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急成長中スタートアップ3社が語る、PMFの本質、資金調達や成功する起業家の特徴について

2022年11月22日に福岡で「急成長中のスタートアップ起業家に聞く〜PMF・調達の軌跡〜」を開催いたしました。イベントでは各領域で活躍
中の3名、ROXX株式会社 中嶋汰郎氏、株式会社ラブグラフ 駒下純兵氏、CoeFont株式会社 早川尚吾氏を迎え、創業期のPMF・資金調達についてざっくばらんに語っていただきました。この記事では、当イベントのパネルディスカッションの内容をお伝えします。モデレーターはHAKOBUNE 栗島祐介氏が務めています。当イベントは、トヨタ九州が運営する交流型コワーキングスペースGarraway Fで開催しました。

※PMFとは「自社で提供するプロダクト(製品やサービス)が、顧客の課題を解決できる適切なマーケット(市場)で受け入れられている状態のこと」で、プロダクトを世に出したら最初に目指すべき目標と言えます。

シード投資家は経営チームと市場の切り口の2軸で見る


栗島:
皆さんは学生起業をされて最初資金調達をされたと思うのですが、資金調達周りのお話であったり苦労話などあればお聞きしたいです。

HAKOBUNE株式会社 栗島 祐介 氏
早稲田大学商学部卒。三菱UFJ投信を経て、2014年よりVilingベンチャーパートーナーズCEOとして教育領域特化のシード投資を行うと同時にレガシー領域の起業家コミュニティを創設し日本最大級のスタートアップコミュニティにまで育成。その後、2016年11月に起業家コミュニティをMBOし、プロトスター株式会社を設立。起業家・投資家の情報検索サービスStartupListなど多数の事業の立ち上げを経験。 教育系VC時代の主な投資先はサイトビジット(freeeへEXIT)・アルクテラス(コクヨへEXIT)・スピークバディなど。過去、起業家ハウスよりGITAI・Progate・Taskey・STUDIO・PULITなど多数のスタートアップ輩出も行う。

中嶋:
早川君はVC調達はやっていなくて、駒下君がVC調達はコロプラネクストが一番最初に入ってます。僕のところはSkyland VenturesというシードVCが入ってましたね。アイデア段階でバリュエーションに関しては1.5億円で1,500万円調達、10%放出って感じでした。僕らまた別の事業で売上が立っていたのでこのバリュエーションでしたけど、当時の相場感としては1億円のバリュエーションで1,000万円調達が相場だったと思います。

ROXX株式会社代表取締役 中嶋 汰朗 氏
1992年生まれ。2013年11月、青山学院大学在学中に株式会社ROXXを設立し、代表取締役に就任。2018年5月、人材紹介会社の収益化に特化した経営支援プラットフォーム『agent bank』をリリース。2019年10月、月額定額制のリファレンスチェックサービス『back check』をリリース。Forbes 30 Under 30 Asia 2021 ENTERPRISE TECHNOLOGY部門選出。ソフトバンクアカデミア外部生。

駒下:
僕もWebサイトとTwitterのフォロワー、お客さんがぼちぼちいた感じの状態で、1億円ぐらいでした。

株式会社ラブグラフCEO 駒下 純兵 氏
1993年生まれ。株式会社ラブグラフ CEO。「幸せな瞬間を、もっと世界に。」をビジョンに掲げ、恋人・夫婦・家族・友人同士の自然な表情や瞬間を撮影し「想い出」をカタチにする出張撮影サービス「Lovegraph(ラブグラフ)」を運営。2022年に株式会社ミクシィへグループイン。

中嶋: 
5年前6年前の相場感でいうとそれくらいだったのですが、逆に最近はどうですか?

栗島:
最近はアイデア段階で3億円で来られる方が多いですね。でもそれで妥結できるのは少なくて、大体みなさん跳ね返されて2億円ぐらいに落ち着くことが多いですね。

中嶋:
ちなみに何社に会って何社投資するのですか?

栗島:
会社が始まって6ヶ月で大体月に60から80件お会いしてますね。その上で今投資が決定したのは8社ですね。なので、投資する割合で言うと2.5%くらいです。

中嶋:
そんなにシードVCって厳しいのですか?

