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【シリーズ1】ドクター・フー感想:13話目【9代目】

初めに。この記事はとにかくドクター・フー 新シリーズ1の感想をゆるっと語るだけのものです。深い考察や裏情報・昔からの根強いファンが書いたものではありません。『ドクター・フーおもしろ!他の人の感想も読みたい!』と思ってググってみても、なかなか探し当てられずもやもやして、仕方なく自分の感想を吐き出すことにした次第です。どこかにシリーズ1の感想を書いておられる方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。読ませてください。よろしくお願いします。 

・The Parting of the Ways
 邦題「わかれ道」

 とうとう来てしまった最終回。シリーズ1の終わり、クリストファー・エクルストン氏が演じる9代目ドクターの最後のお話です。
 終わるのがつらい。ほんと、ただそれだけしか言えない。
 タイトルの『わかれ道』は様々な解釈をすることができる。9代目から10代目への分かれ道・バトンタッチという側面は強いだろうし、人生における多種多様な枝分かれした道・未来が詰まった回でもあったと思う。生と死、離別と再会、あり得たかもしれない幾つもの可能性。
 数え切れないほど膨大な『別れ道』の先が、ドクターにはいつだって、常に、頭の中に見えている。


●暗躍し、地球の歴史を影で操ってきたダーレク

 あんなに心に深い傷と複雑な思いを残して死んでいった『たった一人残された孤独なダーレク』が、実はまだこんなにいっぱいいました〜〜〜wwwとなったら、ドクターだってソニック・スクリュー・ドライバー放り投げて拳で殴りかかるレベルだし、ローズも怒っていい。しかし、彼女が出会ったあの唯一の存在とはぱっと見そっくりな見た目(胡椒の容器)でも、別の個体だとはすぐ気づけたでしょう。なぜならあの時、地下に差し込む光を浴びて死んでいった、ローズがそばにいたことで最期の瞬間には孤独ではなくなったはずのあのダーレクは、彼女の細胞を得、心のようなものを獲得していたのだから。
 そんなローズを救い出すために、ドクターとジャックを乗せたターディスは全速力で宇宙を駆けます。しっかし、敵の艦隊のど真ん中、中枢であり、敵軍の心臓部である旗艦に躊躇いもなく突っ込んでいくんだから、それなりの作戦と勝算はあったにしてもとんでもない博打行為だよね。
 それでも二人は賭けに勝ち、ローズをターディス内部に収める形で敵陣のど真ん中へのワープを成功させます。下手したらローズの体を分断するような事態にもなりかねないのだから、かなり繊細な運転技術が必要だったと思われます。でもそんな絶妙な操作ができるんならなぜ1860年12月24日のナポリに行こうとして1869年のカーディフに行っちゃったりするんですかねえ!
 ともかく、無事にローズのみの確保に成功した一行は、モンゴルの騎馬兵が攻めて来ても破れないというターディスの中で束の間の再会を喜びます。

 無言のまま早足で近寄って固く抱擁をするドクターと、それをしっかり受け止めるローズ。特にドクターは、一度はローズが死んだ、ローズを死なせてしまったと思っていたわけだから、彼女が無事で、怪我もなく、自分のもとへと帰ってきてくれたことには感慨も一入でしょう。
「来てくれたのね」
「約束した」
「信じてたわ」

 このローズの言葉に一切の嘘がないのも凄い。彼女はウィーケスト・リンクで殺されかけた時も『ドクターが見捨てるはずない!』と最後まで彼を信じていた。二人のこの強固な絆よ。
 そして続く「ハグを?」「もちろん!」「(ドクターを指して)彼に言ったんだ」とふざけた後、満面の笑みでこれまた固く抱きしめ合うジャックとローズのやりとりが堪んないんですよ!!!こちらの二人は仲の良い兄と妹のような雰囲気が最高に愛おしい。ドクターはもちろんだけど、ジャックだってローズが死んだと思った時は声を荒げて激しく怒り、悲しみを爆発させていたんだから、彼にとってもローズは大切な、かけがえのない仲間なんですよね。

 さて、ダーレクさんたちにご挨拶しよう。こんにちは皇帝陛下〜とあっさりターディスを出るドクター。ドクターのこういった、わざとらしいくらいとぼけたやり口が最高に好き。

“迫りくる嵐”
 めっちゃ格好いいんだけどできれば本人以外の口から聞きたかった二つ名だな〜〜〜
 この名前、ドナが聞いたら『嵐?かっこつけすぎでしょ。頑張って、うるさい台風ぐらいなものよ』とか言って欲しいな。
 
