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画文の人、太田三郎

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このマガジンで取り上げるのは、明治大正期にスケッチ画や絵物語で活躍した太田三郎という画家である。洋画家として名をなしたが、わたしが関心があるのは、スケッチ画の画集や、絵葉書、伝承…
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#文章世界

太田三郎の絵葉書 《猿曳き》

1 「猿曳き」とは  検索によって、博文館の雑誌『文章世界』第3巻第1号(明治41年1月15日)の付録絵葉書で《猿曳き》という題がついていることがわかった。  上端にミシン目の跡がついている。  雑誌の付録絵葉書は、刊行されたときの季節感を重視している。  《猿曳き》は猿回しのことだが、正月の季語としてあがっている。  また、猿が描かれているのは、明治41(1908)年が戊申のさる年であったことにちなんでいる。  『日本の歳時記』(2012年1月、小学館)では「猿曳き

太田三郎の絵葉書 《もも草の》

 太田三郎の絵葉書を紹介しよう。   1 雑誌『文章世界』の付録  宛名面の切手部分の表記で博文館の雑誌『文章世界』の付録であったことがわかる。『文章世界』は博文館発行の文芸投稿雑誌。明治39年3月創刊、大正9年12月まで、臨時増刊を含め全204冊を発行した。  太田は『ハガキ文学』で活躍した。『ハガキ文学』の発行元、日本葉書会は博文館の系列であり、その縁で太田は、博文館発行の『文章世界』や『女学世界』の付録絵葉書の絵を描いている。  付録絵葉書は雑誌巻頭に挟み込まれ、ミ