草原の実験

「草原の実験」~だいたい500字映画レビュー~


草原の実験

[2014年 ロシア]
監督 アレクサンドル・コット
脚本 アレクサンドル・コット
出演 エレーナ・アン、ダニーラ・ラッソマーヒン
時間 96分

どの瞬間も美しく

 どこまでも続く草原、夕暮れ時の空のグラデーション、画面いっぱいに広がるキルトの花模様、そして美しい少女。映画館で観てから1年経った今でも脳裏にシーンが蘇り、ああ美しい映画だったなとため息をついてしまう。

 ロシアの新鋭アレクサンドル・コットが、旧ソ連で起きた出来事にインスパイアされて作り上げた「草原の実験」。大草原にぽつんと建つ家に、父親と住んでいる少女が主人公の、全編セリフなしの映画だ。

 仕事に行く父親を見送り、家事をこなす合間にラジオを聴き、幼なじみの少年と馬に乗って遊ぶ。ある日突然現れた金髪の少年と幼なじみの間で、三角関係のもつれが生じる―。異国で起きる、どこででも起きそうなドラマだが、セリフがないので想像力が求められ、いっそう映画の世界に惹きこまれる。そして訪れるラストに、誰もが衝撃を受けるだろう。

 主演のエレーナ・アン(当時14歳)はじめ、キャストがセリフなしの難しい役を、表情だけで見事に演じきっている。カメラの配置などを綿密に計算し、撮影したのが功を奏し、どの瞬間も絵画的で美しい。一度は観てほしい映画だ。


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