孤独
「ねぇ?」
耳にひとつ声がした、その言葉に響く方向に視線を向ける、しかし何もなかった、視野を下におろすと足は前に進んでいた、体には足が前に進んでいる自覚はない。
周りには何もないあるのは自分の体と暗闇のみ、足は前に進んでいるのだから前には進んでいるのだろう。
「ま……‼」
次に聞こえた言葉、その声はどこか懐かしさを覚えていた、いや、知っているはず、誰の声なのか気になる好奇心によって、全体の血管に煮えたぎっている感覚にとらわれる。
視野を聞こえた方向に動かそうとする。
体は全く動かない
というより自分という精神と自分の形をしているそれは、別々に独立しているように感じた、体は無表情で足を前に進める、その一方で本心は色んな感情が渦を巻く。
微かに聞こえたその声に対する感情が主なのだがその中に目立っていたのは(恐怖)だった。
たったそれだけ。
何に臆しているのかはわからない、いや、わかるはずがない、何故なら記憶の最初のことばあるのは「ねぇ」の一言からのことなのだから。
無論、それ以前の記憶がない
それからのこと、感情は二立し始めた、一瞬で感じるものが二つでてきてどっちが本心なのか分からない、どちらも本心であり、どちらも建前になりうる、選択しようもない。
実際は全く変わらず、ずっと歩いてるそれだけ、これは紛れのない事実
もはや何も感じない
カーン!カーン!カーン!という騒々しいくも神々しい鐘の音が耳らしきものが耳を通して突然鳴り響く、その瞬間、精神体であろう、自分がぐにゃぐにゃになりなった、感覚に囚われる、それでもなお、自分の形をした物体は足を進めているのが音から察することは出きる、顔に関しては動かそうにも動けない
蛇足だが、最初から足音らしきもののテンポが全く変わらないのが一瞬気になったが、もはやそんなことはあたまの片隅にあっても、気には止めなかった
そんなことより、自分の体は次第に溶けているのだろう、精神体である自分のあたまからドロリと液体になり始め、それは自分の肌に当たって視界を通る。
非常に気味が悪い
自分の体が完全に溶けたころ、元の姿に戻ろうと一転に集まりだして、一つの固体になり、やっとの思いで体が造られ、また動けるようになり、ぎこちない動きで手前に突然現れた鏡に近ずく。
やっとの思いで到達し、鏡らしきものを確認する、そこに映ったそれは人というにはあまりにも醜く、怪物というにはあまりにも無機質な形をしていた
「……!!」
声が出ない、出した自覚はあるから声は出てるのかもしれないが、自分で確認はできない。それでも自分は何を思っているのかは解らない
小さな声を出してみる
「「「「『~7@64「◇4「?』」」」」」
………
やはり何も聞こえないし何を言ったのかもわからない
しばらく沈黙が続いた、真空にでも放り込まれた気分だった
自分が何を考えているのか分かるのもまるで分からずただ呆然としていると、突然ッパというと音がした
視界がどんどんふらついた感覚に囚われつつ視界が開けていくと縦長に物がみえ、見下ろすととても暗くて動くとその穴らしきものに落ちてしまいそうな雰囲気がある。
ふと、見上げると白い円に小さな穴が見える。
視線を前に戻すとギロリとこちらを見る大きな瞳が見えた。
怖じけ付き、思わず足を引き戻す
しばらく下がると何かしらに当たった、何だろうと視線を恐る恐る後ろにする。
一瞬目を疑った、それは視線を前にしたときと後ろにしたときとほぼ同じ光景がそこにはあった。
するとなにやら長い手がうえにのび、喜びを表しているような様子だった。
そんな光景を背景に、呆然としていると突然何かしらが物質脳を突き破り声らしき物が聞こえる。
軽く痛みが全身に走る
「お父さん、だよね?」
「ええ、間違いないよ、姿、形はエラーまみれだったけど遺伝子とDMAはあなたの遺伝子と同じなのよ」
「なんか、義父さんがこんな小さくて化け物みたいな見た目なのは嫌だなー」
「はいはい、文句行ってないでとりあえず死んでしまった、お義父さんとの再開なのよ、沢山話しなさい」
「ありがとうございます、エドワード教授」
なにやら低い声と比較的高いの声が聞こえる
なにを話しているのだろう?
なんで生き物がコミュニケーションを取るのだろう?
