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2021.8.21 プレミアリーグ第2節 リーズvsエヴァートン レビュー

満員のエランド・ロードで迎えたホーム開幕戦、リーズは今シーズン初勝利を掴めたのか。
早速、試合を見ていこう。

スタメン

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<前半>(1)内と外の使い分け

試合全体を通してポゼッション率はリーズ70%:エヴァートン30%、より長い時間ボールを保持したのはリーズの方であった。

無理してプレスには行かず、4-4-2(4-5-1)のブロックを組むエヴァートンに対してリーズはどのように振る舞ったか。

リーズの狙いは相手の2ライン間のハーフスペース(CB-SB-SM-CMの四角形)にボールを運ぶこと。

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その狙いはキックオフ直後のプレーから見ることが出来た。

まずは30秒のゴールキックのシーン。GKメリエからのパスを右CBエイリングが受けるとロングボール、これが落ちてきたFWバンフォードを超えて右WGハフィーニャまで繋がり、前進に成功する。

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また、1分過ぎからのビルドアップでは、後ろの3枚でボールを動かしエイリングからサイドに張ったハフィーニャへロングボール。
そこからハフィーニャ→OMFクリヒ→ハフィーニャ→バンフォードへとボールが繋がりチャンスを作った。

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ここはバンフォードのトラップがズレてシュートまで行けなかったが、相手ブロックの内側へ素早くボールを運び、ゴール前にスペースを作り出すというリーズの狙いが見えた攻撃だった。

ハーフスペースを執拗に狙うリーズに対して、エヴァートンのSMは内側を締め縦パスを通させないポジションを取るようになる。
するとリーズは11分、ハフィーニャが一列落ちてエヴァートンの右SMグレイの前でボールを受け内側に絞った右WBダラスに横パス、ダラスからクリヒと繋げ再びハーフスペースへと侵入を果たす。

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相手が内側に絞れば外から侵入、外に開けば内から侵入とリーズのビルドアップは高いレベルで機能していた。
これには、アンカーのフィリップスの復帰が大きいだろう。
もちろん前節とは相手のプレスラインや強度が違うため完全に比較はできないが、相手の2トップと被らない位置に的確にサポートを取り続け、展開力もあるフィリップスはリーズにとって欠かせない存在である。

また、前節の課題であったネガティブトランジションでも7分20秒のシーンのようにFWに対してタイトに寄せる意識が高く、改善が見られた。

<前半>(2)ボール保持はリーズ、主導権はエヴァートン

こうしたポジティブな側面が多く見られたリーズだったが、先制ゴールを奪ったのはエヴァートンであった。

ここからは、得点に繋がったエヴァートン側の狙いとリーズがボールを保持しながら中々得点に至らなかった要因について述べていく。

まず、エヴァートン側の狙いは、後方から丁寧にボールを繋いでいくのではなく、少ない人数と手数でゴールを目指すことだった。

両チームの違いが表れていたのがゴールキックである。
リーズがピッチ全体に選手を配置し前進を図ったのに対して、エヴァートンは全体を同サイドに寄せ、GKピックフォードからのロングボールのセカンド回収を狙っていた。

また、エヴァートンの攻撃で鍵を握ったのは左SMグレイだ。
16分30秒のシーンでは、自陣で奪ったボールをピッチ中央で受けるとターンしてそのまま右サイドを突破、エイリングとクーパーを置き去りにし、グラウンダーのクロスを上げる。カルバート=ルーウィンが惜しくも間に合わなかったが決定機であった。

リーズの守備はマンツーマンベースであり、一対一の勝負が多く発生する。
エヴァートンはSMにグレイとイウォビというスピードに優れた2人を起用する事で、狙いである縦に早い攻撃を生み出すことに成功した。

