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【万葉集】「いちしろく」(ぱっと目をひくように)咲く彼岸花

路の辺の 壱師(いちし)の花の いちしろく
     人皆知りぬ 我が恋妻(こひづま)を  
     柿本人麻呂 『万葉集』 巻第十一・2480番歌     

【現代語訳】
路のほとりに咲く 
ぱっと目を引く
壱師の花(彼岸花)のように
はっきりと、人はみんな知ってしまった 
私の恋しい妻を

  
秋のお彼岸シーズンになると満開になる彼岸花。

咲いていた白と赤の彼岸花

『万葉集』には「いちしの花」が詠われていて
これを「彼岸花」とする説がある。
冒頭の、万葉歌人・柿本人麻呂の「いちしの花」2480番歌は
花に託して、恋する思いを表現した歌。

ぱっと目を引くように咲く「いちしの花」。
本当は隠しておきたかった恋しい人だけれども、
バレてしまったよ、という意味だろう。

「いちしの花」つまり、いちじるしく咲く花=ぱっと目を引く花は
「くさいちご」とか「いたどり」とか、「彼岸花」である、とする諸説
ある。


彼岸花は
道のほとりに咲いていて、パッと目を引く華やかな花だ。
また、群れるように咲く花で、
草の中に赤い花弁が咲き誇る様子は、
とても印象的。


色だけでなく、そのフォルムもまた、とても際立っている。
すっと伸びた茎に直接、炎のような情熱的な糸のように細い花弁をつけているのだから。



私は、毎年、彼岸花を見ると、この柿本人麻呂の「いちしの花」の歌を思い浮かべる。
彼岸花はその形状がまるで花の芸術
恋する思いを託すのにぴったりかもしれない。

余談になるが、
彼岸花は英語で cluster amaryllis あるいは red spider lily といった言い方がある。
私は red spider lily 「赤い蜘蛛のユリ」という言い方が、
なるほど、と思わせて、好きだ。

2021年9月 巾着田で撮影
花弁がまるで炎のよう
白と赤の彼岸花の競演


昨年の2021年9月に彼岸花の群生地で有名な埼玉県日高市巾着田を訪れた。
圧巻の彼岸花だった。

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