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【シリーズ1】ドクター・フー感想:3話目【9代目】

初めに。この記事はとにかくドクター・フー 新シリーズ1の感想をゆるっと語るだけのものです。深い考察や裏情報・昔からの根強いファンが書いたものではありません。『ドクター・フーおもしろ!他の人の感想も読みたい!』と思ってググってみても、なかなか探し当てられずもやもやして、仕方なく自分の感想を吐き出すことにした次第です。どこかにシリーズ1の感想を書いておられる方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。読ませてください。よろしくお願いします。 

・The Unquiet Dead
 邦題「にぎやかな死体」

 

 ローズが、素で普通に優しくて親切な女の子だという描写が光る回。シリーズ4のドナも然り、コンパニオンたちが当たり前のように親切で優しいのだと窺えるシーンがあると、一気に親近感が生まれ好感度が上がるのでいい。
 この辺でようやく『もしやこのドラマ、名前があるゲストキャラでも結構簡単にぽんぽん死ぬな?』と気づき始める。判断が遅い!!!(ドバン!!!)あまり馴染みがなかったのでグィネスが死んでしまったことに本当に驚いてしまった。

 未来の次は過去ということで、今度は1860年のナポリに向かおうとしている主人公コンビ。最終的にめちゃくちゃ荒っぽいターディスの運転のせいで、恐らく揺れに耐えきれず二人揃って床に転がって仰向けになっちゃう。もうおかしくて笑うしかないとばかりに二人でげらげら笑っているのが微笑ましい。この二人の不思議な友達感がたまらない。

 この回はローズ&ドクター、葬儀屋の二人、ディケンズ氏という複数の視点が並行して進み、物語の中盤以降で三点の物語が重なって新たな方向へと流れていくのが面白い。群像劇とまでは言わないだろうけど、少しでも目を離すと話の展開についていけなくなるので気がつくとかぶりつきで見ることになっている。
 しかし、楽屋で人生投げやりになっているディケンズ氏に『人生まだ先がありますよ』と真摯に慰めてくれるあのモブの人、普通に優しい。言葉だけを見るとなんとも無責任で他人事のような台詞だけど、声色や表情から本当に親切にしてくれているのだと窺えるのがいい。実際ディケンズ氏は、子供の頃から家族の情や愛というものに縁の薄い方だったようですね。自嘲と皮肉を込めて『道化を続けるさ』と独り言つその姿からは、諦念とかすかな絶望が滲んでいる。

 あーーーローズのドレス姿最高。Fantastic!!!!
 『笑わないで』と言いながらたぶん恥ずかしさもあって自分で笑っちゃうローズに、『キレイだ!』と即答するドクターがまたよい。スタンディングオベーション。
 しかし、1860年12月24日のナポリにて、ドクターはローズに何を見せようとしたのかな?
 1861年3月にはイタリア王国が成立、その直前のごたごたや、戦争が一応集結した幸せなクリスマスの世、とか?いやこの時点では戦なんて全然終わってないだろうけど……
 というかナポリって、ほんとうにあのナポリでいいの?イタリアの?アマプラの字幕さんはちょいちょい信用ができなくて……そして私のリスニング力はお察しレベルだから……でも『ネイポース』って言ってるからたぶんナポリなんですよね。



「時代がずれた」
「気にしない」
「ここは1869年だ」
「気にしない」
「場所も違う」
「気にしない」
「カーディフだ」
「……そう」

 不勉強故にこの二人の『えっマジ?』みたいな雰囲気の理由がわからんのですが、ここを見てから死ねとまで言われるあの有名なナポリに来たぜ~!とうきうきわくわくしていたら、イギリスのウェールズに着いてたわけだから、近場すぎてちょっとがっかりって感じ?
 ウェールズは長閑で自然が多い場所だから、ロンドンっ子のローズからすると田舎じゃん!とか思ったりしたのでしょうか。
 この辺の『ご当地にお住まいの方なら言わなくてもわかるあるあるネタ』を理解できないのが、しみじみ残念。悔しい〜〜〜。ウェールズ人でもウェールズを喋れない人のほうが多いとかそれぐらいしか知らんのですよ。
 1860年のナポリの件についてもそうだけど、自分の知識のなさが思わぬタイミングで浮き彫りになることが、娯楽の厳しくも面白いところですね。

 クリスマス・キャロルといえばスクルージ・マクダック、という人も多いのでは。私です。

 悲鳴を聞きつけてにっこり笑顔になるドクター(これだからドクターは!!!)

「私の馬車だからだ!(だから降りろ)」
「なら乗って!」

 ここでこの台詞を笑顔で言えるのがドクターよ(それに従って同乗しちゃうし、最初放り出そうとしていたくせに著作を褒められたらころっと気に入ってしまうディケンズ氏も可愛い)
 そして憧れの作家先生に会えてめっちゃ早口になって著作の感想を並べ立てるドクターが実にオタク仕草全開で共感と羞恥が凄い。あと夢中になっていたせいでローズを追いかけるのを忘れてたのね。
ディケンズ氏「本の感想どころじゃないだろ!」
 氏と視聴者の心が一つになった瞬間である。事情を飲み込むとすぐさま助力してくれるのがまた格好いい。

『僕のパートナーだ』
 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああ

 誘拐されて、死体に殺されかけて、かんかんに怒れるローズ(当たり前)をめっちゃ楽しそうに見守っているドクター(この人はたいていこんな感じよね)
 腕を組んで壁にもたれて片足をクロスさせて爪先を立てる、あの9代目の立ち姿が大好き。