それよりも不思議なのは低い声がとても最初に聞いた声に似ていることだ。
二つの巨大な影のうち一つは姿を眩まし、もう一つの影が更に巨大になり、また、こちらを見つめる
「義父さん、久しぶり、5年ぶりだね」
低い声はこちらに語りける
「………?」
正直、低い声がなにをいっているのかまるで分からなかったがこっちになにかを伝えてるのは理解できる
「まぁ、そうだよね~一応遺伝的には義父さんであっても偽物だもんね~」
「………」
「あ、そうだ、ちょっと痛いかもだけど我慢してね~」
巨大な影は少し小さくなりしばらくしたあとまたでかくなった。
すると激しい振動に揺さぶられ、また、視界が暗くなった、それはそれはとても息苦しい、だけど、少し温かった。
また、視界が明るくなると同時に何かしらが頭に押さえつけられ、痛みが走る。
「言葉分かる?」
頭に言葉が響く言ってる意味がなんとなく分かる………気がする
とりあえず、わかるので分かることを伝えようとした。
「:_05○}」
モニターに文字が書かれ自動的に翻訳されていく
『う_05○}』
.
.
.
『うんわかるよ』
「うああ、よかった初めてだからちょっと心配だった!」
その声はとても大きな声で喜んでいた
「この声も5年ぶりだなー」
『5年ぶり?』
「そう、5年前に僕のお義父さんが交通事故で死んじゃったんだ」
その言葉を機転に頭が痛くなってどんどん意識が遠のいていく、まるで、自分が自分ではないような気がして、何かしらにもがいてる感覚だった。
そして見たことのない映像が次から次に流れ目の前が更に真っ暗に染まっていく………
『あの時はすまなかったな、クリス』
「!?」
その翻訳された言葉の中には突然自分の名前が確かにのっていた
「義父さん………」
『あの事故がなかったら俺はまだ一緒にいてられたのにな………』
「それはもういいよ、過ぎたことなんだからさ、でも、僕はそれでも………」
ほっぺたがびしょびしょでその上、視界は滲んで良く顔が見えない
『抜け出せなかったのだな』
俺は涙を拭い深く、そして早くうなずいた
『また会えて良かった』
「といってもあんた死んでるし本当の意味であったことにはほど遠いけどなw」
『まぁ、そうだけどな』
「俺は………さ、親父が死んでからずっと生き返る方法を何度も模索した俺のDMAを改造と骸骨のDMAを合わしたり、他の動物を改造したり色々なことをした」
『そうか、そしてこんな醜い姿に』
「うん、ごめん、もっといい姿にしたかったけど」
『問題ない、今度はお前の手で俺を処理してくれ』
「なんで!?俺はあんなに苦労して会えたのに!」
自分の全てを否定された気分だった。
『分かってる、しかしこれはお前のためだ、成長しろ、クリス』
「なんでだよ!嫌だよ!なんで、会ってすぐにそんなことをいうんだよ」
離れたくない親にすがり付く無邪気な子供みたいなことになっているということ位分かっている、だけどそれのなにが悪い!
『人は………全ての生き物には必ず死ぬように設計されてる、そして、一度死んでしまったものは二度と生き返らない、その意味を分かっているのか、クリス』
柔らかくも、優しい声でこっちにその言葉を投げ掛けてくる
「分かってたまるもんか!」
分かりたくなかった、実際はかりそめのものでも生きているのだからもう一度そう、目の前に、あのお義父さんが。
『そうか………俺にも分からなかったからな、あの日までは、それは………いや、辞めておこうこれは自分で見つけるものだしな』
「なにをいってるんだよ」
怒りと悲しみを混ぜたような声でいった
………
『さて、燃やしてくれこの体を跡形もなく』
「………」
『どうした?』
「………………」
『嫌なのか』
「………………………」
「ごめん、義父さん」
俺………僕は白衣の右ポケットに入れていたマッチを取り出した
『ああ、それでいい』
その言葉を確認したあと慣れた手つきで○○作から翻訳装置をはがし、試験管にマッチを落とした。
その光景はまるで日本にある火葬というもののようだった
さようなら
_______________それからのこと________________
あの日から10年経ち、俺は親父の死を未だに乗り越えてこそいないが、自分でも分かるくらいにはあの日以前とは全く違った生活を贈っていた。