かなしいことばかり[散文]

"過去と未来の消えてしまったあなたへ捧ぐ"


進むことも戻ることもできずに
身動き取れぬまま、
きょうもかなしい話をみたよ。


背中の真ん中まで伸びた艶めく黒髪を、
頭の高い位置でギュッと一纏めに結びながら
「こうすると気合いが入るのよ。あと少し、もう少しだけって踏み止まれるの」
って、振り返り笑いかけてくれたあなたの背中が、今はこんなにも遠い。

もう二度と追いつけぬと知りながら、
それでもあなたに焦がれて焦がれて手を伸ばし、
そうして夢半ばで目を覚ます。


またきょうもかなしい思いをしたよ。
それなのに自分の体一つ満足に動かせぬことに苛立ちながら、
あの日のあなたを思い浮かべては、
驚くほどの消失と空白にただひとり立ち尽くしている。

あなたの揺れるポニーテールも、しゃんと伸びた背中も、優しい眼差しも、弾ける笑い声も、もうどこにも見当たらないことに、打ちのめされたまま。