 ダーレク皇帝が語る、一族復活の道のりは実に惨たらしいもので、ドクターでなくとも聞いているだけで気分が悪くなるようなものだけど、『その肉体を刻んで 煮込み 裏ごしした』って言葉のチョイスはちょっと可愛くて和んでしまう。可愛いからこそ邪悪さが際立つけど。ふと、昔、初めてスイートポテトを作った時に蒸したサツマイモを裏漉しするのがめちゃくちゃ面倒だったことを思い出して『皇帝も最初の頃は作業に慣れてないだろうし、大変だったんだろうな〜』とちょっとだけ親近感が湧いてしまった。
 サツマイモと人肉を一緒にするな!!!

 自らを『ダーレクの神だ』と名乗る皇帝と、それに追従して『神様!神様!』と大声で讃えるダーレクたちに、さすがのドクターも『どうかしている』とドン引きの表情。
「孤独な数百年を過ごせば誰でも正気を失う。だがもっとひどい。自らの肉体に狂わされた。体に残る人間の腐敗臭に。自分を呪っているはずだ。もはや救いようがない」
 そう語ってダーレクを見つめるドクターの目は、怨敵でありながら、何かもっと悲しく哀れなものに向ける眼差しのよう。制止を軽々と振り切ってターディスに乗り込む際にはいつもの余裕たっぷりの笑みを見せて去っていくけれど、扉を閉めた瞬間、何かを堪えるようにドアノブを握ったまま入り口に額を押し当てて立ち尽くすドクターの背中・横顔は、憂いと悲しみに満ちている。


●悲壮なる反撃開始

 ともあれ、無事にローズを救出したターディスは再びサテライト5に帰還します。残った設備でダーレクの艦隊を迎え撃ち、なんとか地球を救おうとするドクター一行。
 このシーンで初めてリンダの姿を目にしたローズが、ドクターと親しげに言葉を交わす彼女になんとも複雑そうな表情をちらちら見せるのが、緊迫したシーンの中でも微笑ましい。
 なんで逃げなかったんだ!というドクターに『そばにいたいの』と答えるリンダ。
 はっと見つめ合う二人……。
 そしてめっちゃ気まずそうに目配せするローズ……。

 状況が許せば『誰よその女!』って言いたかったけど我慢したんだろうなあ〜〜〜。なんて愛しいんだローズ・タイラー。ローズはとっても勇敢で優しいけれど、親しい人には年相応に気遣いの欠けた甘えを見せたり、結構やきもち焼きだったり、決して完璧ではない人間らしい欠点があるところが本当に好き。
 ほとんど今生の別れとなる会話の際に『ベストを尽くすわ』『僕もだ』と言葉を交わし合い、お互いに距離感をはかりかねて親愛のキスをしそうになりつつまごまごしながら結局握手に収まるドクターとリンダの様子を、後ろから眺めるローズの顔がまた〜〜〜〜〜〜〜〜

 しかしデルタ・ウェーブのエネルギーが充填されるまでなんとかマンパワーでダーレクの攻撃を凌ごうという作戦は、やはりどう考えても無謀だし、負け戦。それでもやるしかないのだと、自ら死地に、どこか意気揚々とした足取りで向かうジャック・ハークネス。
 『楽しかった』と、彼は共に旅をしてきたドクターとローズに微笑みかけます。
「これでお別れだ」
 自分に未来がないことを、この時点でジャックは覚悟しているわけです。
 ジャックは全性愛者で、男女の別なく結構手当たり次第に口説いてしまうなかなかにプレイボーイな人で、ローズのこともドクターのことももちろん恋愛的な意味で好きだったのだとは思う。けれどそれ以上に、恋慕を超えたもっと途方もなく大きくて深い慈愛・敬愛を抱いていたんだろうな。
 自分の人生を変えた二人のためなら、この命は惜しくない。生よりも優先すべき意志が、ローズとドクターとの出会いでジャックに芽生えたのかと思うと、こんなに悲壮感溢れるシーンなのに胸がぐっと熱くなってしまう。
 勇気と気高さを知ってしまった彼は、もうただの卑怯な詐欺師には戻れない。
「ローズ、君のためなら死ねる」
「会ったのが運の尽き。卑怯者でいられたのに」

