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画文の人、太田三郎

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このマガジンで取り上げるのは、明治大正期にスケッチ画や絵物語で活躍した太田三郎という画家である。洋画家として名をなしたが、わたしが関心があるのは、スケッチ画の画集や、絵葉書、伝承…
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2024年3月の記事一覧

太田三郎『欧洲婦人風俗』を読む(下の3・最終回)

 今回が最終回である。  太田三郎の『欧洲婦人風俗』は、太田が渡欧した際に見聞した女性の衣装について、6枚の三色版による図版と、解説文によって示した小冊子である。  版元の婦女界社は、『婦女界』という女性雑誌を発行していた。雑誌『婦女界』の何らかの懸賞当選を記念する冊子であった可能性が高い。 1 カンパニアの野で  6枚目の絵の題は《ローマの夕》である。  解説文は次のように、まず、ローマのカンパニアの野について記している。  「鴎外さんの「即興詩人」」とあるが、

太田三郎『欧洲婦人風俗』を読む(下の2)

『欧洲婦人風俗』には6枚の女性画像が収められ、その画像のページの裏に解説文が印刷されている。  今回は、5枚目の作品を紹介したい。 1 ギリシヤの余薫  さて、5枚目は《ギリシヤの余薫》という作である。  解説文は次のように始まる。  ドーデーはフランスの作家アルフォンス・ドーデー(1840−1897)のこと。「アルルの女」は、短編小説集『風車小屋だより』に収録されていたが、1872年に劇化されてパリのボードビル座で上演された。ビゼーが音楽を付け、ファランドールやメ