 生きる時代も、価値観も、常識も、何もかも違うローズとグィネスが、学校が嫌いという話題で『わかるわ』と共感して笑い合う様が愛しい。恋バナするの可愛すぎでは???
 そんな尊い空気が一瞬にして不穏なものに変わっていくのやめて。
 3話の時点で登場する『バッド・ウルフ』

 『タイム・ウォーで種族ほとんど全滅しました』なんて言われちゃあ、ドクターにとっては鶴の一声レベルじゃんね。
 でも今回のゴーストたち(ゲルス)は、人間は死体捨ててるんやから我々に分けてくれや〜とか言ってますけど、冒頭でご婦人の死体を乗っ取って殺しをやって死体を増やすなんてことやってるので普通にアウトです。ドクターはこの時点では把握してないから仕方ないかもしれないけど。しかもおばあちゃんの体を使って孫を殺すという極悪さよ。
 この『死体を分けてくれ』という願いに、咄嗟にだめよと拒否するローズと、そんなローズに『なぜ?』と真顔で尋ねるドクターの、この温度差。

 気絶したグィネスに駆け寄って介抱するローズは本当に優しい。その後、人間の尊厳と弱ったグィネスを心配してドクターと対立するところも含めて、彼女は実に健全で、真っ直ぐな心と優しさを持った女性なのだと改めて実感する。自分の手の届く範囲の『他者』を尊重し、当たり前のように助けてあげようとする。その心根の強さ、気高さ。
 シリーズ4での、ポンペイの人たちを何としてでも救おうとしていたドナにも同じものを感じる。ドナの場合は『歴史を変えたらいけない』というスタンスのドクターと対立するための役割も与えられていただろうけど、それでも彼女が当たり前のように所持している親切心と隣人愛は疑いようがない。そうなんですよ私はドナが大好きなんですよ……
 今回のローズとドクターの対立も、ゲルスたちがあくまで死体を使わせてくれと頼んできているところが話の論点が噛み合わなくなってしまう原因なんだよな。ドクターも『お前ら地球人全部ぶっ殺してその体もらうで!』なんて言われてたら絶対に了承しなかっただろうし。生命活動を終えてしまった肉体が存在し、そこに宿ることで生き延びられる存在がいるのなら、使わせてあげればいいじゃんと本気で思っているんだろうな。滅びゆく種族にはどうしても甘い人だしね。おまけにタイム・ウォーが原因ですよ。そりゃあ共感やら罪悪感やらで願いを聞き届けてあげたくなっちゃうだろうな。


 ターディスの時間設定は結構ずれる、ローズのパパはずっと昔に死んでいる、バッド・ウルフ、時間は流動的……後の伏線になるものや、この後のお話の補足・補強となる情報が実に細かく散りばめられていていいね。特に『ターディスの時間設定は結構ずれる』は、次の4話での冒頭を考えると本当に笑ってしまう。

 さて、結局騙されていたことが判明し、絶体絶命の窮地に追い詰められるドクター&ローズ。ドクターが同情したことによって事態がめっちゃ悪い方向に行ってしまったのが非常に印象的だった。大ポカにも程がありますけど!?って驚いた。実は結構やらかしがちなドクター。トラブルに自分から首を突っ込むし、掻き回すし、その結果自分の首を絞めることもしばしば。
ドクター「同情したのに!」
ゲルス「同情するなら世界と肉体くれ!」
 体なき子

 ドアノッカーから出てくる幽霊と遭遇するディケンズ氏、クリスマス・キャロルのオマージュでふふっとなる。

「僕の責任だ」
「ついてきた私が悪いの」
 もう諦めてる二人〜〜〜

「こんなところで死ぬとは!」「……カーディフで!」
 カーディフになんか恨みでもあんの???さすがにカーディフも遺憾の意では???

「最後まで戦う?」
「ああ」
「一緒に?」
「ああ」
 言って、目を見て、ぎゅうと手を繋ぐ二人。まさしく運命共同体。生死の境目にも引き離せぬ絆がもうすでに生まれている。

「会えてよかった」
「私も」
 しかしここら辺になるとさすがに視聴者も後の展開が読めてくるので段々面白くなってきてしまう。死を覚悟した二人が最後にお互いに感謝と友愛の言葉を伝える感動のシーンやぞなにわろてんねんうっふっふ……
 でも、この局面においても笑い合える二人の関係性がたまらない。

 架け橋となった瞬間にすでに命を奪われていたグィネス。さあドクター、ここからどうやって彼女を救うんだ!?とわくわくしていたので、この展開は本当に、ほんとうにびっくりした。
 『召使いの娘が世界を救った』。彼女こそが救いの天使となった……ということかな。

 ディケンズ氏の絶筆となった未完の『エドウィン・ドルード』の真相を唯一知っているのはドクターとローズの二人だけ。
 恐らく未来から来たと思われる謎の男から『あなたの作品は永遠に残るよ』と言われ、もちろんそれが真実かどうかを確かめる術はないとしても、その言葉がどれほど彼の人の心の慰撫となり、活力となっただろう。ディケンズ氏が亡くなる未来は変わらずとも、晩年を、家族との絆を取り戻し、自分の才能を信じ、元気で精力的に最後まで書き続けることができたのであれば、これほどの救いはないのだろう。こういう翻案があるから、時代物を織り交ぜた作品は素敵で好き。


今回のMVP:チャールズ・ジョン・ハファム・ディケンズ氏
 実際、彼が機転を利かせて助けてくれていなければドクター&ローズは詰んでいたので、本当に命の恩人ですよ。


次回、次回予告開始二秒で突如として破壊されるロンドンのシンボル・ビッグベン!(爆笑)
現れたUFOに暗躍するエイリアン、あとミッキーも再登場するよ!お楽しみにね!

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