深田萌絵さんについて

深田萌絵さんはIT企業の経営者&ビジネスアナリストとして、台湾企業のTSMCが米国の軍事技術を中国解放軍に横流ししていると米国司法省に告発しています。

この深田さんに対して日本政府は刑事告訴を準備中であるという噂が流れています。

コロンビア大学学長で米国憲法修正第一条(表現の自由)の第一人者でもあるLee C. Bollinger教授は私が聴講した授業でこう話していました。

市民は本来、公共の場での政治的議論に参加したいとは思わないし、公の場での発言によって罰せられるリスクが少しでもあれば、公の場で発言することをためらうだろう。                      Citizens are not naturally inclined to go and participate the public political debate and if there is even a slight risk to be punished by their public statement, they would be likely to shy away speaking in public.

もし、深田さんがTSMCに関する発言のために刑事告訴された場合、今後同様な問題を取材・発信する日本人はいなくなるかも知れません。

すると、今後同様な問題が生じても、日本では政治家も官僚も市民もその事実を知ることがたいへん難しくなります。

政府と異なった意見を沈黙させることは、結局、ジョン・スチュアート・ミルが『自由論』で述べているように、異質な意見に関する公平で徹底的な議論を消滅させ、社会の精神的発展を妨げることになります。

しかも、深田さんの意見は単なる異見ではありません。4月7日付のワシントンポスト記事もTSMCに関する台湾の国防・安全保障研究所研究員の発言を以下の通り引用しています。

台湾のチップメーカー最大手であるTSMCは、「最終的に米国と中国の両方で軍事目的に使用されるチップ」を製造するという珍しい立場にあると、台湾の国防省が共同で設立したシンクタンク、国防・安全保障研究所の研究員であるオウ・シーフは述べています。                                                      TSMC, the largest of several Taiwanese chipmakers, is in the unusual position of manufacturing chips “that end up being used for military purposes by both the United States and China,” said Ou Si-fu, a fellow at the Institute for National Defense and Security Research, a think tank co-founded by Taiwan’s defense ministry.

同記事はさらにSanford Bernstein社のアナリストの発言を以下の通り引用しています。

米国の警察官を務めることはTSMCの仕事ではありません。それは政治家が決めることです。中国は最大の半導体市場です。法的にビジネスが認められているのにそれを手放してしまったら、株主に説明できない。“It’s not TSMC’s job to be a policeman for the United States,” he said. “That’s for politicians to decide. China is the biggest semiconductor market. If you give that up when the business is legally allowed, you can’t explain that to shareholders.”

日本経済新聞も台北駐在の中村裕記者による4月16日付記事のなかで、「TSMCの独走は世界のリスクになる」と書いています。

この問題の今後の進展を現時点で予測することは困難ですが、わたしは日本が民主主義社会として良識ある対応をすることを期待しています。








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