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指からめ


付き合って5年目になる彼が、駅まで私を迎えに来てくれたことが嬉しい。

土曜日の昼。
私たちは、遠距離恋愛を続けてきた。
仕事が忙しい私に代わって、会いにきてくれるのはいつも彼で、
それすら私は毎度ベッドから起き上がらずに彼を迎えていた。


ようやく時間を見つけて、今度私が会いにいくと決めた7月。
新幹線に揺られて30分ちょっと。
けして遠くはないけれど、いつも彼が超えてくれていた距離だと思うと、その足跡を辿るような気持ちになった。
静かな胸の高鳴りは、新幹線の振動のせいではないと思う。

そして、改札の向こうで手をあげている彼の姿を見たとき、とても嬉しかったのと同時に、そんな資格はないような気がして寂しくなった。



私たちは、お互いの指をゆるく絡めながら歩いた。

夏の日差しは、並木道では爽やかな光線に変わった。
セミが鳴き出す前。
風がさらりと後ろから吹き抜けていった。

ーー久しぶりだね
ーーうん、会いたかった

距離や制限された時間が、人を素直にする。
からめた指は、互いの腕の振りが伝われば外れてしまいそうなほどゆるいまま。
もう、2人は「手をつなぐ」をしなくても繋がっていれるくらいになっていた。
それぐらい近くにいた。


ーーあぁ、そうか。

私は不意に思い至る。
小指と小指をつなぐという昔ながらの「恋人つなぎ」。
変なつなぎ方だなってずっと思っていたけれど、きっとそういうことなのね。
一番外れそうな指でしかつながっていないとしても、2人は外れそうで外れない。
そんなことが言いたかったんじゃないか。

私は、自分の指の間に絡まる彼の指の細さに意識を集中させる。


愉快な気持ちになって、軽く腕を振りながら歩いた。
外れそうで外れない、からめた指が愛おしい。



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