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【シリーズ1】ドクター・フー感想:4話目【9代目】

・Aliens of London
 邦題「UFO ロンドンに墜落」

 新シリーズが始まってから初めての、話が次週に跨ぐ回。
 この前後編でローズママ・ジャッキーの株がぐぐっと上がった人も多いのでは?1話の描写でジャッキーはちょっと困った母親で、ローズからも多少うんざりされているような描かれ方が強く、ジャッキーの娘に対する真摯な愛情のようなものはあまり感じられなかったのだけれど、ここにきて一気に評価が巻き返される。ジャッキーからローズへの愛情はこの後も丁寧に描かれるので大好き。タイラー母娘の絆は愛しい。
 またミッキーが再登場することにも驚きと喜びが大きかった。使い捨てではなくしっかりと掘り下げがあると、世界観はもちろん、そこに生きる人々のリアリティーも増すのでとてもよい。
 ミッキーもジャッキーと同じく今後ばりばりと好感度が上がっていくキャラクターなので大注目。

 さて冒頭。未来、過去と旅をし、現代のロンドンに戻ってきたドクターとローズ。お馴染みのブルーボックスは、ローズとジャッキーが住まうアパートのすぐ近くに出現します。
「どれだけ留守に?」
「約12時間」
 もうこの冒頭の時点でフラグが凄い。

 ママと話してくるわ!と駆け出すローズを笑顔で見送った後、近場に貼られた行方不明者捜索の張り紙に載る、自分の相棒の写真を見つけるドクター(爆速フラグ回収)
 そんなこととは知らないローズが、ちょっと一晩友達のところ泊まってきたわ~の体で帰ってきたものだから、一年ぶりに一人娘、唯一の身内が目の前に現れたジャッキーも、そりゃあマグカップ落っことしますよ。
 しかし、十二か月が経っても変わらずに今も娘の手がかりを求めて貼り紙を作り続けていたジャッキーの親心に胸が締め付けられる。夫に先立たれ、女手一つで娘を育ててきたジャッキーにとってもローズは掛け替えのない大切な存在であり、間違いなく心の支えであったんだろうな。
 1話の描かれ方でどうにもジャッキーは『守銭奴で人の話を聞かない、しっかり者のローズとは正反対のだらしのない母親』的な印象が強かったのだけど、このアバンの一幕だけでも彼女の優しさと魅力が伝わってくるのがよい。さすがはあのローズ・タイラーの母親ですよ。

 アバンが開けて、ターディスに『BAD WOLF』の落書きをするサブリミナル・ジャリボーイを挟みつつ、ママ(と呼び出されたお巡りさん)に説明会。
 一年間、ちょっと旅行に行っていたの、とさすがに自分たちでも苦しいとわかっている言い訳をする二人に、もちろん納得するジャッキーではない。火を噴くように怒りまくり(当然の反応だけども)、なんか知らんが娘を誑かして連れ回していたらしい怪しい男にも果敢に突っかかりまくる。
 ところでこのシーンで『あんたが現れたすぐあとに娘は煙みたいに消えた!』と字幕ではなっているんだけど、明らかに『チャーミングスマイルズ』って聞こえるんですよね。実際はどんな台詞なの!?なんて言ったのジャッキー!?甘い笑顔で誘惑したんだろ的な!?イギリス語の字幕も付けてくれよアマプラーーー!!!

「ドクターの振りして娘を引っかけた?」
「僕はドクターだ!」
「傷を縫ってみな」

 ここでジャクリーン・アンドレア・スゼット・タイラーの渾身の平手が決まったァ~~~~!!!
 そしてこの間、母の苛烈さを知り抜いている娘は目も向けない有り様である(自分がそれだけ心配をかけたとわかっているから、口を出せないというのもあるだろうな)
 この後、泣いてハグしながら改めて感動の再会をする母娘二人だけど、やっぱり本当のことは言えないローズ。そりゃそうだよね……でも話してもらえないジャッキーのつらさもわかるから、余計に視聴者はつらい……。

「あなたと話してると気がヘンになりそう。すごい体験をしても誰にも言えないんだもの。エイリアンとか宇宙船とか、実在するって私しか知らない」
 二秒で回収されるフラグを立てるローズ。
 ところでここのドクター&ローズの会話いいよね。ローズのしんみりしたムードから一転して、顔を見合わせて噴き出す二人がまた可愛い。基本的に気が合うんだろうな。あとしれっと900歳だと明かされるドクターの年齢。