 熱いキスと共に、キャプテンから二人に送られた音葉。これほど熱烈な愛の告白も、そうはないと思う。

 そのジャックがダーレクと共に戦う義勇兵を募るシーンで、最後に自ら志願してくれた女性は、恐らくローズが参加させられていたウィーケスト・リンクの撮影現場にいた番組スタッフの人でしょうか。何気ないシーンではあるのだけど、『ダーレクなんていない!騙されるな!』と声を張り上げて現実から目を逸らそうとするロドリックと、怯えながらも現実を直視して自分にできることをやろうと勇気を奮う彼女の対比が鮮やか。当たり前の人間が持つ弱さと強さを同時に描いていて、すごく好きだ。

 
「できることはある。逃げ出すのさ。あとは歴史に委ねて……僕らは1989年のスペインへ」
「あなたにはできない」
「君もだろ」

 二人っきりで残された静かなフロア500の中、黙々と準備を進めながら交わされるドクターとローズの会話。お互い一瞬の間も置かずに『あなたは逃げ出すことはできないよ』とお互いのことを断じているところに、二人が重ねてきた時と経験、そして想いが感じられる。
 それでも奇跡のように状況が好転することはなく、このままでは全滅は免れない。
 ここでドクターが打つ一芝居がよおお〜〜〜〜〜〜〜〜!
 デルタ・ウェーブの構築状況を確認して、一目見て『これは無理だ』と悟った瞬間、もう迷わずローズだけは生かすことを選んでいるんですよ。ぱっと何か妙案を思いついたような顔をしてそれっぽい台詞を言ってローズを騙して、ターディスに閉じ込めた後、彼女だけを21世紀の地球に送り返すわけです。
 この!!!
 エゴよ!!!!!

 ローズの意思も何も関係なく、ジャッキーとの約束を守るため……というのは建前で、大部分は『ローズを死なせたくない』というドクター個人の感情・欲望で、勝手に相棒を安全圏へと強制送還させる……これがエゴでなくて何なのか!
 そして彼のこのエゴを、一体誰が責められましょう……。
 その権利があるのはただ一人。ローズ・タイラーその人だけです。


●ファンタスティックな人生を

 緊急プログラムとして非常時にのみ起動するホログラムメッセージのドクターと対面するローズ。相棒の言動をよく理解し予測しているらしく、ローズの反応を予期した反応は組み込まれているものの、あくまで事前に録画されたもので、会話のやり取りはできないし、映し出されたドクターの視線も一方向に向いたまま動かない。虚空を見つめながら話し続けるドクターの虚像。
「僕を忘れたくなければ……できることは1つ」
 この瞬間、ローズがどこに移動しているかなんてわかるはずがないのに、狂いもなくローズが立っている方向・ローズの眼差しに合わせて視線を向け、しっかりと目を合わせて言葉を続けるドクターに、もう号泣も号泣ですよ。『ローズならきっとこうする・ここでこう言って、たぶんここに移動して、こうして僕の言葉を聴いているだろう』と予測ができたんですよ。それは類稀なる頭脳を持ったドクターだからこそ可能だったのかもしれませんが、それ以上に、彼とローズが共に過ごしてきた時間と経験があってこそなんですよ。それだけの絆を築いてきたんですよこの二人は。

「いい人生を送れ。僕のために。ファンタスティックな人生を」
 そう言い残し、ドクターの穏やかな笑みと一緒にホログラムの伝言は終わる。

「置いていかないで。イヤよ。戻るのよ。戻って!」
 涙まじりのローズの懇願も虚しく、ターディスは帰り着いてしまいます。
 どんなに動かしても、弄っても、泣いても叫んでも、ターディスが再びドクターのもとに戻ることはなく、意気消沈のローズ。
 そしてそんなローズのもとへと即行で駆けつけてくれるミッキーよおおおお〜〜〜!!!(号泣)前回あんなに気まずい感じで別れたというのに、『なじみのあるエンジンの音が聞こえたからさ』とたったそれだけで、どこに到着したかもわからないターディスを探してロンドンの街を駆け回ってきてくれたんですよ。度量の広さが海並か???器が完成されすぎておらんか???普通なら気まずくて顔を見合わせるのも避けそうなものですが、ここで嫌味なく会いにきてくれる(それも走って!)ところに、ミッキーの根の朗らかさと気の良さが見えて大変良いです。
 ローズが困った時・傷ついた時、それを支えてそばにいてくれるミッキーという存在そのものに感謝です。


