夢見る前の夢

 深夜三時の静けさに、遮るような電車の音。
 私の家は駅からも、線路からも遠い。電車の音が聞こえるにはあまりにも遠い、そんな場所。街灯の灯りと月の光が眩しくて、少し毛布に顔を突っ込んだ。
 そんな折の、電車の音。

 カタンカタン、カタンカタン。
 鼓膜を揺らす音は脳内に電車の姿を映し出す。心地よささえ感じる音に、ここから数十メートルか、数百メートル先に線路があるような気がしてくる。勿論、そんなことはなく、きっと今目を開けて外を見てしまえば変わらぬ深夜の風景がそこにあるだけなのだ。
 だから、カーテンも開けず、目も開けず。

 夢を見る前に夢を見る。
 月に照らされた電車が走る。空に走る線路を走る。
 夢を見る前に夢を見る。
 私の知らない、誰かの物語が進んでいく。
 夢を見る前に夢を見る。
 誰かの人影が見えたような気がした。

 そして意識は消えていく。

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