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ブームは遅れてやってくる【サウナのサチコ「裸の粘土サウナー」第23回】

サウナ支配人や熱波師をかたどった粘土造形を手がけるクリエイターにしてサウナー・サウナのサチコのサウナ訪問記。「ととのった」と感じるまで半年かかったという不器用サウナーならではの独自目線で、サウナ施設と、そこに働く人々の魅力を切り取ります。

関東も梅雨に入り、気圧や湿度の関係なのか、肩の痛みが増してくる。

前回の記事にも書いたが、私は肩インピンジメント症候群というものを患っている。肩周りの関節が痛み、腕を回せないというのが主な症状。しかし最近では回すどころかまったく動かせなくなり、じっとしていても痛い。原因は様々だが、若い頃に野球などの肩を回すスポーツをやってきた中年に多いという。つまりこれは、遅れてやってくる病気なのだ。

もちろん私は野球などやったことがない。肩を回すスポーツどころか、スポーツ自体やった経験がない。そのため遅れてやってきた病気の原因はよくわからない。原因もよくわからないのに、しばらくこれと付き合っていかねばならないなんて。まったく厄介なマイブームである。

ちなみに私は病気だけでなく、何事においてもマイブームが遅い傾向にある。

例えば、世の中が韓流ブームだった頃、私はそれに全然興味がなかった。しかしブームが去って数年経った後に、急に私の中に韓流ブームがやってきた。好きな韓国俳優に会うために私は様々な推し活をした。グッズ購入にバイト代を投じ、ファンミの抽選に当たるようにハガキに細工をしたこともあった。しまいにはその俳優が自分の書いたドラマに出演してくれることを夢見て、経験もないのにシナリオの学校にまで通った。

私の中の韓流ブームは1年ほどで去っていったが、シナリオはその後10年続いて散っていった。これが一番大きなマイブームだったと言える。

もっと身近なもので言えば、飲み物がある。タピオカだ。

数年前に日本で大流行し、街には軒並みタピオカ屋が出店した。当時は全然興味がなく、行列を見ては何であんなゴムみたいなものが良いのかと思っていた。しかしそのタピオカブームが遅れて私のところにやってきた。

出社日には職場近くのカフェチェーン店で、昼の弁当より高いタピオカを買う。我慢できずに歩きながら太いストローですする。「今頃ブーム?」と同僚に笑われながらも、ついこの間まで夢中になって飲んでいた。

そして最近のマイブームは「こんまり」である。

片づけコンサルタントで有名な、世界に影響を与えた女性、近藤麻理恵さんだ。今も大人気の女性ではあるが、世間的には一つのブームを終えた感がある。しかし私の中では今最も輝いている女性だ。

肩インピンジメントのおかげでスマホを持つことも辛くなった私は、SNSから離れたことで生まれた時間を持て余し、YouTube を開くようになった。そこで出会ったのがこんまりチャンネルである。

画面をじっと見ていると首肩が痛くなってくるので、音だけ聴いている。お片づけ動画なら「見る」ものだろうと思われるかもしれないが、こんまりさんの話は「聴く」だけでも面白い。

彼女の本がブームだった十数年前は「ときめく」という言葉がなんとなく気持ち悪くて嫌だった。前向きで素直で自立しているという、自分にない要素を持っている女性に嫉妬していたのかもしれない。

しかしブームが落ち着いた今、ようやく彼女の言葉が入ってくるようになってきた。改めて「ときめく」とはどういうことか、それを選び続けた先に何が見えるのかを素直に聴けるようになった。ただ、未だにこんまりメソッドを試すことはなく、私の部屋は汚いままなのだが。

ここでようやくサウナの話になる。

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