●バッド・ウルフ

 デルタ・ウェーブの改良は不可能で、使用すればダーレクと共に地球の全ての生き物も区別なく死滅してしまう。それでも宇宙の平和を守るために苦渋の決断をし、破壊の神に成り『下がろう』とするドクターに対し、全ての覚悟を決めたジャックがそれを肯定する。
「彼を信じている。どんな時も」
 ローズを失った今、ジャックのこの一言、この笑顔が、どれだけドクターに勇気を与えただろう。ローズだけを安全圏に送り返したドクターを責めることもなく、むしろその行動を許容し『それで良かったんだ』と言わんばかりの優しい声音で『ローズはもう安全だ』と口にするジャックの、なんと優しいことか。いやあなた初登場が9話とか嘘でしょ?2話くらいから仲間入りしてたよねこれはもう???
 そんな中、ダーレク皇帝の差金だと思い込んでいた『バッド・ウルフ』が、そうではないことを知り戸惑うドクター。

 場面変わって、平和な21世紀のロンドン。帰ってきたローズと共に軽い食事をとるミッキーと、呼び出されたジャッキー。さすがに例えようもないほど落ち込んでいる娘の様子に触れるのも憚られたのか、ミッキーとジャッキーが交わす何気ない会話も空虚さが隠せない。
 それでも、生きてローズを返してくれた・死地から娘を逃してくれたことに、ジャッキーが初めてドクターに感謝を示します。この辺も実に、人間らしいままならなさとエゴが見えて大好き。自分の家族、たった一人の娘が遠い時空の彼方の戦争に巻き込まれて死ぬことなく、彼女一人だけは生きて帰ってきてくれたことを喜ぶ、その当たり前の感情・浅ましさ。ジャッキーの言葉は実に素直で、また誰もが共感することでしょう。
 しかし、彼女の娘たるローズ・タイラーは、それを受け入れられない。

「だって、素晴らしかった。宇宙を旅することじゃないの。エイリアンとかもどうでもいい。彼は、よりよい生き方を教えてくれた。“諦めるな” “人任せにしないで” “立ち上がってノーと言え”って、“みんなが逃げ出しても信念を貫け”って!」

 これまでの数々の旅・冒険、共に過ごした濃い時間の中で、ローズが傷ついていたドクターの心を癒し、彼を変えたように、ドクターもまた、ローズの心を変えていたわけです。より強く、気高く、そして最後まで諦めないタフなものに。
 ジャックと同じように、勇気と気高さ、そして信念を貫くことの大事さを知ってしまったローズ・タイラーは、自分だけがたった一人平和で幸せな人生を送るなんてことは、もうできないのです。彼女の信念を貫かなければ、『ファンタスティックな人生を送る』なんてこと、絶対に不可能なんですよ。

 そうして昂り、飛び出した先で、ローズが見つける『BAD WOLF』の言葉の数々。地面にも、壁にも、至るところに、まるで何かの警鐘のように繰り返しくりかえし書かれている様は、やはりちょっと不気味。またこのシーンのSEやBGMが妙に不穏なんだもん。
 けれどもローズは、この言葉から天啓にも似た確信を得るわけです。『私とドクターをつなぐ言葉』……。何の根拠もない思い込み・妄信にも近い閃きだけど、ローズはその直感を疑わない。どうしてここでこれほど強く根拠なき確信ができたのか……という疑問も、この言葉の発信元を考えると少し納得がいく気もする。
『未来に戻れる』『彼を助けろって!』
 バッド・ウルフからドクターとの再会を確信できたローズは、走り出す。

 ここから、ターディスの心臓部を開けるために奮闘するローズたちの結束が素晴らしいんだよ〜〜〜〜〜〜
 ところでミッキーが運転しているのはみんな大好きMINIちゃんでちょっとテンション上がりました。しかもローバー・ミニ。いいですねえ〜〜〜。イギリス車ですしね。とっても可愛い、大好き。けど1話で乗ってたバナナのような真っ黄色の車はどしたんミッキー???そんな可愛いかわいいMINIちゃんの推進力でなんとかターディスの心臓部を開けようとしますが、やはり上手くはいかない模様。
 もう諦めなさいと諭すジャッキーに、『パパなら諦めない』と反論するローズ。父が死んだ際に、自分がそばにいて看取ったのだと明かすと、さすがのジャッキーも動揺を隠せずその場を後にしてしまう。そりゃ〜〜〜自分の伴侶が死んだ現場に娘がタイムトラベルして行って看取ってきたわとか言われたら誰だってショック受けるよね。
 
