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デザインを重ねる - DesignShip2023 登壇プロローグ

こんにちは!株式会社ゆめみでUIデザイナーをしています竹田です。
今回は9月30日(土)〜10月1日(日)に開催されるDesignship2023にダイアモンドスポンサーとして協賛するゆめみより、スポンサーセッションにて登壇する予定です。
自分の登壇日時は10月1日(日)17:50〜18:00になります。

デザインシップについて
https://design-ship.jp/2023

産業革命によって誕生した「デザイン」は、
現代にいたるまでその意味と対象を広げ続けてきました。

いまやデザイナーがすべてのデザインを司るのは実質不可能。我々は数多ある星の中から星座を見出すがごとく、
氾濫したデザインに意味づけをおこなう必要があります。

Designshipはデザインが広がりすぎたそんな時代の中で、
デザイナーひとりひとりの物語に沿って、
デザイン同士を接続する機会を提供します。

最前線のデザインを学び、第一線のデザイナーと語り合う、年に一度のデザインの祭典をお楽しみください。

引用:公式Webサイトより

広がりすぎたデザインを、接続する。とは

今回登壇するにあたって、Designship2023で新しくなったコンセプトを改めて見返してみました。

広がりすぎたデザインを、接続する。

以下のnoteにはこのように書かれている背景から今回コンセプトが新しくなりました。

デジタル・プロダクト・グラフィックのデザインの壁を壊したいと思っていたのにも関わらず、今やこの時代、そもそもその枠にとらわれない「デザイン」の領域で活躍している人が、私たちが思っているよりもずっと多かったのです。

引用:公式Webサイトより

そしていまデザイン業界が抱えている課題、つまりデザイナーの役割やデザインという概念が広がりすぎたことから、ひとつひとつ自分によってのデザインを見つけ結びつけることがが役割なのではないかとまとめています。

このコンセプトを観たときにとても自分は共感しました。そして共感したと共ににどのように自分がデザインを繋げていくのかを改めて考えるきっかけにもなりました。

見返す過程の中で実はコンセプトにある言葉が隠れているような気もしたのです。

『広がりすぎたデザインを、「どう」接続(して)「なに」をする。』

この言葉の中に実は「どう」(HOW)と「なに」(WHAT)のふたつがあるのではないかと考えました。
そしてこの二つに焦点を当ててみて今回の登壇で話す内容を考えた時に結論としてこのような登壇テーマになりました。

話す内容を考えていくうちに10分というセッションには収まらないことを伝えたく、プロローグとしてこの記事を書こうと決めました。
この記事ではHOWの「デザインを重ねて」に焦点を当てて、書いていきます。後半の「”オルタナティブ”を作る」についてはぜひDesignship2023に足を運び聞いてもらえると嬉しいです。

デザインを重ねる

ここからが本題です。「デザインを重ねる」とはどのようなことを意味しているでしょうか。
用語としては、すでにあるものの上に置くであったり、層を作るという意味合いで重ねる対象によって使われるケースにバリエーションがあると思います。
今回はどのような経緯で「重ねる」ことが重要だと気づいたのか、いくつかの視点で時系列に沿って話していきたいと思います。

「反復」を重ねること


歴史は繰り返される中で、反復を重ね進歩する。

大学4年次に黒人文化を対象に研究をしていました。特に南米戦争から公民権運動までの一連の歴史を当時の文献などを通して、解釈と分析をおこなう活動を主にしていました。

活動のなかで特に自分が着目したことは、黒人文化というのは反復の上になりたっているという点です。
それはマイナス的な意味合いも含まれていて、例えば奴隷制が撤廃されてもなお、投票権がもてなかったり、近年では特に警察による暴力などが発端になったBlack Lives Matterやシャーロッツヴィルのヘイトクライムのような潜在的な差別が一時的に表面化するような動きを例に、権利の獲得とそれに対する白人社会の反発という形のサイクルが、南北戦争から現代まで存在するといった点です。

一方で文化の進歩もこの反復が重ねるなかで起こっている点にも着目していました。
専門的な話が続きそうなので、一つこの反復を重ねていることの重要性が伝わる言葉を引用したいと思います。