栗島:
というかその分起業家が増えたのですよ。VCも同じくらい増えたのですが、起業家もとても増えました。

中嶋:
確かに調達環境は間違いなく良くなっていると思うので、多分やろうと思えば調達自体は全員可能ということですね。

栗島:
あとはエンジェル投資家がとても増えました。普通に数千万円出せるようなエンジェル投資家もたくさんいますし、起業で成功した方がエンジェル投資をやる例がとても増えてますね。

中嶋:
僕は学生ベンチャーでしたが、最初アイデアスライドをまとめて、何人か会いに行きました。僕で言うとSkyland Ventures以外にANRI、その他有名どころはそれなりに会いに行って、全員からイエスって言ってもらえたわけではないのですが、「あ、いいよ。すぐ入れるよ。」と言ってくれたのがSkyland Venturesだった、という感じですね。

駒下:
僕らの時代だと、そもそも起業家も少なかったのでこの人が入れてくれたから他の人もぱっと入れてくれるといったことがあったのですが、今ってどんな感じですか?

栗島:
そんなことはないですね。多様性が増した、ということですかね。今は事業内容を結構見る方が増えている感じですね。

中嶋:
だから色々なVCを当たってみると全く違うフィードバックが帰ってきたりするので、1分の1を最初から狙わなくてもいいのではないかな、という気はします。

駒下:
シードの投資家は何を基準に投資の意思決定をしているんですか? 

栗島:
だいたい 2軸で皆さん見ていると思っていて、一つが経営チームでもう一つは市場の切り口ですね。大体このあたりで判断しているのではないかなと思っています。

中嶋:
例えば、経営チームが学生5人とかだったらどうなんですか。

栗島:
学生でも結構いい子たちはいたりするんですよ。会えばわかるんです。例えば、私だとProgateというプロダクトを作っていた加藤さんであったりだとか。とにかく会えばわかります。

早川:
そういった起業家はどのあたりが他と違うんですかね?

CoeFont株式会社代表取締役 早川 尚吾氏
2001年東京生まれ。幼少期に、イギリスで育つ。高校にて情報科学、特に、機械学習をスタンフォード大学の講義等で学ぶと同時に、個人事業主として働き始める。アースホールディングスと提携し、「AI Stylist」を企画・開発。19年、「アプリ甲子園」にて、第3位に入賞。20年、株式会社CoeFont(旧Yellston)、創業。現在は東京工業大学情報工学系に在学中。孫正義育英財団。

栗島:
Progateの二人組(創業者の加藤さん・村井さん)の例で答えると、思考プロセスであったり、考え方、素直さであったりと言った部分が伸びそうだな、という期待感を感じさせてくれましたね。

成功する起業家と失敗した起業家の特徴


会場からの質問:
起業家目線で見てこの人は事業を伸ばしそうだと感じる人はいるのでしょうか?

中嶋:
多動症の人ですね。あとはポジティブな人が多いね。いちいち落ち込んでいると本当にメンタルがやられてしまう、というのはあります。僕ももう始動から6年ぐらい経っていますが、同世代の起業家を見ていると残っている起業家が意外と少ないんです。会社は残っているけどあまり事業が伸びていなかったり、組織問題が起こってしまった時に疲れてやめてしまう起業家が多い、というのが現実です。

うまくいかなくなったら次の事業を考えればいいし、お金なくなったらダウンラウンドしてお金を集めたらどうにかなるんですよ。死ぬわけではないし。ただ結局起業家の心が折れてしまったら終わりで、そういった意味では何事もポジティブに元気にやれる、というのは大事な気がします。

早川:
人に任せられるのが一番重要だと思いますね。何でもやってしまう人っているじゃないですか。でも100人分の仕事は絶対1人ではできないですよね。しかもある分野だったら絶対自分より得意な人もいますし、必要なところに必要な人をアロケーションできる人事ができる人、というのが一番いい気がしますね。

栗島:
逆に失敗した起業家にはどのような特徴がありましたか?

中嶋:
暗い人ですね。同じつらい状況に陥っても、つらそうにする人とどうにかなるでしょ、と思っている人がいたらどちらが救われるかというと明るい人の方が最終的に強いじゃないですか。やはり社長が暗いと組織全員もう駄目かもムードになるので。だからそういう意味でも元気ってすごく大事な素養な気がしますけどね。

栗島:
さっき多動という話も出ましたけど、起業の成功確率って試行錯誤の回数なので、やればやるほど成功する事業を引き当てる確率が上がっていくということかもしれないですね。

会場からの質問:
最近はどのような領域の起業が多いのでしょうか?

