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終電と口紅



終電で、女が口紅を塗り直している。

これから男のところへ行くのだ、僕はそう思った。

赤の一差し。
それは、期待であり、企てであり、うわつきであり、健気さだ。

コンパクトを、パチンッと閉めた彼女の顔。
行きずりの僕は、その横顔を美しいと思った。



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