 しかしそれでも現実問題としてターディスの心臓部は開かないし、それだとドクターのもとには助けにいけない。さすがにもう打つ手なしかとローズが諦めそうになったところで、今度は「イヤだね」「今さら引き下がれるか!」とミッキーが発破をかけるのがもう泣きそう。作中では基本的にローズをロンドンに引き止めるほうに心が向き、行って欲しくない・行かせたくないという描写が目立っていたミッキーが、ここぞというこの時・この場面で、逆にローズの背中を押すんですよ。それは、ドクターに変えられたローズがまた、ミッキーの意識を変えたということでもあると思います。この時のミッキーを見つめるローズの嬉しそうな顔といったら!
 そして、もう一人。ローズ・タイラーの信念に心を動かされた人物が登場するわけですよ。……レスキュー用の大型トラックを転がしながらね!!!(大爆笑)
 も〜〜〜ここ最高すぎて、何度見ても泣いて笑って手叩いて喜んでしまう。さすがだよジャッキー!最高だよ!どんな伝手で借りてきたんだよーーー!?(というか運転免許持ってるの?)
 娘の心意気に胸打たれ、とうとうジャッキーもローズの望みに協力してくれるわけです。もし本当にローズがドクターのもとに戻れたら今度こそ死んでしまうかもしれないのに、それをわかっていて、娘の意志を尊重することを選んだんですよ。泣いてしまう。

 そうして三人の強い思いと頑張りによって、ターディスの口は開き、ブルー・ボックスは再び時を駆ける。
 

●破壊の神

 ジャックたちの奮戦も虚しく、サテライト5に残っていた義勇兵たちも、下層階に隠れていた参加者たちも全滅し、地球上の人類も次々と攻撃を受け、破壊されていく。6話『孤独なダーレク』でもたっぷり描かれたダーレクの無双っぷりが炸裂し、次々と死んでいく人々にさすがに言葉も出なかった。リンダの最期は悲しかったなあ……中でも特にショックだったのはやっぱりジャックで、死の直前まで死を恐れず足掻き続ける彼の姿には涙が止まらなかった。『踊るドクター』でもそうでしたが、この人は常時覚悟決めすぎなのでは!?もっと自分の生に未練を持ってくれよお!どいつもこいつも潔く死を受け入れてんじゃないですよーーーー!!!
 最後に残ったドクターはやっと装置を完成させますが、その時にはすでに自分以外の仲間は全て生き絶え、大勢のダーレクに囲まれてしまう。
 ダーレクを一掃するのと同時にデルタ・ウェーブで人類諸共滅ぼしてしまうことによって、ドクターが殺戮者、破壊の神になることを望むダーレク皇帝。憎き仇に、その信念や魂を捨てさせて精神的に破壊することを目論んでいるの、実に性格が歪んでいると思う。
 それでも最初は『宇宙のために地球も一緒に滅ぼすのも致し方ない!』と主張していたドクターだけども、そこでやっぱりできないのが彼ですよ。腰抜けか殺人者かの二択に、彼は腰抜けを選びます。
 ドクターは単純に、誰かを殺したくないんですよね。でもローズと出会う前の彼ならば、憎きダーレクを根絶やしにできるなら、恨みつらみが勝って非道な選択を選していたかもしれない。けれどもうドクターは、タイム・ウォーの後に長いながい孤独な時を過ごし、心が荒みきっていた頃の彼ではない。ローズ・タイラーと出会い、傷は癒され、そしてまた新たな変化を遂げていたわけです。生き物が生きている限り当たり前に獲得する『変化』を得たドクターは、もはや破壊の神になどはなれません。

 そしてそんな彼に代わり、神にも等しい力を得たローズが現れるんですよ。
 ボルテックス・エネルギーを受け、眩むような光を背に負いながら現れたローズの神々しさたるや。
 ここからのローズ無双が凄いのよーーー!

 『私がバッド・ウルフ』と語るローズ。彼女はタイム・ボルテックスを覗き込んだが故に、タイムロードと等しいパワーを得て、今あるもの・あったもの・ありえたもの、それら全ての『別れ道』を見通すことができるようになる。
 もしかしたらこの時、ローズは自分の未来も見たのではないでしょうか。だからこそ、過去・そして未来の自分へのメッセージとして『バッド・ウルフ』という言葉を選んだとか……? この辺はシリーズ2を視聴した上での妄想ですが、自分の中ではしっくりきています。『“私を導く”メッセージをばらまいた』という台詞も、シリーズ1の13話の話だけではなく、この後の展開にも掛かってもおかしくはないと思う