栗島:
やはりWeb3は増えていますね。一方、BtoBやSaaS系は減った気がします。揺り戻しがあって、C向けの時代があった後にB向け一辺倒に行き、またWeb3などC向けの方へと移り変わっている感じがあります。

中嶋:
学生や若い人の起業で成功しているのってANYCOLORの田角さんとTimeeの小川さんの2人が明らかにレベルとして頭抜けていることを考えると、やはり若い人はC向けの方が強いですよね。だから若い起業家で爆発的に行くのはC向けじゃないですかね。

栗島:
個人的に最近面白いなと思ったスタートアップだと、ごっこ倶楽部さんというところはすごく今伸びていると思います。TikTokのショート動画のドラマのスタートアップで、何億再生もとったりしているんですけど。このあたりは予想以上に、メディアの領域やC向けの領域で広がって、次のTimeeのように急成長するスタートアップになるんじゃないかなと思っています。

会場からの質問:
上場前でも経営者が株式を売ることはありますか?

中嶋:
タイミングがあれば売ってもいいんじゃないですか。事業を長くやるために必要なことですよね。

駒下: 
僕はM&Aまで8年あったのですがそれまで途中で売ることはできていないので、大変でしたね。普通にクレジットカードの上限がくるとかありましたし。そういうお金がない状態が続くのもしんどいので、少しでも株式が売れたり、役員報酬ももう少しゆとりあるぐらいもらえた方がいいと思います。

中嶋:
株主の了承を得るのに、長くやるぐらい伸びてる実績はどっちみち必要なんじゃないですかね。あと2年3年経っても全然伸びるような良いモメンタムがあるんだったら、売ってもいいのではないかなという気はしますけど。

栗島:
最近だと昔よりも給与水準が上がった感じがしますね。採用のところどんどん上がっているので、もしかしたら昔よりも比較的生活しやすい時代になったかもしれないですね。

事業を長く続けるためのコツ


会場からの質問:
事業を長く続けるコツはなんですか?

中嶋:
事業を長く続けるコツ、という質問がきているのですが、この質問はかなり本質的な質問な気がしますね。会社をやめようと思ったことありますか?

早川:
まだないですね。僕まだ11月で3年目なのでやめようと思ったことはないですね。

駒下:
つらい時はありましたけどね。エンジニアの退職ブログで炎上したときは少し大変でしたが、「俺がやるしかないか」と思って乗り切った感じですね。なんか責任感のような。

中嶋:
そういう意味では、やはり自分で決めることは大事で、調達が必要なのか否かだったり、どういう会社規模を作りたいかなどは、みなさん違うじゃないですか。本音と建前があったときに本音の部分では自分の欲に忠実じゃないとダメですよね。だから調達なしで粛々とやることはこれはこれでかっこいいと思うし、お金を大きく集めて当たるか死ぬかを賭けてやるのも一つですね。そういう意味では正直にやることは重要だと思います。

中嶋:
 SaaSやWeb3が伸びるから、というので事業を始めるとやはり続かない気はしますね。好きでやっているぐらいがちょうどいい気がします。僕は営業が好きな人間なのでC向けでトラフィック伸ばすのは難しいなと思うんですが、逆にBtoBは得意だし、やってこれたというのがありました。我々が起業したとき(2013年当時)ってキュレーションメディア全盛期だったんです。

当時はとにかく記事量産してSEO上位取ったところが広告収入で稼いで、というのが多かったんですよね。みんなその領域にこぞって入って行って、僕もキュレーションメディアやった方がいいのかなと思ったのですが、バブルが弾けまして、その次に仮想通貨が盛り上がってバブルが弾けて、その次にBtoBの波が来たので結局トレンドを追っていても仕方がないんですよね。だから領域に張るのではなくて、自分の面白いと思えるものを事業領域にするのがいいと思います。

PMFは無限ループするのがスタートアップ


会場からの質問:
PMF到達までに最も苦労した点ってなんですか?

