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こどもニュース「お父さん」にして「我がアニキ」鎌田靖さんとほぼ同時に本を出す偶然

週刊こどもニュースの「お父さん」は元エース記者

 鎌田靖さんと言えば、NHK「週刊こどもニュース」で、あの池上彰さんの後を継ぎ、2005(平成17)年から2009(平成21)年まで第2代「お父さん」を務めた。その後、解説委員としてNHKスペシャルなどに出演し、2017(平成29)年にNHKを退職。今はTBSの「ひるおび!」にニュース解説者として出演している。多くの方に「テレビに出演する解説者・コメンテーター」として認識されているだろう。

 でも鎌田さんは元々、NHK社会部で検察取材を担当するエース記者だった。

仕事の要求は厳しいが結果にとやかく言わない

 私が初めて鎌田さんとお会いしたのは1993(平成5)年7月。鎌田さんは社会部からNHK神戸放送局に事件取材担当デスクとして赴任してきた。私は神戸局の記者で兵庫県警担当になったばかりだった。着任早々、鎌田さんは私に言った。
「相澤、大丈夫だから。俺は3か月待つから」
 …3か月待つ、というのは、裏を返すと、3か月しか待たない、つまり、3か月たったら結果を示せ、ということだ。私はそう受け止めた。
「これは厳しいことになった」
 そう思った。実際には3か月どころか、半年たっても1年たっても、ろくに成果はあげられない。でも鎌田さんは厳しいことを言う割には、せかしたり追い立てたりせず、じっくり待ってくれた。仕事の要求は厳しいが、結果についてとやかく言わず、追い込んだりはしない。上司の理想型だと思う。
 1年がたち、何とか警察取材の成果が出せるようになってきたまさにその時、1995(平成7)年1月17日。神戸を直下地震が襲った。阪神・淡路大震災。その時の鎌田デスクの姿にも学ぶところが多かった。

 鎌田さんは入局年次が6年上だ。あの頃、私はいつも考えていた。
「あと6年たったら、私は鎌田さんのように判断できるようになるかな?」
 …到底無理だと思えたし、実際6年たっても無理だった。

「いいかげんにしろ。飛び降りろ」の声が背中を押した

 次に鎌田さんと出会ったのは8年後。2003(平成15)年6月。鎌田さんはNHK大阪放送局報道部で、部長に次ぐナンバー2の報道統括。実質的に関西一円のNHKの取材全体を仕切っていた。私は徳島局のニュースデスクから大阪府警担当キャップに赴任した。

 「出会った」と言うより、これは私が鎌田さんに府警キャップとして呼ばれたんだと思う。大阪は重大事件が多く、府警キャップは激務として知られていた。「他にやる奴がいない。お前が来い」という感じだった。
 鎌田統括のもとで、私は様々な重大事件の取材にあたった。
 ゴスロリ趣味の少年少女が互いの両親を殺して同居しようとした「ゴスロリ家族殺傷事件」。
 中学3年生の少年が両親から食事を与えられず餓死寸前の状態で見つかった「岸和田中学生餓死寸前虐待事件」。
 巨大食肉企業ハンナンがBSE対策の国の補助金をだまし取ったとされる「ハンナン食肉偽装詐欺事件」。
 そして2004(平成16)年11月17日、奈良市で小学1年生の女の子が誘拐され殺害された「奈良女児誘拐殺害事件」。
 どの事件でも鎌田さんからの指示に助けられたが、中でも女児誘拐殺害事件で容疑者が警察に連行された12月30日、記者の特ダネ原稿を出そうか迷う私に、鎌田さんの電話越しでの「いいかげんにしろ。事故になるぞ。飛び降りろ!」という声が忘れられない。これは「早く決断して原稿を出さないと放送事故になる。記者の特ダネ情報に賭けて原稿を出してしまえ(=飛び降りろ)」という意味だ。その声に押されるように私は結局飛び降り、その原稿は結果として大特ダネになった。

「アニキ」と同じタイミングで新書刊行の偶然

 そんなわけで鎌田さんは私にとっては「アニキ」のような存在なのだ。その「アニキ」から今年1月、連絡があった。
「今度、本を出すんだよ」
 「最高の質問力(PHP新書)」というその本を見て私はビックリした。その時まさに、私が出そうと準備していた角川新書「真実をつかむ」と、執筆動機や狙い、考え方が近いのだ。

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 いずれも、記者の取材手法を明らかにしながら、広くビジネスに生かすことのできる、もちろん取材にも生かすことのできる話を紹介している。
「私もようやく鎌田さんと同じようなことを考えるところまで来たんだな」
 感慨深かった。この偶然のタイミングを生かさない手はない。私はカドカワの編集者に提案して、鎌田さんとの対談が実現することになった。

鎌田さん相澤さん2人並び②  撮影=坂本慎平

撮影:産経新聞・坂本慎平氏(冒頭画像も)

 対談は2月4日、東京・飯田橋のカドカワの会議室で行われた。1時間の予定が、話が盛り上がって2時間以上も語りこんでしまった。
 この対談には、ベストセラー「もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」の著者、神田桂一さんと、日刊スポーツの村上幸将記者が取材に来てくれた。神田さんは近く現代ビジネスに記事を書くそうだ。
https://gendai.ismedia.jp/
 日刊スポーツの村上さんも近く記事を掲載するという。
https://www.nikkansports.com/
 よって私は、ここでは対談内容に触れないことにする。
 なお、対談を主催したカドカワは、自社サイト「カドブン」に記事を掲載する。
https://kadobun.jp/
 2週間ほど時間がかかりそうだというので、先に現代ビジネスや日刊スポーツが記事を出すことになりそうだ。
 角川新書「真実をつかむ 調べて聞いて書く技術」は2月10日刊行。大都市部の大手書店では9日頃には店頭に並ぶという。アマゾンでの発送は10日からだ。 www.amazon.co.jp/dp/404082380X

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 記者の仕事、どうやって取材をしているのかを明かしている。同時に「取材は営業にも恋愛にも似ている」ということで、ビジネス全般、人間関係全般に相通ずるものがあることを紹介している。鎌田さんとの神戸や大阪での数々のエピソードも盛り込んだ。

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