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オリジナル小説 高所で会いましょう。#6

そこには――

――グチャッ!
――ベチョ!
――ビチ!
――ドサッ!
――バタン!

――ゴトッ! 大量の血痕があった。その中には先ほど倒した魔物の死体もあった。しかし、不思議なことに死体の数は4体しかなかった。
その光景を見て、ケントは違和感を覚える。
なにせ、魔物の死体の数は全部で5つあったはずだからだ。
しかし、その場所には他の4体の魔物の死体があった。
(どういうことだ?)
不思議に思ったケントは辺りを見渡す。
すると、近くに1人の人影があることに気づく。
「あなたは一体……」
サーシャが問いかける。
その人物は男性で、年齢は20代半ばくらいだろうか。
茶色の髪と目を持ち、身長は180cmくらいありそうな細身の男だ。
しかし、サーシャが声をかけたにもかかわらず男は黙ったままである。
そして、次の瞬間。
男は音もなく姿を消した。
「なっ!?」
サーシャは驚きの声を上げる。しかし、
「心配ないよ。」
「え?」
「多分だけど、あの人は敵じゃないからね。」
「どうして分かるんです?」
「それは、なんというかな……。」
「勘みたいなものなんだが……。」
「かん?」
「うん。なんかあの人からは悪意とか殺気が感じられなくてさ。むしろ逆に、どこか温かさを感じるような雰囲気だったんだよね。」
「…………」
「もしかするとあの人も神具使いかもしれいない。」
「え?でもそれならどうして姿を消せる神具を持っているんでしょう?」
「さぁ、それは分からないけど……。」
ケント達が話していると、サーシャのスライムから声がかかる。
どうやら、サーシャに何かを伝えたいらしい。
サーシャがスライムの言葉に耳を傾けると、サーシャの表情が驚愕の色に染まっていく。
そんなサー
「どうしたんだ?」
「それが……」
サーシャの話によると、サーシャを襲った魔物達の体内には小さな機械が埋め込まれており、それによって魔物達は動かされていたのだという。
サーシャは、そのことに気づいていなかったようだ。
しかし、魔物を倒した時に機械が破壊されたのか、それ以降動き出すことはなかったという。
「なるほどな……。」
「そんなことがあったんだな。」
「はい。」
「しかし、あの人が助けてくれたっていうのは本当なのかな……?」
「分かりません……。」
「ただ、私を助けようとしてくれたのは確かだと思うのです。」
「まぁ、確かに……。」
「それに、あの男の人がいなくなった後すぐにスライムちゃんの声が聞こえてきたので……。」
「確かに、タイミング的に考えるとあの男が俺達に話しかけてくるより前に、あのスライムがサーシャに話しかけたってことになるか……。」
ケントは顎に手を当てながら考え込む。
(確かに、あのスライムが話しかけて来た時は少し遅かったように思う……。)
(となると、サーシャが襲われた時には既に近くまで来ていて、それで魔物を倒す隙を伺っていたということか……。)
(うーん……。やっぱり、それだけでは
「とりあえず今はあの人のことを探そう。もしまた会った時お礼を言いたいしな。」
「そうですね。」
「よし、じゃあ行くぞ!」
「はいっ!」
サーシャが元気よく返事をする。
こうしてケント達は再び町を目指して歩き出すのであった。
町まで残りわずかとなったその時――
突如空から雷が落ちてきて目の前に巨大な龍が現れた。その体は黒紫色をしており禍々しいオーラを放っている。まるで生き物というよりも魔獣のような見た目だ。
「こいつは……。まさか……!――」
ケントは、この魔物の正体に見覚えがあった。
それもそのはず、その魔物は以前戦ったことがある相手なのだ。
―――――――――
「おい!嘘だろ……。」
ケントは動揺を隠しきれない。
何故なら、今ケント達の前に姿を現したのはかつての宿敵――ディアブロであったからだ。
(こんなところに出てくるなんて予想してなかったんだけど……。一体、どうなってるんだ……!?)
ケント達の前に現れたのは紛れもなくあの憎きディアブロだった。
「あれって……」
「もしかして、前に私が倒した奴と同じなんですか?」
「多分そうだ……。」
「しかし、あれがここに出てくるとはな……。」
「ケントさん……。」
「ああ、分かってる。あいつがどれだけ強いかは知っているからな。気合いを入れていくしかないだろう。」
ケントはそう言うと、腰から双剣を抜き構える。
すると、ディアブロの目がギロリとこちらを見た。
「ほう、貴様らが俺を倒した勇者とその従者というわけか。面白いではないか。」
「へぇ、まだ喋れたのかよ。」
「ふっ、あんな雑魚どもと一緒にされては困るな。俺の本来の力はこんものではない。」
「そりゃ楽しみだぜ。さっさとかかって来いよ!」
「言われなくても、そのつもりだっ!!」
すると、ディアブロは大きく息を吸い込み始める。次の瞬間――!!!!
「うわっ!?」
凄まじい勢いで暴風が巻き起こり辺りの木が薙ぎ倒されていく。
サーシャはその風に耐えることができず倒れ込んでしまう。