中嶋:
僕の場合は自分の同級生を企業に紹介してお金を稼ぐ、という普通の人材紹介ビジネスから始まって、その次に紹介業免許がなくても誰でも人材業ができると思って、スカウターという事業を始めてそこで初めての資金調達をしました。最初シード期に数千万円集めてその次のラウンドで1億円ちょっと集めて合計2億円ぐらいで結果うまくいかなかった、というフェーズに、2年を費やしてます。

そこから事業転換を死ぬ気でしてそこから伸び始めて今4年で売上が10億円までいった感じですね。なんかPMFって1回終えたら終わりだ、というイメージを持っていると思うのですが、多分一生付きまといます。PMFのMってマーケットなので、マーケット環境が変わったらまずフィットしないわけですよ。去年までSaaSでとにかく赤字でもいいから伸ばせば良かったものが今のマーケットだと赤字だと容赦なくバリュエーションが下がります。

直近のIPOが、ダウンラウンドになっているのを見てもわかるように。マーケットが変わると、エコノミクス自体も変わるんです。0から1,000万円の売り上げ作るときと、1,000万円を1億円にするときって、明らかに組織のフェーズも違うし、やる規模感も全然違いますし、そういう意味ではPMFに終わりはないと思うようになってから楽になりました。

栗島:
スカウターをやりつつ今のagent bankになるようなものをベータ版でやられてそれが成立した後、今のback checkを事業として取り組む、といった感じで変遷していったと思うのですが、この辺りって組織の状態はどうなっていて事業的にはどなたがこの事業を考えたのですか?

中嶋:
スカウターがうまくいかなくなって、とはいえいきなり全く違う領域に行くのはさすがに何にもメリットがないので、ある程度その周辺領域で2、3チーム作って事業を展開したのですが、その中の1個が割と初速で売り上げができました。ちなみに僕が見ていなかったチームです(会場笑)。

それが伸び始めたのでここ掘ればいける、と思いました。ただ僕もなかなか踏ん切りつかなかったです。お金集めたメインの事業をやめてそっちに行けるのだろうか、という葛藤はあって、その時にエウレカの赤坂さんに「今までやっていた事業を全部やめて、伸びている事業一点だけやるんだったら、今1,000万円入れる」と言われたので、それで決めました。

そこからは事業のアイデアが出てきたら、それを小さく試して、うまくいったら始める、というのをやっと回せるようになりました。

中嶋:
スタートアップが2個目の事業をやるって、反対もされるわけですよ。メイン事業を伸ばさないといけないし、ソースは基本集中で行かなければいけないですし。ただ自分の中でやる意味がすごく見いだせた事業だったので、周りに何言われようが、最終的に結果を出せば誰も文句言わないというのが皆さんのやっている領域だと思います。なので、最初は小さく始めて、いけそうになったらパッと出しましたね。

(会場様子)

早川:
どこを見てPMFって判断しますか? 

駒下:
結局、ユニットエコノミクスで見るのがわかりやすい気がしますね。

中嶋:
黒字ならいいじゃないかな。黒字になることを分かった上で先食いしましょうね、という話が調達なので。やはり、事業を当てるまで体力を持たしておくための調達は苦しいですよ。1億円使ったら将来的に10億円になるってわかっていたらいくらでも踏めるのだと思います。

栗島:
投資家的な目線で言うと、アクセル踏むところ(事業が急拡大できる見込み)がわかったタイミングで来ていただけるととても投資しやすくなりますね。

駒下:
シリーズAの調達あたりからいわゆるCPAとLTVはいくらですか、という資料が一番多くなってきた気がしますね。チャネルがどれで、チャネルの数値がいくらぐらいでミックスすると幾らになりますか、という話が一番長かった気がしますね。

栗島:
駒下さんのPMFのお話を伺いたいです。

駒下:
そういう意味で言うとピボットしてないですね。気合いでやりきった感じですね。サービス性に関しても、最初は主にカップル向けでやっていて、ターゲットが家族に代わってその時にプライシングを変えたりはしたのですが、全然違う領域にピボットするようなことはなかったので。

PMFに関しても、僕がカメラマンをやっていて、カップルを撮ったらバズって、日本全国のカップルからオファーが来て、僕が日本全国を飛び回っていたら、交通費をお客さんにたくさんもらうことになって、お金がもったいないので、カメラマンを集めて現地の人とカメラマンを繋ぐプラットフォームを作ったら今の規模になったので、あまり気にしたことがないですね。目をつぶってバットを振ったらボールに当たった、という例えをよく言ってます。

中嶋:
ちなみに累計調達額っていくらでしたっけ?

