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【シリーズ1】ドクター・フー感想:8話目【9代目】

初めに。この記事はとにかくドクター・フー 新シリーズ1の感想をゆるっと語るだけのものです。深い考察や裏情報・昔からの根強いファンが書いたものではありません。『ドクター・フーおもしろ!他の人の感想も読みたい!』と思ってググってみても、なかなか探し当てられずもやもやして、仕方なく自分の感想を吐き出すことにした次第です。どこかにシリーズ1の感想を書いておられる方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。読ませてください。よろしくお願いします。 

・Father's Day
 邦題「父の思い出」

 泣かないはずがない回。ダーレク回に続き、自分でも引くほど泣いた回2。誰だってそうでしょ?隠すな隠すな。

 さて冒頭。轢き逃げで命を落とす父・ピートの死の瞬間に、せめてそばにいてあげたい……というローズの希望を受けて、ターディスは1987年の11月7日のロンドンに到着します。
 一瞬だけ『またドクター、設定間違って全然違う場所や時代に来ちゃったんじゃなかろうな?』と心配したけれど、無事狙い通りの場所・タイミングに辿り着けたよう。

「変な気分…パパが死んだ日、嵐の日かと思ってたけどいい天気なのね」
 『自分にとって重要な人が死ぬ際は劇的なシチュエーションであったに違いない』というローズの勘違いは非常に人間的で、愚かな考えだとはわかっていても共感してしまう。

 あと壁紙のスマイルマークに、サブリミナルBAD WOLF やめろ!!!

 ピートが轢かれる瞬間、ローズを気遣って手を握ってくれるドクター。この辺りに、ドクターからローズへの特別視が窺えて良い。しかしそれでも、ショックと悲しみでローズの足は動かず、父をそのまま一人で逝かせてしまう。このシーンでのローズの動揺がリアルで言葉を失ってしまう。そもそも人が死ぬ瞬間に立ち会うことが結構なショックだというのに、それが身内となれば衝撃は一入で、やろうと思っていたはずなのに足がすくんで動けない……となることも普通にあり得る。胆が太く、有事の際にも迷わず動けるローズ・タイラーでも、そんな当たり前の弱さを併せ持っていることに胸が苦しくなる。
 もう一度やり直させてと泣きながら頼み込むローズに、厳しい顔をしながらも結局受け入れてくれるドクターはやはり相当甘いですよね。同じ時に別の時間軸の人間が存在することの危なさを知っているドクターは再チャレンジなんてさせたくはなかったでしょうし、人間の精神的な弱さや感情の動きを知っているからこそ、『父の死を前にしたローズがあらぬことをしでかしてしまうかも』という不安は常に頭の片隅にあったでしょう。それでも、ローズなら大丈夫だろうという信頼と、他ならぬローズの頼みということもあって、その願いを受け入れたんだろうな。
 しかしその信頼も虚しく、ローズは駆け出し、父の命を救ってしまう。

「君もマヌケな猿だった」
 激おこドクター。そう、ローズは違うと思ってたんだよね〜〜〜

「パパが生きてる!」
「僕の星は滅んだ。家族を救いたいと思わなかったと?」

「脅したってムダよ!さみしいくせに!ターディスの前で私を待つんでしょ?うんと長く待たせてやる!」
 すんごい自信満々にも聞こえるローズの台詞だけど、割と的を射ている感じもするので、さすが相棒だぜって感じ。特に『さみしい』のところ。本当に寂しん坊の宇宙人だからこのドクター……
 しかし、怒って感情が昂った時のローズの姿、ジャッキーにそっくりである。

 そうして、8話にして過去にないほど深刻な雰囲気で喧嘩別れしてしまったドクターとローズ。このコンビががたつくと、もう視聴者は不安でいっぱいになってお腹が痛くなる。早急に仲直りしてほしいと心底思うものの、ドクターの静かな怒りと深い失望の表情から、そう簡単にはいかない事情があるのだと察せられる。
 それこそ、ターディスに戻ったら本当にローズを置いていく気だったのかな。あのドクターがそこまで無情なことはしないと思いつつ、あのドクターだからこそそれくらいのことは怒りに任せてやるかもわからんな……と悩ましい。まあ、一旦ターディスに戻って、ちょっと別の時代・世界に出向いて頭を冷やしてから、また迎えに来てあげるつもりはあったかも。それ以降、一緒に旅を続けるかどうかは別として。
 しかし愛すべきブルー・ボックスに戻ってきてみれば、それが本当にただの青い箱になっているものだから、事態の異常さに気づいたドクターはローズの元へと走り出します。