 そしてローズから『あなたを守る』と言われた時のドクターの表情がもうね。今まで誰かを助けることは幾度となくあっても、誰かから守られるなんてことは滅多になかったのではないでしょうか。肉体を破壊するほどのとんでもないパワーを手に入れたローズがやろうとすることが、自分を守ること。良し悪しはともかく、どんなに、どんなに胸に響いたことでしょう。

 それでもこのままではローズが死んでしまうので、彼女の体に蓄積されたボルテックス・エネルギーを全て吸収することで、ドクターは自分の大切なパートナーを助けます。互いに、自分の命をかけて相手の命を救っているんですよこの二人は!!!
ドクター「ドクターが治してやる」
 番組が始まって初めてドクターっぽいセリフが出るのが最終回っていうね。

 個人的に!!!
 ここのキスは!!!!
 救命活動なので!!!!!
 セーーーーフです!!!!!!

※この一連の感想NOTEでは『9代目ドクターとローズは恋愛関係には至らない(10代目以降はその限りではない)』という解釈を推しております。


 ローズの力によって、死から蘇り新たなる生命を得たジャックは、なんとサテライト5に置き去り。そりゃないぜドクター!
 中にいた全員が死に絶えた無人の施設にたった一人残されて、地球もたぶん壊滅的ダメージを受けていて、移動手段も何もなく、死体の山の密室空間に自分だけが存在している……。ほんとにそりゃないぜドクター!!!
 彼の今後の詳細はトーチウッドかシリーズ3以降を見てね、ってことしょうか。トーチウッド、見ます(未視聴勢)
 消えゆくターディスを見送るジャックの、泣きそうな複雑な顔がまたつらい。自分が生きている驚きと喜びと、置いていかれた寂しさと困惑、他様々な感情が入り混じっているようで、とても言い表せない。
 なんでジャックも一緒に連れて行ってくれんかったんや! という憤りもありますが、この時のドクターは迫りくるタイムリミットにもう色々と余裕がなかったのかな……?


 ローズのボルテックス・エネルギーを肩代わりしたダメージで、ドクターの肉体は崩壊を始め、彼は『今の自分』を維持することができなくなります。
 しかしそれでも、ドクターは穏やかで満足げな顔をしている。大切なもの・愛するものに守られ、また自分も相手を守ることができた彼は、恐らく本当に満ち足りていたのでしょう。
 それはそれとして、『今の僕は消えて無くなる』と言った瞬間、あの大きな目が不安げに揺れているのがもうさ〜〜〜〜〜


「君はファンタスティックだ」
 9代目ドクターが口にする中で、たぶん最上級の褒め言葉を愛するパートナーに捧げ、彼の物語、彼の『道』は、また新たなる方向へと分かれていきます。


おいでませデヴィット・テナント!ということで、クリスマススペシャルを挟んで番組はシリーズ2へと続いていきます……



●終わりに(言い訳)

 13話分の感想なんて本当に書けるの? と最後の1話分になっても不安に震えながら書き続けた三か月弱でした。なんとか目標のシリーズ1全てに触れることができて感無量です。
 とっても面白いドクター・フー、特に大好きなシリーズ1:9代目ドクターとローズについて、思う存分思いの丈を綴ることができました。
 ドラマの感想というのがまず初めて事で、自分の書くものの不出来さに改めて落ち込んだり、感想の書き方を調べたりお上手な方のレビューを研究したりなどもしてはみましたが、結局『展開を書き連ねて、どこそこが良かったとひたすら書く』という身も蓋もない書き方から一歩も踏み出せないまま終わってしまいました。しかし、この一連のNOTEは多分に自分用の備忘録という目的が大部分を占めているので、もう諦めてアップします。

 9代目ドクターを演じるエクルストン氏はとっても彫りが深く、時にはちょっと怖いとすら思えそうな迫力満点の顔立ちだけど、それでも彼の目は常に優しさが滲んでいて大好きでした。いたずらっぽく輝く時も、過去の痛みに苦しむ時も、明るいその瞳はいつも柔らかくて、ぐっと心を引き寄せられました。特にローズを見守り、二人で楽しそうにきゃっきゃ笑っている時の顔が最高に好き!
 タイム・ウォーを終わらせるために自ら永劫の孤独を選択した人物の、唯一無二の相棒となる少女、ローズ・タイラー……。ドクターに命を救われ、後にドクターの命を救う、正にパートナーと呼ぶにふさわしい相手じゃよ……たまんねえぜ!

 再始動したドクター・フーの一発目、偉大なる新シリーズ一作目。何度見ても、本当に面白かった!
 大好きだーーー!

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