駒下:
累計調達額が5億円くらいですかね。

中嶋:
それより上げていたら、売却するのきつかったんじゃないですか?

駒下:
シリーズAあたりから資金調達のバリュエーションは意識しましたね。そこは高ければ高い方がいい、というかどちらの(IPOかM&Aか)選択肢も取れるラインをずっととってました。10億円以上の売却は多分厳しいので。

中嶋:
ということは10億円以上の金額で増資してしまうと、その投資家は絶対売りたくないわけだから揉めてしまう。だから、売却したい人は集めない方がいいです。数億円ぐらいにまでとどめておいて、粛々と利益が出るモデルにしておく方がいいと思います。

駒下:
最初のシードのタイミングで、外部資金を入れるのか否かで、いわゆるEXITを目指す方針なのかオーナーカンパニーとしてやるのか、という分岐が1回ありますね。そこからもう一度、資金調達の中でも10億円ぐらいのバリエーションをつけるフェーズで、M&AなのかIPOなのか、という分岐が来て、10億円以上のバリエーションをつける、という選択をしたら、ほぼIPOしかないと思ったらいいと思います。

中嶋:
 10億円のファイナンスをするということは、売却は無理だという前提で、僕はやりきるしかない状態になったので、IPOしてどう成功させるか考えるしかないから逆にそこで迷わなくなったのである意味楽ではあったけど。でも早川くんはまだ選べるフェーズだもんね?

(会場様子)

早川:
僕の場合は身内だけで集めたので。ベンチャーキャピタルからも一応100社くらい出資の問い合わせがあったのですが。PMFに関連した話で言うと、最初にプロダクトを出したときに、1万リツイートぐらいタイムラインに流れて、それで色々な人が使ってくれた感じですね。お金はその段階でできたので、調達も頭に入れていたのですが、別に入れなくてもこのまま伸ばしていけば普通にこの売上だけで回収できる感じになりました。なので調達するとしたらグローバルに行くタイミングですかね。

栗島:
たまにいますね。最初から稼ぎすぎてIPOを目指さなくてよくなった学生起業家は。

中嶋:
バリュエーションを上げすぎると売却できないなどあったりするので、自分たちの事業特性と調達の相性はよく見た方がいいです。お金を集める方が大変そうに思えるけど集めた後の方が大変ですね。 

栗島:
直近だとマーケットが下がっているので、今期IPOを申請していた方が延期されているといった話は聞くので、苦しいけどうまいこと皆さん踏ん張りながらやってますね。

会場からの質問:
起業家の成長はどこで感じますか?

早川:
起業家向けのハードシングスの本を最初に何もやっていないときに読んでも、あまりピンとは来ないのですが、確かに1年後ぐらいに読むと共感できることがあったりしますね。

中嶋:
最初色々精神衛生上よくない事件が起こったりするのですが、5、6年も経ってくると期待値調整ができるようになりますね。事件を2、3個ぐらいクリアできるとこのレベルならどうにかなるか、と思えるようになります。あとこういうコミュニティもそうですが、諸先輩方が大体同じ失敗を踏んでいるので、早めに聞いてみるのがいいと思いますね。メンタル面では諸先輩方の経験を借りてくる、というのは、起業家コミュニティに入る上では、いいことだと思ってます。

駒下:

先輩たちもその上の先輩に聞いているはずなのにやってしまうミスなどは、俺が駄目だから起こったのではなくて会社をやっていると起こってしまうことなんだな、と思えると、頑張れますね。結局、辞める起業家ってメンタル折れた人なんです。最近ecbo cloakというインバウンド向けのコインロッカーの会社の社長と仲良くしてるのですが、コロナの大打撃で、30名いたメンバーが今2人になって大変だったけど、コロナ禍で頑張って新規事業を作ってまた頑張っているので、やめない人は強いと思いました。

中嶋:
うまくいくって思っていなければいないほど、期待値的にはちょうど良くなりますよね。僕昔バンドやっていたのですが、1曲目で売れるわけないじゃん、とあまり期待してなかったら楽でしたけどね。

3人の起業家はメンタルでやられた時は何をしていたか


栗島:
メンタルでやられた時って皆さんどうやって復活しましたか?

