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レイニーブルース

雨がしっとりと降る金曜の朝、自然と部屋の灯りをつけた。
暗い分厚い雲が空をおおっていた。

梅雨にはいる前から、雨天用の靴をさがしていた。
子供が履くピンクや黄色のでもなく、地元のおじちゃんが履く黒いゴム長でもなく。
機能性と見た目を兼ね備えた、すーぱーれいんしゅーず。

去年買ったconverseの真っ赤なレインスニーカーは、雨に濡れると予想以上に重く、履きなれないハイカットのせいで両足首はミミズ腫れになった。
2回ほど履いたら、きれいに箱に戻してBIG AMERICAN SHOPに売りに行った。
どこかの誰かと雨の日を楽しんでいることを願おう。

3年前アウトレットで一目惚れした真っ黒なエナメルのパンプス。
ヒールが太く、靴底にすべり止めがついているし、防水スプレーもふりかけた。
履いて出かけた日の午後、雨はすっかりあがり、代わりに眩しい日射しが降り注いだ。
汗ばんだ素足にエナメルの靴。
摩擦が摩擦をよび、会社の救急箱にあった絆創膏を使い果たした。
文字通り血と汗がしみこんだエナメル靴は、玄関先のちょいオシャなインテリアとなった。

わたしはいつも2択で間違える。

心配性と大雑把な性格がないまぜになって、ここぞという時にはずす。
雨天用の靴すら満足に買えないし、色落ちしないと信じた服に裏切られる。
何度酔いつぶれても「飲む」を選ぶし、もう一生飲まないと公言しても「飲む」を選ぶ。
大事な人ほど傷つけたくなくて、「遠ざける」を選ぶ。
そしてまた「飲む」を選ぶ。

なんでこうも、50%の勝率に見放されるんだろう。

…ん?
…勝率ってなんだ?
それぞれの選択で、選ばなかった道が正しいのか?
雨の中、おしゃれなレインシューズを履いたら、ビクトリーなのか?

自分という固定概念に、一番とらわれているのは自分だった。

結局、今年の梅雨に、わたしの靴さがしは間に合わなかった。

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