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2021.8.29 プレミアリーグ 第3節 リーズVSバーンリー マッチレビュー

代表ウィーク前最後の試合となったプレミアリーグ、リーズは今季初勝利を掴めたのか。
早速、試合を見ていこう。

スタメン

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<前半>(1)ゲームモデルの再確認

前節エヴァートン戦では、相手を押し込みながらもゴール前の迫力に欠けたリーズ、この試合ではビルドアップ局面で変化が見られた。

それは、相手DFラインの背後を狙ったボールの増加である。
スタッツを見てみると、前節のリーズのロングボール/総パス比率は7%(45/636)だったのに対して、今節は18.5%(83/560)と倍以上に増加している。

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エヴァートン戦のリーズは、相手の2ライン間のハーフスペースに選手を配置しボールを前進させていたが、今節狙ったのはそれよりも一つ奥のスペースである。

リーズの狙いが見えたのが6分40秒のシーン。

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エイリングの落としをフィリップスがダイレクトで背後へ送ると、バンフォードが反応し抜け出す。
ボールはGKのポープに処理されてしまったが、バンフォードが抜けると同時にロドリゴとハフィーニャが落ちる動きで相手DFラインを引き付けており、チームとして明確な狙いが見えた場面だった。

こうした背後へのボールは、リーズの試合において立ち上がりによく見られる。
しかし、今節は試合がある程度落ち着き始めてもリーズはロングボールを使い続けた。

なぜリーズは背後へのボールを多用したのか?

理由を3つ挙げたい。

①バーンリー守備陣の弱点
バーンリーの屈強なDFラインは、自分の前方の相手やボールに対してアタックするのを得意とする。一方で、背後へのボールや下がりながらの対応は彼らの弱点である。
ビエルサは、ロングボールを使いながら手数少なく攻めることで、そうした弱点を突こうとしたのだ。

34分のシーンでは自陣深くでボールを奪うと左WGハリソンが前線にロングボール、バンフォードがセカンドを回収しロドリゴへパス、最後は外から駆け上がってきたハフィーニャがシュートを放ち、決定機を作った。

②ゲームモデルの再確認
リーズのプレーモデルの特徴は、縦に速いバーティカルな攻撃である。
しかし、前節ではボールを前進させながらも中々相手ゴールに迫ることが出来なかった。
今節は、本来の目的である素早い攻撃とゴール前の迫力を取り戻すために、ビルドアップ局面での複雑な繋ぎを省略し、シンプルに背後を狙う意識を植え付け、試合に臨んだのではないか。

③リーズの人選
前節との変更点は、右CBジョレンテとCAMロドリゴである。
まずジョレンテだが、彼はバーンリーの高さ対策であったと考える。
ジョレンテが入ったことでDFラインの強度は上昇したものの、攻撃面で出来ることは減った印象だ。
リーズのビルドアップ拠点だった右サイドの陣容が変わったことで、ビルドアップでの前進が難しくなり、ロングボールが増えていったのは否めない。

もう1人のロドリゴは、前節スタメンだったクリヒと比べストライカータイプであり、得点やセカンド回収を期待されての起用であった。
一方で、11分のボールロストのように、狭いスペースでのプレーはあまり得意では無かった印象で、これも前節とは違う攻撃となった理由の一つであろう。

ただ、こうした人選による変化はネガティブにもポジティブにも捉えることが出来、一側面を見て判断するのでなく試合全体を見て判断しなければいけない。

<前半>(2)噛み合わない攻撃

では、この変化はリーズにとってポジティブに作用したのか。
私の答えは「ノー」だ。

リーズは前半にシュート6本を放ったもののゴール期待値(×G)は、シュート3本のバーンリーより低い数値であった。

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バーンリーは4-4-2でハーフウェイ又は相手陣の接線付近で構えるブロック守備を採用、DFラインは低めに設定されていた。
これによって、リーズが狙っていた背後のスペースは消されてしまった。
相手の構えているスペースにボールを送り込んでも効果的な攻撃とはならない。
リーズは、8分30秒、9分20秒、13分20秒とバーンリーDFラインへロングボールを送るが、簡単に対応されてしまう。

一方で、前述した34分のシーンのように、バーンリーに押し込まれた状態からのカウンターではチャンスを作っていた場面もあった。

リーズの攻撃が上手くいかなかった要因としてもう一つ、バーンリーの攻撃について見ていきたい。

バーンリーの攻撃はリーズよりもさらにシンプルな形だった。
ボールを奪ってからまず見るのは2トップのウッドとバーンズ。
ボールの質もスペースに落とすようなパスではなく、アバウトに対空時間の長いボールが多かった。
2トップにボールが収まると、少ないパスでシュートまで行くかサイドに展開しクロスで攻撃を完結させる。

この攻撃の鍵を握るのはやはり前線の2人である。
この試合も2人で7回ずつ計14回の空中戦勝利を記録し、バーンリーの攻撃を牽引した。

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さらにこの日のバーンリーで印象的だったのが、攻撃→守備のネガティブトランジションだ。

前述のようにバーンリーは4-4-2で構えるブロック守備を基本としていたが、攻→守の切り替えのタイミングではラインを押し上げ積極的なプレスを行った。

例えば24分50秒のシーンでは、ウッドへのロングボールをリーズDFに回収された所からプレッシャーをかけ、グズムンドソンがインターセプト、その後バーンズがPA近くでファウルを受けFKを獲得した。