早川:
僕は睡眠時間は最低7時間は取って寝た方がいいと思います。

駒下:
僕はファイナルファンタジーをやる、というルーティーンがありました。RPGって進捗するんですよ。病んでる時って何も進捗しなくて、組織の問題は一向に解決しないです。それに対して、ファイナルファンタジーは勝手にレベルが上がって進捗してくれるので元気になるんですよね。(会場笑)

中嶋:
僕は逆にそれ以外のことが手につかなくなります。その解決を真っ先にやって抜け出した状態になるまではそれ以外のことに手をつけられないから、他で忘れるのは無理ですね。何か大変なトラブルが起こった時や調達で金が集まらない時は生きた心地がしないのだけど、その時に逃避している場合ではないから一件でも多くVCと会うなりトラフィック稼ぐなり何かできることをやって、少しでも前に進めよう、というふうにしか考えられないです。逃避先がないので辛いです。なので、周りの人に助けてもらったり、独りよがりにならないことが大事で、そういう意味ではVCの人であったり客観的な人が会社経営の中にいるっていうのは救いになることはあります。

栗島:
抱え込んでしまう方が多いので早めに相談していただけると助かりますね。壁打ち相手と見ていただければいいですし、投資家を使い倒せばいいと思います。

中嶋:
ANRIの佐俣アンリさんに言われて一番よかったアドバイスは、「うまくいってないことはわかってるから先にうまくいっていないことから言え」ですね。投資受けた以上は「うまくいってます」と言いたいですよね。それが間違いだと気づけたのは良かったですね。

駒下:
株主使うのが上手い起業家が成長してるイメージありますよね。

早川:
Timeeの小川さんに「図々しいね。まあ、俺も図々しいんだけど」とよく言われるんですよ。なんかそういう人の方がいいのではないかな、と思うんですよ。とりあえず全部頼んでみて駄目って言われたら、「すいませんでした」と言えばいいのではないかな、と思ってます。

(会場様子)

会場からの質問:
競合との向き合い方を教えてください。

早川:

僕は情報が漏れるのがすごく嫌なので、なるべく会いたくないです。

駒下:
僕のサービスはすぐ真似されるんですよね。まあ僕の方がいいサービス作れると思って無視してましたけど。もう1個は上場企業だったのでそこの決算を見てうちの方が伸びてる、と思ってました。

早川:
 Slackに競合のニュースだけを流すチャンネルっていうのがあります。自分だけが知っているとダメで、みんなに共有しておかないと対応策が考えられないので、ライバルっぽいところが出てきたらSlackで1,000件ぐらいスレッドで議論し続けたりしています。

中嶋:
スタートアップで絶対に勝てるかわからない領域で事業をやっていたら競合を意識する必要はなくて、そもそも全員爆死する可能性が高いんですよ。一方、ある程度勝ち方が決まっているメディアや人材などの事業は競合よりも、より金額高く投資するなどすれば勝てると思います。

早川:
競合のサービスにいい機能があればパクリたいな、というのはあるので、競合のニュースを見て焦るのではなく、どういう対策を打てばいいのか議論する方がいいと思います。

駒下:
何か競合との向き合い方とは少しずれるのですが、同世代の起業家と業界ナンバーワンって何をもって言えるか、という話をしていました。ユーザー数や売り上げ、といったわかりやすいものもあるのですが、誰か1人がその業界をよくするレバーが自分の手元にあると思ったらナンバーワンなのではないか、という話をしていて、納得しました。最近の僕のホットワードですね。

組織運営上の壁をどう乗り越えるか

会場からの質問:
組織運営上苦労したところを聞きたいです。

中嶋:
組織の壁は絶対皆さん経験します。ビズリーチの南さんがおっしゃる通りで、1と3が付くところで必ず壁が来ます。1人、3人、10人、30人、100人、300人、1,000人のような感じで。ここでゲームのルールが変わります。10人ってこのテーブル一つ(今回の会場のテーブル)なので、別に全員がコミュニケーション取れる範囲です。30人になると役割がわかれてきます。

