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『装丁問答』石田 衣良 ブックデザインという仕事

著者はグラフィックデザイナーであり、本の装丁家だ。東京造形大学客員教授であり、講談社出版文化賞ブックデザイン賞など多数受賞するなどデザインに対する意識と情熱が高い。そんな装丁家が書いたエッセイであり、1話わずか4ページ構成なので、どこからでも気軽に読める。

エッセイの内容は思わず本を「ジャケ買い」したくなる衝動や、現代の装丁家についてなど装丁に対するこだわりの話が多数掲載されている。ユニクロのロゴやsmap広告を手がけた佐藤可士和氏が手掛けた『てのひらの迷路』とう本がある。構成は本当にシンプルで、隙だらけのようにもとれる。こうした作業は、細かいラフを何百パターンも出す力量がなす技であり、実際にクライアントに対して並走して進まない限り実現できるデザインは少ない。たしかに手にとってみると安心するジャケットに仕上がっている。

本は購入側にとっては普段意識せずに手にとるが、その無意識に手をとらせる行動にいたるまでは装丁家の力量による部分が大きい。しかし、現状ではそうした装丁家に対する功績の認知度は少ない。無意識を操作するデザインは、視線の誘導、カラーバランス、フォント、間の取り方、高度だがわかる人にとってはわかる。そんな痒い所に手が届く感覚が本書では味わえる。本好き&カバーデザイン好きにとって非常にオススメできる一冊。


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