これらを踏まえて先制点となったエヴァートンのPK獲得に至るまでを振り返ってみよう。
スタートはエヴァートンのゴールキックから。
リーズのCBが弾き返したボールをCMドゥクレがインターセプトし左のグレイへ展開、グレイが右WBダラスをドリブルで突破し、クロスを上げる。
このクロスは一度跳ね返されるも直ぐにCMアランが回収、リシャーリソンへパス。リシャーリソンのクロスは寄せてきた右CBエイリングに当たって左SBディニュの元へ、ディニュが再びクロスを上げると、ゴール前のカルバート=ルーウィンを左CBクーパーが引っ張ってしまい、VARでの確認を経てPK獲得となった。

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エヴァートンはゴールキックから始まった攻撃を、サイドでの一対一の優位性と手数をかけないシンプルなクロス攻撃で完結させた。
一方でリーズのDF陣は我慢し切れず安易なファールでPKを献上してしまった。

<前半>(3)トレードオフに悩ませれたリーズ

次に、終始ボールを握る展開だったリーズがなぜ中々得点に至らなかった要因について考えていこう。

私は主に2つの要因があると考えた。
①ゴール前の人員不足
②サイドの深い位置(ニアゾーン)への侵入の少なさ
である。

まず①について、リーズのビルドアップでは前述したように3CBとアンカーによって数的優位を確保しつつ、WB/WG/OMF/FWが流動的にポジションを動かしながらハーフスペースでボールを受けることで前進を行う。

このビルドアップにFWバンフォードが関わることで、ゴール前に位置取るリーズの選手が少なくなってしまい、シュートに結びつかなかったり、相手がどこにボールが出るか予測しやすい状況が生まれてしまっていた。

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具体的には9分、ダラスのクロスに対して中の枚数はニアにバンフォードと中央に左WGハリソンの2枚だけに、また32分のハフィーニャがミドルシュートを打ったシーンではPA内にリーズの選手が居ないというシーンが挙げられる。

この試合でリーズは3-3-3-1を選択した。このシステムは4-3-3に比べCBの枚数が一枚増える代わりに中盤の枚数を一枚削ることになる。
CBが増えた事で最終ラインでの数的優位によるボール保持は安定したが、ゴール前で後一枚が足りないというシーンが目立った。
結果としてボール保持の安定orゴール前での迫力というトレードオフの関係にリーズは悩まされることになった。

個人的には相手のプレス強度がそこまで高くなかった為、選手交代などで4-3-3へとシステム変更し中盤を厚くする、もしくはWB(特に左のフィルポ)がより積極的にゴール前に入っていく動きを増やすなどの工夫があればより良い攻撃になったのではないかと感じた。

②について、敵のハーフスペースまでボールを運んだ後、そのままサイドからクロスを上げても中々得点に結びつかない、またゴール前中央は相手DFに埋められている。
そうした状況ではより得点の生まれやすいサイドの深い位置までボールを運ぶことは現代サッカーの定石である。
こうしたニアゾーンへの侵入はリーズも得意としているが、この試合ではそういったシーンが中々見られなかった。
これにはリーズの選手の動き出しやパスの質にも原因はあると思うが、それ以上にエヴァートンの守備が大きく影響していると感じた。
それは、SMの献身的な戻りである。エヴァートンはブロックを組んで構える時に4-4-2で並んでいたが、自陣の近くまで押し込まれるとリーズのサイドの選手(WBやWG)の背後に抜ける動きに対してSMがそのままついて行く事で対応していた。これによりエヴァートンは6バック気味になり、ハーフスペースを完全に埋めることで、リーズのニアゾーンへの侵入を防いでいた。

シーンとしては、11分のシーンを挙げたい。
ハーフスペースでクリヒが前を向き、ハフィーニャが背後にランニングをみせるも右SMのグレイが戻ってスペースを埋めることでパスコースを遮断していた。

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終始ボールを握っていたにも関わらず、エヴァートンの強固なブロックとソリッドな攻撃に苦しめられた前半のリーズだったが、40分に同点に追いつくことに成功した。

エヴァートンのゴールキックがリーズのGKメリエまで流れると、FWリシャーリソンがそのままプレスを仕掛ける。ボールはメリエからエイリングへ渡り、エイリングからハフィーニャへロングフィード。ハフィーニャがフリックでバンフォードまで繋げ、CBを引きつけたバンフォードからOMFクリヒへスルーパス。抜け出したクリヒがゴール左へ流し込んだ。