 この突如墜落してきた宇宙船と、巻き込まれて破壊されたビッグベンと、その際に鳴り響くゴーンという鐘の音と、もうとにかく絵面のインパクトが凄すぎて、初見で手を叩いて笑ってしまった思い出深いシーン。人はなぜ、フィクションの中でその街のシンボルが破壊されると狂喜してしまうのか。平成ガメラシリーズ等でも、地方の大きな駅や街が破壊されるのは人気だったそうな。なんでだろうね。超楽しい。
 そしてまた、とんでもないトラブルに駆けつけるために、大笑いして手を繋いで走り出す二人よ~!(しかし結局、道路閉鎖のために近寄れず、タイラー家の小さなテレビで事の次第を見守ることに。この辺のリアルな不自由さが面白くていい)

 さて、今回登場する宇宙人はラキシコリコファラパトリアス星人(舌噛むわ!)のスリジーン一家。ちょっとチープな着ぐるみの見た目を含めても、印象深い良いキャラをしていて好きです。あの、浅い眠りの中で見る夢の中に出てきたら死ぬほど寝覚めが悪くなりそうなデザインよ!一目見て「うわ着ぐるみ〜!」と楽しくなってしまうと同時に、おどろおどろしい肌やアンバランスな手足、そして異様なほど大きく真っ黒でつぶらな瞳。全てがちぐはぐしていて存在感があり、見ているとふと我に返るようにぞっとする。
 そんなモンスターが、人を殺してその相手になりすます(殺害した人間の皮膚を剥いで身に纏って!)という手段がもうめちゃくちゃおぞましくて言葉にならない。その手法はもちろんとして、危険な宇宙人が何人も、ひっそりと、国を統治する政府の中に紛れ込んでいる……なんて、珍しい設定ではないかもしれないけれど、やはり空恐ろしいものがある。身近な人間、見知った有名人が、実はいつの間にか全く別の生き物と入れ替わっている……それも見た目も名前もそのままで。恐ろしい。仮面ライダーカブトじゃん〜〜〜

 今回初登場するといえば、もちろん外せないのは上院議員のハリエット・ジョーンズ。彼女の、時には空気が読めていない・周囲や状況が見えていないと思われるその強い意志も好きだ。緊急事態でも市井(たとえビッグベンを破壊して墜落してきた宇宙人に対して酔ってお祭り騒ぎをしながら『ようこそ!』と横断幕を張るロンドン市民でも)の毎日は当たり前に続くわけで、それを忘れること・考えないことはできないんですよね。彼女は彼女なりに、精いっぱい日々を生きて、戦っていて、それは本当に気高い行いだと思う。後に首相になったことも納得。それだけに、10代目との仲違いは残念だったな。
 前後編の前話では、スリジーンの凶行を目撃し、真っ先に事態の危険性に気づくキーパーソンの役割を果たす彼女。恐ろしい宇宙人が殺人を犯し、その皮を纏って国政の重要人物に成りすます……そんなとんでもない場面をたった一人で目撃したハリエットが、パニックになることを避け自分を律し、必死に気丈に振る舞いながら、問題を解決できる可能性のあるエイリアンのエキスパートであるドクターを探すところに、彼女の芯の強さと正義感が窺える。それでも、ローズと二人きりになった途端に声を震わせ、涙が堪えきれなくなるのは、本当はめちゃくちゃ怖くて仕方なかったんだよなあ〜と共感でほろりとなってしまう。この状況下で冷静を装えるだけでも本当にすごい。さすがは未来の英国首相。また、そんなふうに突然泣き出した見知らぬ年上の議員さんとやら(ローズは現在の英国首相の名前も知らないレベル)に、驚きつつもすぐに寄り添って肩を摩ってあげるローズ・タイラーの優しさよ……。咄嗟にこういう行動ができるところに、彼女が当たり前に持ち合わせている心根の美しさが出ていて大好き。

 まんまと罠に掛かって分断され、それぞれにピンチに陥るドクター、ローズ、そしてジャッキー(まあ九割ジャッキーのせいなんですけど、彼女が通報していなかったら事態の発覚が遅れて地球は滅亡していた可能性が高いのでファインプレーではあります。娘を思っての行動でしたしね)。とんでもなく緊迫したシーンから次回予告へと引くのがこれまたニクい演出。
 前話あたりから『ドクター・フーは割と容赦なくネームドキャラが死亡する』と勉強した私は、ジャッキーもミッキーもハリエットも平等にすぐ死ぬかもしれないと戦々恐々していたので、そういう意味でもはらはらする展開でした。 

 今回の再登場ではあまり格好いいところを見せられなかったミッキー(突如恋人が目の前で謎の青い箱と一緒に消え、警察から疑われまくり、彼女のママは自分を殺人犯として吹聴しまくり、消えた恋人を一年間探し続けたミッキーの心情を考えると、ほんともう胃が痛くなる)だけど、来週はMVPに輝くぜ!

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