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私が好きなもの

私が好きなもの。

暖かい場所。心地いい場所。

春の陽気。初夏の風。秋の夕日。冬のこたつ。

昔はケンタッキーが好きだったけど、最近は胃もたれするから食べない。


あと、一緒に住んでいる彼。

今日は彼のことを書きたいと思う。




彼とは10年以上前に出会った。

はじめて会った彼は明るくて、大きかった。

当時から私のことをよく可愛がってくれて、私は彼についてまわった。


当時の彼は高校生で、勉強を頑張っていた。

医者になるのが夢で、そのためにたくさん勉強する必要があった。

彼はたぶんとても優秀だったけど、医学部の壁は厚かった。


私大の医学部はとても高い。

平均的な収入の家庭に生まれた彼は国立大学を志望していた。

国立大学の医学部は定員が少なく、偏差値がとても高い。

残念ながら合格にはかなわず、彼は夢を諦めた。



理工学部に進学した彼は、あまり勉強をしなくなった。

そのかわりにお酒を飲んだり、麻雀をしたりするようになった。

お金がなくなって、バイトを始めた。

そのうち大学には行かなくなって、2年の終わりに留年が決まり、そのまま中退した。


彼は高校生の時にたくさん勉強したので、希望の学部ではないけど、エリートと言われる大学に進んでいた。

その大学を辞めるというので、まわりは心配したし、反対した。

けど彼には頑固なところがあって、誰も止められなかった。


中退した後は「プログラミングを学ぶ」とか「人の役に立つために起業したい」と言っていた。

けど、なにもせずに2年が過ぎた。


そのうち今の自分じゃできることがないと気づいたみたいで、バイト先の社員試験を受けた。

あまり人手のない業界だ。

彼は合格した。

彼は晴れて飲食店の社員になった。



飲食店の仕事は簡単ではなかったようで、彼は少し痩せた。

たくさん残業をしていた。

けれども仕事は充実していたようだ。

毎日仕事のことを考えて、一生懸命働いた。


彼は最年少で店長になり、新しくできた店を任された。

そこで実績を上げ、さらに大きいお店を任された。


そのうち、社内では優秀なことで有名になっていた。

社員になって6年が過ぎた頃にマネージャー職への出世が決まった。


しかし、彼は断った。

やりたいことがあったようだ。

あっさり転職してしまった。



転職先では店長時代のノウハウを活かして、マーケティングの仕事をした。

彼は店長時代も高校生の時のようにたくさん勉強したから、マーケティングや人と関わるための知識とスキルがあった。


しかし未経験だから、あまり重要なポジションは任されなかった。

さらに、店長時代とはちがい、自分の方針で動くことはできず、面白みを感じられなかった。

在宅の仕事が多かったこともあり、彼は一生懸命働かなくなった。



やりたいことだったはずなのに、そんなに現実は甘くないようだ。




これは実話だから、中途半端だけど実はここで終わり。

今日に至る。

これからマーケティングの仕事で成功の仕方を見つけて出世するのか。

はたまた辞めてしまってなにか新しいものを見つけるのか。

その先はまだわからない。

けど、私は彼のことをずっと見ていて、応援してるから、どこかでまたスイッチが入って、一生懸命やれることが見つかればいいなって思う。



そんな彼は最近noteにはまってるみたいだ。

いつも寝る前にベットに座り、スマホを眺める。



私は彼の膝の上で喉を鳴らす。

そう、私は猫で、彼とは飼い主のこと。




飼い主の話は本当で、私(猫)がこれを書いてるのも本当。



あれ?



(おわり)


※叙述トリック的なものを書いてみたくて書きました。猫の存在も本当。

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