100人になると、構造的にも変わってくるのでマネジメントが重要になります。なので、むやみやたらに増やすと組織運営のコストが高くなるので大変です。その組織の壁を乗り越えるのも一つの成長の機会で、やはり10人のときに活躍する、30人のときに活躍する、100人のときに活躍するって、全く違うスキルになるんですよね。

任せて伸びるは多分100人フェーズになると重要です。絶対経営者が全部やれなくなるので。10人をまとめられる人が10人いれば100人の組織が回るので。なので最初の10人がそれぞれ10人動かせる人間になれるかどうかが重要です。そういったことを少し先に予期してやっておけばどうにかなると思います。

早川:
バリューは重要ですね。これがないと細かいところで揉めるし、いちいち話さないといけなくなるので。だから同じような価値観を持っている人を採用しないと痛い目を見ますね。

中嶋:
バリューを皆さん1から作ろうとしますが、メルカリ社のMVVをそのまま使ってみるといいと思います。不都合が出たら改めて考えてみればいいんです。あのレベルの人たちがあれだけ考えて出たアウトプットを簡単に超えることは難しいので。

駒下:
あとは1on1じゃないですか。経営メンバーとの1on1は忙しかったりするとスキップしてしまいがちでした。採用と1on1のミスが僕の場合ありましたね。採用の段階でフィットしている人を採用できてなかったのと、1on1をないがしろにしたから、本人が不満を持っていることに気付かなくて爆発してしまったりしました。

中嶋:
最初の10人が次、他の誰かに対して同じことを同じクオリティでできるようにすることが大事。100人になってできなくなるのは、多分それが型になっていないということだと思うんですよね。初期のメンバーは気にしなくていいのですが、知らない人に段々なってくるので。そういう人とうまくやるためには丁寧なコミュニケーションを取らないといけない、というのは今改めて思うことですね。

創業期はそんなこと気にしなくても大丈夫なメンバーしか、むしろ入れるべきではないと思っています。コミュニケーションコストがかかるような人を入れることが間違いだと思ってるので。最初は多様性を意識するよりはまず事業が伸びることファーストですよね。ですが、組織が大きくなると色々な考えの人がいるので、そのタイミングで多様性を考えたらいいと思います。最初はむしろ同一性があった方がやりやすい。

早川:
僕は最終的にグローバルを目指しているので、英語を話せる人をとるようにしています。

中嶋:
一方日本の営業で強いチームを作るとすれば、BtoBの感覚がある会社から人を採っていった方がいいですね。

栗島:
幹部の育成に関して実際にやられていることって何ですか?

早川:
自分の直轄に対しては、1週間に1回1on1をするようにしてるのですが、それ以外の人にも話を聞いておいた方がいいと思ったので、1週間に2回ぐらいランダムルーレットを回して当たった人が僕と1on1をしなければいけないという罰ゲームをやっています。

そのゲームをすると、実際の現場の問題などがしれて、幹部の人たちが言っていたことは本当だということが肌でわかっていいな、と思いました。なので、今週の犠牲者ルールは、意外にいいかもしれないです。

中嶋:
僕は3段階あると思っていて、決まったことがやれる人、次は何をやるかを決められる人、最後どうしたいのかを考えられる人、の3段階です。経営は絵を書ける人なので、どういうふうに事業が伸びたらいいかを考えられる人ですね。その絵がある上でこれをどう実現しようか、と戦略を考えるのがマネジメント層の人ですね。そこで決まったことを実現していく人がいる、という3段階だと思います。なので1個ずつステージを上げていくしかないと思います。ただ1個すっ飛ばすのは無理だと思ってます。なので段階的にステージを上げていくことが必要になってきます。

みんなで決めるのはご法度です。絵を書ける人だけで意思決定をした方が僕はいいと思います。10人ぐらいだと何となくみんなで決められるのですが、30人みんなで決めるのは絶対無理です。そういう組織の人数の変化を早めにわかっておく。あとは結果が出なかったらダメだしフィードバックもちろん必要だと思います。そこを厳しく繰り返していって成長する。2年ぐらいかかります。根本で信頼し合えてないとお互いの人間性の否定で関係がこじれるので、10人ぐらいの時は仲の良い関係性を作っておくことが大事だと思います。

会場からの質問:
メンターはいたりするんですか?

