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【辰】龍尽くしカレンダー2月・うねうね漢代

やってまいりました、2月・如月。
なぜかしら月イチで龍を紹介する人になっています。
さてさて前回に引き続き、今回の龍は大陸からお越し頂きました、
中国は漢代の龍さんたちです。


1月の龍はこちら↓↓



2月のテーマ「中国・漢代の龍」


じゃじゃんと、珍しく色がはっきりしています。



2月の龍は
漢代(紀元前206年~西暦220年)に元気に飛び跳ねていた子たちから。
日本は弥生時代まっさかり。

それぞれ漢代の、盤や鏡や帯や瓦に用いられた龍から6種です。

左上と左下には「羽」らしきものがありますし
中央の子は「何か丸いものを口内に入れて」いますし。
右上の子はたてがみなのか「首に三本の毛並みのようなもの」がありますし。
日本に現存する社寺彫刻や工芸品の龍の
「アレってまさかコレからきてるの?」というドキドキが静かに潜んでいる!

しかしまぁパッと見た感じ、まだバラけた表現の龍ですね。
描写のされ方は色々ですが
特徴というとやはりS字カーブが目につきます。

うねる胴体、踏みしめる脚、開き始める口!



これが漢代の龍の特徴なのではなかろうか。

左上の子なんかはまだ口を開いてはいませんが、
この漢代頃から、どんどん龍は活発に描かれていきます。

更に昔むかし、古の龍たちはもうちょっと静的です。
紀元前も1千年頃ですと、こう、カクカクした龍文だったり。
材料や工法の関係もあるかと思いますが
カチッとしていて、現代の私たちには「龍」と感じられないそんな図像。


「ぼくも口あけているよ」と言わんばかりの
大阪池上曽根遺跡の弥生土器・龍



加えてさらにうねうねしていますのが
背景の青い唐草みたいなグルグル


青いグルグル
オリジナルなんちゃって龍唐草です。



こちらも龍です。

龍唐草です。


唐草、いわばグルグルした植物系の文様。
これの龍verがあるんですねぇ。なんともはや。

ちょっと形を整理しますと、

春秋時代(紀元前770~476年)・鏡背面の龍唐草


こういうのなんですね。

まず龍の横顔がありまして、ツノらしきものや口がわかります。
そこから縦横無尽にグルグルと伸びていく四肢!
この図ではイマイチですが、肩や肘の関節、爪なんかがきちんとあります。

もとは殷・周時代の略化龍文と呼ばれるものからきています。
こちらがその一部ですが、甲骨文字を彷彿とさせる形。

殷周時代の略化龍文


で、先ほどのような具体的な龍の顔つき唐草になりまして

春秋時代(紀元前770~476年)・鏡背面の龍唐草


それがちょっとゆるーくなって、後漢にはこんな感じ。


後漢(25~220年)・画像石・営城子漢墓の壁画の龍唐草
雨龍にかなり似ている!


そして年明けタイムリーに採取した横浜・中華街の龍唐草!

喜び勇んで撮影しました



とまぁ、なかなかにうねうねとうごめき出した漢代。

そして更に具体的になっていき、ついに有名な「九似説」が唱えられます。
(龍とはツノが鹿で、耳は牛で…という最早公式設定となりつつあるアレ)
それを土台としつつ各時代の好みで肉付けされていくのが
漢代以降の東洋の龍となります。

この漢代の辺りまでが
まだナニモノかになろうとしていた、そんな時期でしょうか。

古代の形を踏襲しながらもうねうねとうごめき、
様々なものに刻み描かれ、みごと人々の生活に密着し始めた龍。
「龍ってなに?」の答えに「九似説」が用意されたのも自然の流れに思えます。



いよいよナナメな龍話、
今回もお付き合い下さってありがとうございます。

お次は3月。
すでに待ち望む方も多い、古代の元祖・龍にご登場頂きます。
うごめく前の確固たる龍。
遥か昔の人々が描いた「龍」とはどんな姿だったのでしょうか。

どうぞ来月もお楽しみに!



龍カレンダー2月の参考
左上:漢時代、禽獣と雲気文の盤の龍きんじゅうとうんきもんのばんのりゅう
右上:漢時代、方格規矩虺龍文鐘ほうかくきくきりゅうもんしょう
中央:漢時代、龍文瓦当りゅうもんがとう
中央左:漢時代、青銅盤の龍文せいどうばんのりゅうもん
左下:漢時代、細線式獣帯の龍文さいせんしきじゅうたいのりゅうもん
上記5点:笹間良彦.図説 龍とドラゴンの世界.遊子館,2008年,p.50より
右下:漢時代、月と蒼龍そうりゅう画像石がぞうせき
笹間良彦.図説 龍とドラゴンの世界.遊子館,2008年,p.67より

略化龍文・龍唐草
小杉一雄.日本の文様15天象.光琳社,1974年,p.10-14宝雲文様、同,p19-26雷文

その他参考
荒川紘.龍の起源.紀伊國屋書店,1996年



おまけ

マウスのふにゃ線で失礼

実にかわいらしいスマイル龍だと、ずっと思っていました(;'∀')

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