「大丈夫か!?」
「はい、なんとか……。」
「クソッ、これだと近づくことすらできない……。」
「だがどうすれば……。」
「ケントさんの全力攻撃なら何とかならないんですか?」
「なるにはなるんだが、こいつ相手に通用するかは分からないんだよ……。」
「でも他に方法はないですよね?」
「まぁ、そうなんだが……。うーん……。仕方がない、やるだけやってみるか。」
ケントは、大きく深呼吸をして気持ちを整える。そして、
「"天翔"」
ケントが唱えると、体が一瞬発光しケントの足下に魔法陣が描かれる。そのまま、光った状態の体のままディアブロへと接近していった。
――しかし――
"ガキィン" ケントの攻撃は、まるで鉄の壁に阻まれたかのように弾き返されてしまう。
「チィ、やはり駄目なのか……。」
「今のって、確か勇者にしか使えないというスキルですよね?」
「ああ、そうだ。俺は『身体強化』っていう技を使って戦っている。」
「なるほど、それならあの攻撃を跳ね返せるかもしれないですね。」
「ああ、ただそれでも完全に相殺することはできないと思う。恐らく俺の体にダメージが通るはずだ。ただその衝撃がかなり大きいため意識を失いかねない……。だからサーシャは俺から離れた方がいい……。」
「そんなことできる訳ないじゃないですか!」
サーシャはケントに詰め寄ると、力強く言い放つ。
そんなサーシャの様子を見て、ケントは苦笑いを浮かべた。
――それから、二人は何度か攻撃を仕掛けるがどれも弾かれてしまう。
サーシャが風の刃を放つが、それも簡単に防がれてしまった。
ケントは、自分の攻撃に魔力
「はぁ、はぁ……。くそ……。全然ダメだな……。やっぱりこのまま戦うのは厳しいぞ……。」
「そうですね……。私達の攻撃が全く通用しません。」
「ああ、こうなったら俺の持っている最強の技を試すしかなさそうだな……。ただ問題はそれが成功するかどうかだ……。」
「何か作戦があるんですか?」
「一応な……。だけど、それをするにはかなりの量の魔力が必要になる。」
「そうなんですね……。じゃあ私は、ケントさんがその状態になっても動けるようにサポートします!それに、いざとなった時は私が時間稼ぎもしてみせます!」
「それは助かるが、お前一人で本当にできるのか……?あの男は強いぞ。」
「もちろんです!あの時の私とは違うんですよ!」
「分かった。その言葉信じるぞ!」
「はいっ!任せて下さい!」
「よし、じゃあ行くか……!」
「はいっ!」
ケントは、再び集中して魔力を高め始めた。
(俺の残りの全魔力を使った渾身の一撃を食らえっ!)
そして――
「"雷鳴閃"」
ケントが剣を振ると凄まじい雷が落ちてくる。
しかし、雷はそのままディアブロを飲み込むことはなかった。
なぜならば、先程と同じように見えない障壁のような物で遮られたからだ。
それでも、少しの間動きを止めることに成功した。その間にケントは再び距離を取ることに成功する。
だが、そこで限界が訪れ膝をついて動かなくなってしまった。
(これでもう無理そうだな……。)
ケントの表情
「ケントさーん!」
サーシャが慌てて駆け寄ってくる。
「おいおい、あんまり近づくなよ……。また奴が襲ってきたらどうするんだ……。」
「で、でも……。」
サーシャは、涙目になりながら訴えかけるような目を向けている。
「はぁ……。分かったよ……。とりあえず、あいつを倒す方法を考えるぞ……。まずあいつには物理的な攻撃は全く効かない。恐らく魔力が弱点なんだろうが……。しかし、その魔力を吸収するとあいつ自身が強くなるらしいからな……。俺達が使える魔法もあいつが吸収しちゃうんだろうし……。そうなると俺達の攻撃手段は限られてくるか……。あとはあいつに有効な属性の攻撃をするしかないな……。あいつは、闇属性以外の攻撃は大体無効化しているようだから……、つまり水や土の魔法を使うといいかもな。」
ケントは、息を切らせながらもサーシャに伝えた。
すると、サーシャの目に再び闘志が宿る。
「はい、やってみます!」
そして、サーシャは地面に手をつき呪文を唱え始めた。
すると地面からは大量の水が吹き出し、ディアブロに向かっていく。
だが――ディアブロはその水を一飲みすると、まるで効いていないかのように笑みを浮かべた。
「ふははは、この程度の攻撃では俺には傷一つ付けられないぞ?」
「くっ……。」
サーシャは悔しそうに唇を噛む。
「どうだ、絶望的な状況だろ?さて、そろそろ死んでもらうか……。」
ディアブロはゆっくりとサーシャに近づいていった。
だがその時だった――
"ザッブーン" という音が響き渡り、サーシャの足元に水溜まりができる。
「なんだこれは?」
不思議に思ったディアブロが見てみるとそこには魚が沢山いた。
そしてさらに、今度は地鳴りと共に巨大な岩石が現れて辺りを埋め尽くしていく。
「まさかこれって――」
"バッシャーン" 突如として現れた大きな波によってサーシャとディアブロは完全に流されてしまう。そしてそのまま海へと引きずり込まれていったのであった……。
***** それから、数時間後――
砂浜に打ち上げられたサーシャ達は辺りを見回していた。