確かに、アフリカの文化の天才性はその反復にある、と言えるでしょう。しかし、その反復の中で重要なのは、毎回新しい要素が加えられることです。各ステージでより高いレベルへと昇っていきます。斬新なアイディアが飛び出したり、作家や音楽家の創造力を経由して再構築されたリズムから新しいものが生まれたりします。

Michael Eric Dyson(Robert Glasper Experimentの楽曲 I Stand Alone より)

つまり大学時代で感じた「重ねることの重要性」は、反復を重ねることで積み重なった層から新しい価値を付与することで今までになかったところまで進歩できる、そんなメッセージを研究のなかで受けたのかもしれません。

自分の文脈を重ねる

同じくして大学時代に私はNYに留学をしていました。学生として住んでいたため学業に励んでいましたが、在米中にある企業でのインターンシップも経験しました。そこはボランティア活動をしたい企業のイベント開催などを斡旋するエージェンシーでグラフィックデザイナーとして参加しブランディングアセットなどの制作をしていました。(これが自分としても初めてのデザイナーの体験でもあります。)

NYと聞くと「人種のるつぼ」という言葉を思いうかべるかもしれません。アメリカ自体が移民で作られた国でもありますが、ニューヨークはさらにその象徴のような多種多様な民族が混在して暮らしている都市でもあります。一方で近年では人種・個性が重なり合うが、混じり合っていないという多文化主義的視点で、るつぼではなく「サラダボウル」であるという風に言われることが多いです。

これはインターン時でも同じく感じたことで、チームひとつとっても同じバックグラウンドをもっていないメンバーから活動を通して、それぞれが自分の特性を理解しながら業務に取り込むこと、常にインクルーシビティが考慮されながら働くこと、言い換えるのであれば自分の文脈を仕事の文脈に重ねることが普通であることに衝撃をうけました。こういった価値観が当然として行われている環境だからこそ、アメリカならず世界でも個性のたつ稀な文化が形成されているのだと自分は理解しました。

同時にCEO直下で働いていた自分が思ったこととして、経営層が事業を推進するために必要なことは何でも行っていたことに今の仕事の価値観のベースがあると感じています。

そういった自分の今の価値観のベースが築かれる中で、帰国し就職をします。

他者の重なりに「自分らしさ」が形成される

新卒として入社したデジタルマーケティング会社では、制作部の中で主にデジタル領域のプロモーションサイトや広告の制作を行っていました。4年制の非デザイン学部出身の自分にとっては、0から学ぶことになったこの環境で日々の業務をこなしながら、スキルを積み上げようと努力をしました。

配属されてすぐ自分にはOJT・メンターとして一人の上司がつきましたが、1on1でどのようにキャリアを積んでいくか話した時の言葉を今でも覚えています。「だれか一人が世話をするよりは、チームで成長させようと思っている」この言葉を言われた当時は、なぜそういう方針だったの分からなかったのですが、年次を重ねるうちに、0からの経験、まっさらな状態から入社した自分を色々な視点で育てようとしてくれていたのかもしれません。

自分が所属していたチームは、それぞれのメンバーが違うスキルセット・得意な領域を持っており、PJごとにメンターが変わることでデザインから、印刷・コーディングや運用まで、本当に幅広い経験をさせてもらいました。

その結果、自分は様々な人の経験・価値観の重なりに自分がいると感じました。つまりそれはさまざまな文脈が重なっている部分に、自分という新しい価値が存在しているということに気づいたのです。

そういった経験を通して、さらにデザイナーとして幅広いキャリアを目指すためにゆめみに転職をしました。

解釈を重ねること

ゆめみでは2018年のアジャイル、ティール組織を宣言から分散型の組織設計になっているため、採用や社内標準化(組織運用)も専門部門によってのみ管理されているわけではありません。自分もクライアントワークのプロジェクトに参加しながら委員会(業務改善などの社内活動)、採用、インターンなど幅広い業務を1年間を通して行ってきました。

