マキグレー

年末といえば第九。ベートーベンの交響曲第九番は、すでに暮れの季語になっているようだ。青年の若々しい曲なので新緑の時期が本来は似合うはずだが、日本では師走の冷たい空気とマッチしている。

昨日は両親が参加している合唱団の第九公演があり、清水港にあるマリナートというホールに出かけた。このホールは建築家槙文彦が設計している。

偶然、前日に槙事務所出身の友人にあって、照明等の話をした。槙さんは不自然な事が嫌いで、庭木等を地面から照らし上げるような事をしないなど、槙好みがあるとのこと。と言いながら、本人はそれほど自覚的ではないかも知れないと続いた。周りの所員が勝手に忖度してしまう事が多かったらしい。

白い壁のペイントを決める際にも、先輩に「槙グレーと言うのがあるんだ、日塗工の色見本帳など使っていてはダメだぞ」と言われて、塗装業者に何種類も色見本を揃えてもらったようだ。ところが、微妙すぎてロットによるバラツキがありすぎて大変苦労して、本人に相談してみると、「槙グレー?そんなのがあるんですか」と言われ肩すかしを食ったことがあるそうだ。

設計事務所の所員はある程度仕事を覚えると、何でもかんでも所長に聞いていたら悪い様な気がして勝手な忖度をして苦労する事があるという話だった。

ホールに入ってみると既に一階席は埋まっていて、二階席にいどうした。見上げる天井には、件の槙グレーと思われる少しベージュ掛ったグレーがあった。

ホールからの帰り道、日本平に夢テラスという展望台が話題になっているので寄ってみる事にした。もう夕暮れの時間だったが、急いで入ってみる。

外壁は木材をビス止めしてあり、天井なども木材のルーバーが施されている。室内に入った時の一瞬の感覚が、浅草の観光案内所を思い出させた。階段を上がり木造の屋根架構をみて確信した。そう、隈さんの設計でした。

Y

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?