紫色の座布団

昨日、私の住んでいる町から、父の米寿のお祝いに、紫色の座布団が届きました。市では1月頃、今年88歳になる市民に米寿のお祝いとして、贈り物を下さるアンケートを取ってくれるのです。1月はまだ父が存命でしたから、88歳の誕生日にプレゼントをくれるよと話したら、父はたいそう喜びました。

プレゼントは3つの中から選べました。その選択を見た時に、せっかちな私は、代わりに私が選んで送っちゃおっかなと思いましたが(苦笑)やっぱり米寿になるのは本人ですから、本人に選んでもらったほうがいいだろうと考えを改め、父に市から今年は誕生日プレゼントがくるよと伝え、3つの選択肢を提示しました。

一  町の特産品詰め合わせ

二 紫色の座布団

三 肖像写真

でした。

私はその時正直、座布団はないだろうなあ~と思ったんです(苦笑)

一枚だけだし、一番いいのは写真館で取る肖像写真かなあ、遺影になるしなと現実派の私は思いました。

3つの選択肢を聞いた父は、とても嬉しいので、すぐには決められないといい、1週間ほど、どれがいいか、考えていました。

市に申し込みの提出をしないといけないので、一週間たったころ、どれがいい?と聞いたところ、嬉しそうに、なぜか恥ずかしそうに、座布団だなあって言ったのです。

驚きました(笑)私にはありえないと思っていたものを嬉しそうに選んだ父。驚いたと同時に反省しました。いっくら親子とはいえ、何をどう選ぶかはその時その時の本人の希望なので、きちんと本人に聞く大切さを噛みしめました。また他の人のことを選ぶのは難しいなあと感じました。また人は忙しさのあまり、自分の思い込みで人を判断し、間違った判断や誤解を与えてしまうことがあるんだなと感じました。

ゆっくり父に考えてもらってよかったです。

でも・・・

父は3月に亡くなってしまいました。座布団を見ることもなく。

亡くなってしまったので、座布団はもらえないんだろうなあと思っていたら6月頃、市のほうから選択いただいたので、お送りしますと連絡がありました。

私はこれにも驚いて感動しました。

父の介護を通じても、この町は優しい街だなあと感じていましたが、父が亡くなったあとも父の選択を大事にしてくれて、こうして遺族に米寿のお祝いの品を送ってくださるなんて、、、、、この想いをどう言葉にしていいかわかりませんが、読者の皆様、私の気持ちを感じ取っていただけますか?

父は亡くなった後も生きています。みんなの心の中に。

美しく輝く紫色の座布団

そこには姿は見えなくなった父が、嬉しそうに、恥ずかしそうに、ちょこんと座っているような気がします。

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