私は、こうしたバーンリーのカウンタープレスもリーズの攻撃のリズムが上がらなかった要因の一つだと考える。

一方で、前半のリーズ側でポジティブな要素として挙げられるのがGKのメリエだ。
バーンリーの攻撃はサイドからのクロスやセットプレーが多かった中で、積極的に前に出てクロスボールを処理し、チャンスの芽を事前に刈り取っていた。

<後半>(1)3万点目に至るまで

後半に入ってまず主導権を掴んだのはバーンリーだった。

前半との違いとして守備時の意識の変化を挙げたい。
前半のバーンリーはネガトラ時以外ではラインを低めに設定し、ブロックを構えていたが、後半に入ってより前線でボールを奪いに行く意識が見えた。

具体的な変化は、右SHグズムンドソンのポジショニングだ。
前半はリーズの3バックに対して2トップが監視する形だったが、51分30秒のシーンのように、リーズの左CBクーパーまでグズムンドソンが出ていく事で3対3の状況を作り出していた。

このバーンリーの変化は、前半のネガトラ時のカウンタープレスがうまくいっていた事で、自信を持ってプレッシングに移行することが出来たのも大きかったのではないか。

一方でリーズは、本来の狙いでありバーンリーのDFラインが高くなった事で空いた背後のスペースを効果的に活用する事が出来なかった。

61分CKのこぼれ球をロートンがボレーシュートすると、クリス・ウッドがGKの前でコースを変え、バーンリーが先制点を決める。

プレミアリーグ通算3万得点目のメモリアルゴールであったが、ここでは、その起点となったCK獲得に至るまでに注目したい。

59分30秒、リーズがファウルを受けハーフウェイ付近からリスタート。
このボールがリーズの右CBジョレンテに出ると、バーンリーの左SHマクニールがプレスをかける。
ジョレンテ→ハフィーニャ→ダラスと繋がったが、バーンリーのプレスを受け最終的にはGKポープが回収、バーンリーがボール奪取に成功した。

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これをポープはスローで右CBミーへパス、ミーからのロングボールをウッドが競り合い、セカンドをバーンズが回収し再びウッドへ、最後はウッドの落としを受けたマクニールがミドルシュートを放つとリーズDFへ当たり、CKを獲得した。

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CKまでの一連の流れを見ると、バーンリーは後半から見せたアグレッシブな守備でボールを回収し、得意のロングボールからの攻撃で自チームの得点源となるセットプレー獲得までつなげる狙い通りの形であった。

ただこのゴールを境に試合の流れはリーズに傾いていく。

<後半>(2)攻撃の活路は?

バーンリーは先制点を上げた62分以降、特に70分以降、それまで見られていたプレッシングが見られなくなり、ずるずるとラインが下がっていった。

これには1点リードを守り抜きたいという消極的なメンタルや終盤の疲労感が影響したと考えられる。

逆にリーズはこの変化を上手く利用して攻撃を仕掛けていく。
リーズが行なったのは、シンプルなクロス攻撃だ。
データを見ると、リーズのクロスは失点した62分までは8本だったのに対して、62分以降では19本と大幅に増加している。

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リーズは、前半のブロック守備より更に全体が下がったバーンリーに対して、そのブロックの外からのクロスやWGやWBが相手との一対一を仕掛けてからのクロスに攻撃の活路を見出した。

70分30秒はブロックの外から左WGハリソンのクロス、73分30秒はインナーラップした左WBダラスのグラウンダークロスでチャンスを作る。

すると、85分ジョレンテと代わって右WBに入ったシャクルトンから大外のハフィーニャへパス、ハフィーニャがバーンリーの左SBテイラーをシザースでかわしてカットインからシュート、これはDFにブロックされたが、こぼれ球をシャクルトンが再びシュート、DFに当たったボールを最後はバンフォードが押し込みリーズが土壇場で同点に追いついた。

その後はバーンリーが前に出てくる事でオープンな展開が続いたが、両者得点が奪えず試合終了、勝ち点1を手にする結果となった。

おわりに

リーズは今節もボールを保持しながら相手に先制を許す苦しい展開。
守備ではマンツーマンによりボール奪取には優れている分、相手のストロングが出てしまうのは仕方がないように感じた。
一方で課題は攻撃面だ。今節は第一優先として相手の背後を目指す意識が見られたものの、チャンスを多く作れなかった。
ただ、70分以降のサイド攻撃とクロスには迫力があり、実際得点にも繋がっている。組織全体で相手ゴールをこじ開けられない時には、個人の質で相手を上回ることも必要である。
そうした点を踏まえても、マンチェスターユナイテッドから獲得したマイケル・ジェームスには次節以降注目したい。

バーンリーは、キックandラッシュの古典的なサッカーを体現するチームであるが、その中にも現代的な守備組織やプレッシング構造が組み込まれていた。この試合でも自分たちのストロングを出しながら、積極的な守備から流れを掴んだのは見事だった。一方で、得点後の消極的なサッカーは非常にもったいなかったように感じる。試合の終わらせ方、終盤の運動量は代表ウィーク中のバーンリーに残された大きな宿題である。








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