一方でその手広さのなかで自分が今後、力をいれたい・やりたいスコープが定まっていないと感じていました。

そんな中ゆめみのデザインブランドを定義するプロセスで行われた、デザインブランドづくりのワークショップに参加しました。

詳しいワークショップの内容についてはこちらをご覧ください。

デザインブランドの素材としての「言葉」と「イメージ」を手に入れるのが目的であったこのワークショップでは、前半に「自分がデザインに関わる、またはデザイナーとしてやりたいこと」を直感的に画用紙に描くことを行いました。描いたビジョンアートを通して自分の解釈を絵にするだけでなく、そのあとにスリーピースダイアログで相手のアートに対しても解釈を重ねることをしました。

前半ではこの私(I)同士で絵を描き、解釈を乗せることで、自分が伝えたいことだけでなく相手の解釈を通した自分が表現を逆輸入する形で取り入れることがとても興味深いワークでした。他者という鏡に映った自分を見つめるような感覚を受ける体験でもありました。

後半のワークでは、私(I)の表現があることを踏まえて、大きな画用紙にメタファーを用いながら私たち(We)を描くことを行いました。

このワークで一番興味深かったのは、描き手はそれぞれ自分のエリアを埋めていくかたちで描き進めていくのですが、徐々に真っ白なキャンバスが減り、ほかの人のエリアに交わらざる得ない状況になってきます。そうすると自分の表現をどう絵として書いていくかから、他者の絵の交わりの中でどう表現を変化できるかを考えるようなっていた感触を覚えました。
キャンバスの余白に反比例して、絵の交わりが増えていくと、描き方が大胆になったり、勢いで表現を変えてみたりするようなことが見え始めてきたのも面白かったです。

最終的にこの交わりがある状態、絵の重ね合いが起きている場自体が、複数の人が集まる「らしさ」を醸し出す全体性を作り出していると自分はワークを通して感じました。

このワークを通して感じたことは、

  • すでにあるものに何を重ねるという行為(解釈や絵自体を重ねるということをワークショップで行った)が自分にとって興味深いと思った理由は、サンプリング・リファレンスして、新しい解釈をつけること。そしてそれは大学時代で研究してきた過去を参照しながらも、自分の視点・文脈を載せて新しい影響を作り出す「反復を重ねる」に近いこと。

  • 自分が培ってきたもの使い、相手の状況踏まえた、組織活動をよりよくするための「重ね方」を伝えることが、いま自分が注力したいことだと気づいた

重ねることを仕事にする

自分に内包するさまざまな重なりを外に出して、伝えていくことが自分のやりたいことだとこのワークショップで気付かされたタイミングで、もうひとつ新しい活動に参加し始めました。

それがゆめみのデザイン事業であるデザインイネーブルメント事業への参画です。デザインイネーブルメントとは簡単にいうと、様々な組織活動に非デザイナーもデザインを使って事業の推進をする支援でありますが、単に誰でもデザインを使える状態にするのではなく、デザインを使って現在よりもよりよい状態になることを重ねることで、デザインをわかるようになる、できるようになる、あたりまえになるといった状態の度合いを高めることが活動のポイントでもあります。

自分はこの活動に参加してから、自分達が行ってきたデザインの使い方「重ね方」を伝えていく活動だと捉えるようになり、お客様の文脈にいろいろな重なりを作ったり、文脈の中に補助線を引くことで自社らしい重なった光景を自ら作ることが出来るようになる活動であると感じています。

そう捉えるようになってからデザインブランド作りワークショップのなかで感じた、これから自分がやりたいと思っていたことと、デザインイネーブルメント事業で行なっていることがマッチしていると感じ始めます。

オルタナティブへ

自分の長くないキャリアのなかで、以下の3つの価値を創るために「重ねる」ということが重要だと気づきました。

  • 新しい価値を作る

  • 個性を浮き上がらせる

  • 物事がかさなり、個々が交わっていない状態であること自体が、「らしさ」をもった全体性を作り出す

そしてこの重要だと感じた3つのことを踏まえて、重なりを使いクライアントに向けてデザインをすることにいま自分の興味があり、見つめています。

さらに後半では、この重なりを使って何を作るのか、「新しい価値」について”オルタナティブ”をキーワードに話していきたいと思います。

続きはDesignship2023で!

登壇を見れなかったかたに向けてフォローアップnoteを公開予定ですので、そちらもご覧ください👋🏻

最後に

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