すると、そこに一人の女性が歩いてくる。そしてその女性は二人を見つけると、嬉しそうな笑顔を向けた。
その女性は、長い黒髪が特徴の美女であり、年齢は20代後半ぐらいに見える。
「あら、あなた達無事だったのね!良かったわ!」
その女性は、二人の近くまで来ると声をかけた。
「えっと……。あの……。」
サーシャは戸惑っている。
「ああ、ごめんなさいね。自己紹介がまだだったわね。私はアクア。水の精霊王と呼ばれている者よ。」
「は、はぁ……。私はサーシャと言います。そしてこちらはケントさんです。助けていただいたようでありがとうございます。」
「いえ、気にしないで。ところでどうしてこんなところに?」
「実は――」
サーシャは、これまで起こった
「なるほど……。そんなことがあったの……。」
「はい……。」
「それで、これからどうするつもりなのかしら?」
「それが、私達にもよく分からないんです……。」
「そうなのね……。それならしばらくここにいてもいいんじゃないかしら?」
「いいんですか?」
「もちろん。困った時はお互い様だからね!」
こうして二人は、しばらくの間お世話になることにした。
それから数日が経ったある日のこと――
二人はいつものように海岸へ来ており、二人で並んで釣りをしていたのだが……
突然、目の前に大きな船が停泊した。そこから出てきた男達が、こちらへ向かってきている。「おい!お前ら!ここで何をしてるんだ!?ここは、俺らの船専用だぞ!」
(あれ?なんか前にも同じようなことなかったけ?)
(そういえばありましたよね……。)
(まあ、とりあえず無視するか……。)
(ですね!)
ケントとサーシャは、
「おい!聞いているのか!こらっ!逃げるなっ!」
などと喚いている人達を完全にスルーしている。
だが、諦めが悪いらしく中々立ち去ろうとはしなかったのだ――すると、ついに痺れを切らせたのか、その中のリーダーらしき男が叫んだ。
「もう、こうなったら力ずくで追い出すしかなさそうだな!」
すると、周りの部下と思われる者達が一斉に襲いかかってきた。
だが、ケントとサーシャにとっては、あまりにも遅すぎる。
軽くあしらってしまう。
そして――
ケントは、全員を一瞬で気絶させた。
サーシャは、一人だけ意識がある人間を見つけたので話を聞こうとする。
「あ、あの……。」
「ひぃーーーーーー!!!!!やめてくれぇーーーーーーー!!」
しかし、サーシャが声をかけるとその男は怯えてしまい、逃げ出そうとしてしまった。だが、サーシャはそれを逃すまいと瞬時に男のところへ行き腕を掴むとそのまま捻り上げた。
「痛たたたたたたたっ!!!分かったから放してくれーーーーーーー!!!」
「分かりました。では、話を聞いてくれますか?」
「は、はい……。」
サーシャが掴んでいた手を離すと、男は安堵のため息を漏らす。
そしてようやく、落ち着いてきたのか質問に答えてくれたのだった。
なんでもこの人は船の
「船長ですか……。」
「はい……。」
「そうか……。」
ケントは少し考えるような素振りを見せる。
「な、なにが目的なんでしょうか?」
「いや、別に大したことじゃないんだけどさ……。俺達の目的地まで乗せていって欲しいんだよ。」
すると、サーシャは驚いたような表情を見せた。
だがすぐに元に戻り――
ニッコリと微笑む。
それをみた船長は――
顔を真っ赤にして照れたように鼻の下を伸ばしている。
そして、ケントに言った。
まるで、自分にはサーシャしかいないと言わんばかりに――
「お、お願いします……。俺を連れてって下さい……。一生付いていきますので……。どうか……、何卒……。」
だが――
「嫌だ。」
あっさりと断る。
すると船長は膝をつき泣き崩れてしまった。
そしてサーシャの足元
「うぅ……、ぐず……。ひっく……」
「えっと……。あの……。大丈夫ですよ……。」
(えっと……。これどうすればいいんだろ……。)
ケントは困っていた。
**
***
〜side サーシャ〜 "コンッ"
「あの……。すみません……。」
『はぁ……。今度は何かしら?』
「実は今の状況を説明してもらえないかなと思って……。」
『…………。』
「えっと……。どうしたんですか?」
『いえね……。あなたも、そのパターンに入るのかしらと思っていたのよ……。』
「あぁ……、なるほど……。」
サーシャは苦笑いを浮かべた。
「それで説明してくれるとありがたいのですけど……。」
『仕方がないわね……。それじゃあ簡単に説明するわね……。』
「はい……。よろしくお願いします。」
サーシャはゴクリと
「実は――」

続く

あとがき
いつも応援ありがとうございます!スキ!やコメントをいただけるだけですごく嬉しいです💕 次回の更新は未定となっております💦
ただいま新作を鋭意制作中のため、しばらくお待ちくださいませ😆

それでは~~



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