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「隙を見せるな。カッコつけろ。」

指導をしていると、全ての生徒に同じようにコメントをすることって、いくつかの基本的なことはもちろんあるけれど、そこから先は、一人ひとり変わってくるものだなと、いつも感じさせられる。

色々なジャンルのステージを見ていると、カッコつけると魅力が減る人と、カッコつけると魅力が増す人がいる。日常生活でもそうかもしれない。カッコつけろという言葉の中には、「舐められるな」という、愛のこもったメッセージが含まれていたりもする。

世の中には、人の生き血を吸ってエネルギーを補充するタイプの人間が潜んでいることがあり、意外と身近にもいて、実は誰の心の中にもひっそり隠れている感情だったり。

音楽界の中でも、そういったエネルギーの奪い合いや上下の取り合いをたまに見てきた。とても才能豊かで素直な子が、ステージから降りた場で、血を吸われて、不必要な悩みを抱えていた。

その姿そのものが、吸血鬼の格好の餌食になるのかも、と感じる。直接誰かに言われた言葉以外に、今は匿名で姿が見えない誰かからの攻撃も感じる時代になった。演奏がよくなくなるのは簡単で、メンタルは演奏に直結する。もしかしたら、敵は外にいるのではなく、やはり自分が生み出しているのかもしれない。

「隙を作らない」ためにまず出来ることは、自分に嘘を付かないで音楽と向き合うこと。人との比較ではなく、自分で出来る最善の練習を重ねること。そうすると、カッコ付けなくても、カッコが付いてきたりする。余裕がないのにカッコ付けている人のステージが、見ていて分かるようになる。そうやって、吸血鬼だと思っていたものの正体が段々分かってきた頃には、血を吸われなくなっていく気がする。大丈夫。吸血鬼は陽の光に照らされたら、弱い。

ここまでを、一緒に頑張ってきた子がいる。自分も、幼い時から恩師が言葉がけをしてくれて、並走してきてくれたんだなと、思い出した。良い音楽のために出来ること。

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