ワインの言語表現の歴史的な流れ

ワインの味の表現というと,古くからの伝統があるように思える.
しかしシェイピンの研究(Shapin, 2012)によると,味質を詳細に表現するという動向は1970年代あるいは80年代以降というのが実情のようである.以下はシェイピンのまとめ.

16世紀から18世紀の文献では「甘いsweet,刺激的acute,厳しいaustere,マイルドmilde」という4つの語でしか表現されておらず,
20世紀以前では極めて少数の,good / bad程度で表現されていたという.

20世紀の初頭になると,André Simon や George Saintsburyの著作で,少数ながら比喩的な表現が見られるようになる.
ワインの味の表現を明確に扱った端緒は,アメリーン&レスラーの書籍 (Amerine, A., & Roessler, B, 1976)である.

1980年代になると,日本でも馴染みの深いロバート・パーカーらによる,ワインの言語的な評価がいよいよ幕を開ける.
代表的なものはAnn C. Nobleによる “Wine Aroma Wheel” ,Robert Parker の“The Wine Advocate” ,Peynaud, É., & Blouin, J. の“Le goût du vin” などである.

その後,1990年代にはワインの批評などの著作が活発となり,ワインを評価するボキャブラリィは急速に発展する.

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