きをいただいた。当方が太田のことを調べていることをご存じで、古書市で見つけて送ってくださったのである。  多色石版である。高精細画像なので、木の幹を拡大していただくと、石版特有の紋様が見出されるだろう。  太田は雑誌(『女学世界』や『少女画報』など)の表紙画や口絵を多数描いている。  これは女性像から見て、女学生対象の雑誌ではなく、成人女性を読者とするいわゆる婦人雑誌に掲載されたのではないかと推測される。  「社頭の杉」という語で、

太田三郎の絵葉書 《もも草の》

 太田三郎の絵葉書を紹介しよう。   1 雑誌『文章世界』の付録  宛名面の切手部分の表記で博文館の雑誌『文章世界』の付録であったことがわかる。『文章世界』は博文館発行の文芸投稿雑誌。明治39年3月創刊、大正9年12月まで、臨時増刊を含め全204冊を発行した。  太田は『ハガキ文学』で活躍した。『ハガキ文学』の発行元、日本葉書会は博文館の系列であり、その縁で太田は、博文館発行の『文章世界』や『女学世界』の付録絵葉書の絵を描いている。  付録絵葉書は雑誌巻頭に挟み込まれ、ミ