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『幽霊花婿』を読みました。

『スケッチ・ブック』という著者の短編集に収録されている作品のうちの一つらしい。
短編とあって他も15〜30Pほどなのでさくっと読める。該当のサイトでいくつか公開されいたのですっかり読み耽ってしまった。

これがもしちょっとしたミステリー寄りの話なら、きっと花婿の正体を隠した上で物語が進んでいたんだろうと思う。
でもそういった類の話ではなく、逆をいうと変に勘ぐりながら読む必要がなく集中できて良かった。ここのところ、個人的に伏線がうんたらとか深読みする作品ばかり眺めていたせいもあって尚更。

顔もわからない花婿を待つ少女の期待と不安で落ち着かない様子も、彼女に世話を焼きながら好奇心が隠せない叔母たちの様子もありありとわかって思わず顔が綻んでしまったし、先の通り花婿がどうして遅れてやってきたかの真実を知っているから男がどうして動揺しているかもわかる。
男が花婿のフリをせざるを得なかった状況は花嫁の父親の性格と言動を見ているだけでよくわかり、それを『言葉の奔流』と表現しているのがすごく好き。

もう私が好きな要素しか詰まってないので、具体的にどこが良かったとか取り上げるのが難しい(私が感想文苦手っていうのも含めて)。
私好みの細切れじゃない文体と表現の仕方がとにかく素敵で、翻訳してくださった方にもただただ感謝。
本当に良い出会いをした。

他にも『船旅』『傷心』と15Pほどの短い物語があり、どれもおすすめ。