見出し画像

日本とアメリカの産前産後理学療法の違い


先日、米国理学療法士協会(APTA)の
産前産後コースを受講してきました。


その中で感じたアメリカと日本の
産前産後に対する認識や考え方の違いを
まとめてみようと思います。




アメリカでの理学療法


まず初めに、
アメリカでは理学療法士の開業権があるので
その時点がすでに大きな違い。


産前や産後に骨盤痛や尿もれの症状があると
理学療法士に診てもらってね、
と医師から紹介があります。



それはもう、
一般の整形外科疾患と同じように。




骨盤底筋は切られているし
帝王切開だったら腹筋が切られている。

10ヶ月で伸び切った腹筋は
本来起きるはずの共同収縮ができず
機能として破綻した状態になっている。


腰痛や骨盤痛、尿もれの症状になり


その症状が産後の精神的な不安定さをさらに助長する。


妊娠出産で生じる
体の不調や症状は多くかつデリケートで
全治3ヶ月のケガと同等と言われています。
アメリカでは理学療法(リハビリ)が必要な状態だと
当たり前の認識になっているんだそう。




日本の理学療法


日本では妊娠中や産後に痛みや症状が出たらどこに行くか。


・整形外科?

・産婦人科?



今のところ、
産前産後の不調では保険適応にならず
保険診療下で理学療法を提供するのは難しいです。


(一部、骨関節系の病名がつく場合は整形外科で保険適応になる施設も◎)



ただその他の

・病名のつかない腰痛や肩こり
・尿もれや臓器脱


などの症状のほとんどは自費診療になり、


実施できる施設も
一部の病院やクリニック、産婦人科のみ
整体院、フリーランスなど


多岐に渡るので自分の地域に
産前産後専門で診てくれる理学療法士が
いるかどうかを判断するのかまず難しい…


だから痛みがあって病院に行っても


妊娠中だから、授乳中だから


『仕方ない』で軽い痛み止めと湿布だけ処方されて
経過観察になってしまったり
内服はしたくないから『我慢する』という状況になる。



”産後の不調はあって当たり前”
”みんなあるから我慢する”




アメリカと日本の認識の違いです。





この違いはどこから?



1.生活スタイルと歴史の違い
2.保険診療の違い


が影響していると思う。



一つ目は、生活スタイルと歴史。


米国は洋式、日本は和式。


和服(着物)を着て帯を締め
和式トイレを使用し
床での布団を敷いて寝る


和式トイレ、床の雑巾掛け、床からの立ち上がりなどの
下肢、特に股関節をよく使う動きをしており
日頃からインナーユニットや体幹機能は生活の中で十分に使える。


さらに産後は床上げ(約2ヶ月)まではひたすら安静にし、
妊娠中も産後も
着物や帯である程度腹圧を高めることができ、
骨盤底筋が自然に入りやすい姿勢(正座)で過ごすことが多い。



特別なケアをしなくても
自然と機能を高めやすい生活スタイルをしていたと考えると



ここ数十年で尿もれや産前産後症状が圧倒的に
増えてきているのは
和式の生活が徐々に洋式スタイルに変化していった影響が一つ
関係してるのではないかな、、と思います。





二つ目は保険診療の違い。



日本の医療制度は皆保険。

医療保険が手厚く、
病気になって医師から処方があれば自己負担3割で理学療法が受けられる。


病気とは
『病名が付く』体の症状/状態のことです。


同じ腰痛でも
『椎間板ヘルニア』と病名がつけば保険診療(理学療法の適応)になるけど
『軽い腰痛症』だと保険診療で理学療法は実施できない。


”理学療法が実施できる病気”
に当てはまるものであれば良いが
当てはまらないものは処方すらされない。




アメリカは、


保険に入っている人は保険適応で診療してもらえる。
保険に入っていない人は自費で診療してもらう。


全員が医療保険を支払っているわけではないから

病院にかからないように健康でいようとするし

逆に何か不調があったり困ったら
自費でも良いから治したいと病院に行く。


そこには病名が付くかどうかではなく
症状があるかどうか、悩みがあるかどうかで診療される。



「保険に適応になるなら理学療法士に診てもらおうと思うけど
 保険適応にならないなら我慢しようかな」


そう思ってしまいそうな日本の現実です。




ーー




産前産後のからだの不調は
からだも心も不安定になります。
子育て中にも影響するし
20年後、30年後のからだの不調にも
大きく関わります。



産後20年、30年経って
腰痛や関節痛がひどくなって手術した方のリハビリを
実際に病院で多く経験したし
尿もれや臓器脱に悩む声も沢山聞きました。


なるべく早く関わりたい
そんな想いで踏み出したこの分野。




曖昧にしていた部分
頭の中で自己解釈してた部分を
修正し再確認しながら受講できました。


あーここもこういったところと繋がってくるよね!

って色々な点と点が繋がっていく感じ。
この瞬間がたまらなく面白くて好き。笑



産前産後の女性に
少しでも還元できるように
練習繰り返していきますっ!


#理学療法士 #産後ケア #APTA

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?