ボールをリーズに持たせながらも、我慢強く守っていたエヴァートンだったが、失点シーンではFWがリーズのバックラインまでプレッシャーをかけた事で縦に間延びしてしまった。
ここまで狙い通りの展開でゲームを進めていただけにエヴァートンにとってこの失点は誤算だっただろう。

<後半> リーズの変化とエヴァートンの徹底

後半に入ってもリーズのボール保持とエヴァートンのブロック守備という構図は変わらなかった。
その中で、序盤チャンスを多く作ったのはエヴァートンである。

49分、ゴールキックのセカンドをイウォビがキープするとドゥクレ→グレイと繋がり、ダラスとの一対一を制したグレイが左足でゴールに突き差して逆転に成功する。
その後も52分、58分とそれぞれ両SMグレイ、イウォビの仕掛けからカルバート=ルーウィンが決定機を迎えるがここはリーズの守護神メリエがセーブし、追加点を許さない。

エヴァートンの攻撃の構図は前半と変わらず、サイドでの質的優位を活かしたものであった。
特に右サイドの攻防(グレイVSダラス)はミスマッチで、2失点目のシーンでもダラスが縦突破を意識するが余り、最も切らなければいけないファーサイドのシュートコースを空けてしまっていた。
エヴァートンとしては、多くのポジションをポリバレントにこなすが本職WBではないダラスのサイドを狙うのは共通認識としてあったのだろう。

実際にリーズは60分左WBフィルポに代えてシャクルトンを投入し、ダラスが左WBシャクルトンが右WBへとポジション変更を行った。
これはグレイに対する策の一つであったとも考えられる。

前後半と攻撃の形を変えなかったエヴァートンに対してリーズの攻撃には変化が見られた。
それは1トップバンフォードのポジショニングである。
前半は広範囲に動くことで味方のスペースを空ける動きなどが目立ったが、後半は中央にポジションを取る場面が増えた。

これは前半によく見られたゴール前の人数不足を解決するためだと考えた。
しかし、この変化はあまり上手くいかなかった。
FWの動きが少なくなる事で、サイドで2対2(WB+WG vs SM+SB)もしくは、3対3(WB+WG+OMF vs SM+SB+CM)の状況が生まれ、前半と比べハーフスペースからの前進が滞ってしまったのだ。

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前線の枚数を保ったままどのように前進するのかは、今シーズンのリーズに課された問題の1つである。

中々チャンスを作れないリーズだったが、72分FKのこぼれ球をハフィーニャがダイレクトでゴールに流し込み同点に追いついた。
エヴァートンは全員がボールウォッチャーとなってセカンドへの対応が遅れる悔やまれる失点となってしまった。

同点となった75分過ぎからは、互いに疲れが見え始めオープンな展開となったが、ゴールは決まらず2-2のまま試合終了、リーズは今シーズン初の勝ち点を手に入れた。

おわりに

シュート本数はリーズ17-エヴァートン17、枠内シュートは4-8、試合を通じてボールを握ったのはリーズであったが、主導権はエヴァートンにあったと言える。
リーズは、前節の大敗からビルドアップとネガティブトランジションには改善が見られたが、そこからいかにゴールに迫るかという点で課題が残った。また、守備面でも1対1の対応や最終ラインのカバーリング、終盤の運動量など修正点は沢山あるだろう。ただ、こうした難しい試合でも勝ち点を積み上げられたのはポジティブに捉え次節を迎えたい。
エヴァートンは、前節サウサンプトン戦でも見せた前線4枚の個性を活かすシンプルな攻撃と4-4-2の堅固なブロック守備で試合を優位に進めた。
それだけにドローは悔やまれる結果だろう。2つの失点は、完全に崩された形ではなく、集中力の欠如から生まれたものだった。
また、今後は相手チームがエヴァートンにボールを持たせてくる事も想像出来る。格下やBIG6に対してどういったフットボールを表現してくれるのか注目したい。


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