 一方そのローズはといえば、父との雑談を通して『彼はどうやら自分が想像していたような素晴らしい人間ではないぞ』と気づき始める。ま〜〜〜あのジャッキーから長年言い聞かされてきたのだから、そりゃあ誇張と大袈裟と美化モリモリのスーパーマンのような素敵なパパを夢見ていたのでしょうな。
 その上、式場に到着してみれば、若かりし頃の母は自分を父の浮気相手と勘違いし、人前であることも無視して盛大になじり始めるし。ママとパパは深く愛し合っていた、その末に生まれたのが自分だと信じ込んでいたローズからすれば、口汚く罵る母も、それに応戦する父も、それはそれは残念に映っただろうな。

 ちなみにこの時点ですでにモブが三人死亡し、続く公園の何気ないシーンでさらに四人が消えました。とことんモブに厳しい番組:ドクター・フー

 異変を察知しローズの元に駆けつけてきたドクター。『ローズ!』という呼びかけを背中で受けて『やっぱり来た!』みたいな様子で嬉しそうに口元を緩ませるローズは宇宙一可愛いんだけど、生憎そんな微笑ましい場面じゃないんだなあ……

 さて今回登場するモンスターは『リーパー』。コウモリのような翼を持ち、人間を襲う怪物。『時間が傷つき、その傷を消毒しに来た。すべてを消し去る気だ』というドクターの言は正直よくわからんのですが、数多いる地球外のエイリアンたちとはまた違うのかな。特殊な生き物で、誰かが時間改変を起こして歴史を変えようとすると現れる危険な怪物……時の流れの修復のために全部を抹消するというのもやはりよくわからん。この辺はたぶんBTTFのドクあたりなら理解できるから共演してくれないかな。Doctor繋がりで。めちゃくちゃ気が合うか、壊滅的に馬が合わないかのどちらか一方になるだろうな。

 残った面々で教会に逃げ込んだ後、周囲の様子を探っていると、何度も現れては消える不思議な車の存在を発見するドクター。もうこの時点で、彼は解決策は一つしかないと気づいていたんでしょう。それでもそのことをピートには伝えず、その場を後にする。
 そんなドクターの様子と、彼が口にした不可解な言葉たち、初対面の少女が口にした『全部自分のせい』という呟きと、咄嗟に叫んだ、自分を『パパ』と呼ぶ声……。ありえない、そんなはずがないと頭ではわかっていても、心の深い部分がローズに対して無条件の信頼と親しみを感じている。たったこれだけの要素で、『娘が未来から自分に会いに来てくれたのでは?』と察しがつき、それを信じて受け止められるピート・タイラーの器の大きさよ……。見た目は冴えずとも、彼は間違いなくジャッキーの伴侶であり、ローズの父なのだ。

「物腰がジャッキーそっくりだ…怒った時なんか特に…」
 人生のパートナーからのお墨付きいただきました。

「ローズ。ローズか?大人になったローズだ!」と大きくなった娘を抱きしめるピートと、そこでやっと『パパ』と呼びかけて抱き返すことができるローズ。
 このシーンのピートの理解力・順応力もさることながら、『ありえないけどこの子はローズだ、娘だ』と信じることのできる彼の懐の深さと、言わずとも娘だとわかってもらえたローズの喜びを考えると、もうここで胸熱すぎて1ビシャ(ビシャビシャに泣くの意)です。

 今回の式の花婿と花嫁であるスチュアートとサラ。この二人も言わばモブであり、モブに厳しいこの番組ではどうなるかわからない危うい立ち位置の人たち。しかしそんな二人のありふれた馴れ初めを聞いて、やっと笑顔を見せて『君らを救ってみせる』と優しく、力強く請け負うドクター。やはりこの人(エイリアン)は、どうにも甘くて、優しくて、情に厚い男なんだよ〜〜〜。最高だ。

 微笑ましい父娘の会話を交わすローズとピート(ジャッキーと全く同じに『ドクターが恋人じゃ年が離れすぎている』と言うピートに爆笑するローズ。100点!!!)だけども、肝心なことはさすがに言えないローズ。未来にパパはいないの、本当はここで死ぬはずだったの、それを私が助けちゃったから今こんなピンチになってるの……。言えない言えない。
 ところで思わぬタイミングでリトル・ミッキーと再会するのにはちょっと口元が緩みました。ローズとは四、五歳ぐらいの年齢差かな。

