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母の戦争体験(5) 挺身隊員

今日から女学生ニ年生の朝です。学校では全生徒が朝礼に臨み、最後に教頭が「これから重大な話がある。これから教室で担任から詳しく話があるから、それをよく聞き、メモをしておくこと、その話をしっかり聞いて行動するように」

何の話であろうか、深く考えないでいたら、教室に入ってこられた先生の真剣な顔。
「これから話すことは、とても重大な国からの命令で、この学校だけではなく、市内全体の学校が明日から中止もなり、女学生ではなくなり、挺身隊員となり、明日から不二越工場で働くことになったのです。
工場は8時半から仕事です。家が遠い人は学校からバスが出ます。
8時出発ですから遅れないように。
これから工場へ行くときの洋服を渡します。」

渡された服は薄茶色の国防色で、紙でありました。
初めて目にしたその服は、細い紙も幾重にも丸め、固く強そうで、細かく織って襟もついたちゃんとした服でズボンと上下を2組いただいて、それを着て家から歩いて通いましたが、一日中、旋盤工として働きました。

一日中立ちっぱなし、広い大きな工場はうなっているような音を1日中立て、小さい薄長い穴の中へ板状の鉄板を入れるだけの作業を空襲になるまで1年半ほど続けたでしょうか。

昼食の一時間の休み時間に、食堂で出されたご飯と野菜のいっぱい入った味噌汁を食べながら友と話をするのが何よりの楽しみでした。

母の戦争体験(6) 空襲

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