早川:
孫正義財団に入っているので、孫正義さんですね。孫さんと話すと、グローバルでやれだったり社会貢献をしなさい、といったアドバイスをくださるのでいいですね。

中嶋:
メンターも相性があると思うので、皆さんに合う人を探せばいいと思います。僕はスタートアップの経営においてのメンターもいれば、自分たちがいるドメインの人材領域のメンターもいます。自分がいいと思った人で常に1個2個先のステージに行っている人と定期的に会える関係にいます。

今日こういう場で「初めまして、こんにちは」はみんなするんですよ。その次もう1回飯行くなりして定期的に会えるぐらいに、年に3回は報告がてら会うっていう関係性が俺の中で一番ちょうどいいかなと。そこまで頻繁に会わないけど数ヶ月おきに会って報告ができるような人が、何人かいるととてもいいと思います。

栗島:
メンターとどこで繋がりましたか?

中嶋:
カンファレンスですね。B Dash Campなどのカンファレンスで片っ端から名刺交換します。それこそちょうど早川くんと先月、福岡のB Dash Campでお会いしました。

駒下:
僕は B Dash CampでSTRIVEの根岸さんに出会ったのは大きかったですね。直近だとミクシィグループ入りしてる笠原さんは、日本のプロダクトを作るという人においてはトップクラスだと思いますが、日々勉強になってます。コミュニティだと、千葉道場の千葉さんなどもメンターですね。

最後に起業を志している若者に一言

栗島:
会場には起業を志している若者がたくさんいらっしゃると思うので、彼らにアドバイスがあれば最後よろしくお願いいたします。

早川:
自分が面白いことをやればいいと思います。そうじゃないと続かないので。みんなが面白いと思って買ってくれる、と思うものを作れば自分も楽しく続けられます。

駒下:
熱中できるものを探すことが大事だと思います。例えば僕は今ミクシィにM&Aでグループいりするという、スタートアップの一つの成功と言われるようなものをして、周りの人から褒められることも増え、まあそれなりに資金の余裕もでき、会える人のレベルも上がったり、他から見たら幸せに見える状態だと思います。

でも、今のこの瞬間とラブグラフを立ち上げたときは、誰も僕のこと知らないし、ラブグラフを使った人も誰もいない状態だけど、少しずつ自分の作ったサービスが世の中に浸透している感じになった自分を比べたときに、どちらが幸せかというと後者の方かもしれないな、最近よく思います。意外と夢に描いていたことって実際手に入れてみると儚いものであることがあるので、今何か熱中できていることがあるならば全コミットしてほしいなと思いますね。

中嶋:
儲からないと続かないです。商売なので当たり前ですが、どれだけ世の中が良くなるとしても売上利益が出ないと会社として継続しないし、仲間も投資家も集まらない、という現実を見ないといけない、というのが起業家としてやる以上はどうしても大事です。

特に外部の資本を入れるのだったらなおさらです。逆に言えば利益が出ている状態なら誰にも何も言われずに好きなことやっていける。まずはやりたいことなんて、僕はなかったし、ないながらに身近な課題を探っていきながらやっていきました。ネタが見つかるまで1ヶ月の人もいれば5年10年かかる人もいるし、ただそれでもやり続けられるぐらい、まずは仕事として成り立っていて、お客さんがいて価値を提供してお金がもらえている状態を作らないといけないです。

なので、赤字でもいいというのはマーケットがそういう状況だったから許されたものの、結果的には商売として利益がどれくらい出ているのか、というのが最後に問われます。会社として健全に経営できている状態があった上でどうそれをさらにスピードも含めて規模を大きくしていくか、というゲームだと思っているのでまずはビジネスとして成り立つようにできることからやってみるのがいいと思います。ただそういうのもわかった上で、どういう規模感のビジネスを作っていきたいのか、大きく行きたいのだったら最初から大きく調達してやる。

グローバルでやりたいんだったらそれでいいと思いますし。まずは会社としてやる以上、利益が出ないといけないので、その現実を見ながらやりたいことがあればそこを深ぼってみればいいと思います。

※セッション内容は読みやすさのため加筆、編集しています。

Waiting List
次回、福岡におけるスタートアップ関連イベントは2023年1月頃に開催予定です。Waiting Listにメールアドレスをご登録いただくと、イベントの案内をお送りします。


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