 ベビー・ローズのお世話をしながら、これまでのこと、これからのことを話し合うドクターとローズ。怒りをぶつけ、しかしそれを謝り、打つ手がないのだと正直に明かす。あのドクターがここまで言うのだから、本当に手はないのだろう……たった一つを除いて。しかしそれを、彼はローズに伝えるつもりはないんだろうな。本当に甘くて、悲しくなるほど優しいひと。
 互いに謝罪を終えて、笑顔を見せ合い、仲直りと親愛のハグを交わすドクター&ローズ。最高、最高だ、ここに教会を建てよう、ってここもう教会やないかーーーい!ハッハッハ!はあ……
 そうして抱き合ったことで、ローズから没収してポッケに入れていたターディスの鍵が熱を持っていることに気づく二人。ターディスとはまだ繋がっている!一筋の光明を得て、状況打開のための行動が始まる。

「パパは、子供の頃寝る前に本を読んでくれた。毎晩欠かさずに。土曜日は毎週ピクニックに。家族思いで━━いつもそばにいてくれた。頼りになるパパよ」
 これはきっと、ずっとローズが夢見てきた、理想のパパだったんだろうな。パパが生きていたら、きっとこんなことをしてくれた。こんな人だった。優しくて素敵で家族思いの、頼れる大好きなパパ……。
 そして娘が語る未来の自分の姿に、何かを察したのか『それはおれじゃない』と首を振るピート。自分が本当はこの日死ぬ運命だったのだと悟ってしまう。

「全部おれのせいだ」
「私のせいよ」
「おれは父親だ。責任はおれが負う」

 自分の死の運命を理解して、ローズがそれを阻止したからこそ今の危険な状態が巻き起こったのだと把握して、そしてそれらを受け止めている。ピートは本当に度量の大きく、精神的なしなやかさと強さを持った人なのだ。

 しかし、ターディスの再現でピートも死なずなんとか世界が元に戻る道に行けるかと思った直前に、ドクターは襲われ、ターディスも消滅してしまう。残ったのはブルー・ボックスの鍵のみ。とんでもない、絶体絶命の大ピンチ。
 もはやなす術なしとお手上げ状態のところで、父・ピートは『二度も自分を轢き殺しかけたあの車が、何度も現れては消え、現れては消え、教会の周り……自分の近くを走り続けている』ことに気づきます。んもお〜〜〜察しの良さがこんなところで発揮される〜〜〜

「ドクターは優しい男だ。お前のために、おれを生かそうと…だが、他に手はない」

 この後の展開はもう、何度見ても涙びしゃびしゃになってしまって、とてもじゃないけれど言葉では言い表せられない。ピートの覚悟、家族への愛情、そして最後の最後でローズを大人になった我が娘と理解したジャッキー……泣きながら家族と抱き合い、そして去ってゆく父。
 本来の歴史通り、車に轢かれて命を落とすピート・タイラー。しかし彼はその前に覚悟をし、『後を頼む』と妻と真摯な言葉を交わし、死にゆく最後の瞬間まで娘と手を繋ぎ、孤独な最期を免れた。結局父を救うことはできなかったけれど、慰めのような気休めのような、小さなちいさな救いが生まれ、それはローズとドクターがこの時代に来たからこそ発生したもの。二人の旅・行いは、とても局地的で些細で、あってもなくても大きな時の流れには影響しないような、それでもそこに生きる、そこで生きた人たちの魂を救うものになったのだ。
 本当に熱くて、温かくて、寂しさと切なさは残るものの、何かしらの救いを感じられる素晴らしい話だと思います。


 ところでこの回では『些細なことでも歴史を変えることは絶対のタブーである』と念入りに描写されるのだけど、後々のシリーズで結構ちょこちょこ歴史改変されているのがやはり不思議。
 もしかするとドクターにとってローズはかけがえのないパートナーであり、タイムロードたる彼の特別な相手ということはそれだけでかなり重要な存在で、ローズ周りの歴史はどんなに小さなことでも変えることは影響が大きすぎることなのかな……とか勝手に妄想しました。オタクすぐ妄想する。



 さぁ〜〜〜って来週はみんな大好き噂のイケメンキャプテンが初登場だぁ〜〜〜い!


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