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美しいもの ⑤ 2023.1~2023.12

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自然や生きものの素晴らしさ、美しさ 身の周りの出来事や感情 つい見逃してしまいそうなものにも、沢山の美しさが隠れている。それぞれの輝きを集めました。
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記事一覧

美しいもの Oneness

空と海は一つになり   樹々は大地とともにある 光は影とたわむれ   時間は明日のドアをたたく 鳥は風の手をとり   人は花にくちづけする

美しいもの 茜葉

身を焦がすように 燃えつくす 命のように かくせぬ 想いのように 「これが 私」と叫ぶように 妖しく色づく その茜に 眼がくらむ

美しいもの 旅する蝶

空高く舞えば sky  blue に   湖面をわたれば opal  green     花野にあそべば cherry  pink へ 羽色を自在にかえ     惑わすように飛んでゆく 輝くりんぷんをまきながら     夢の世界を 行き来する        ‥‥未来から来た神の使者か

美しいもの 秋空

空を見上げる 夏は瞬く間に 去った どこからか 冷たい風がふき 木々をゆらし 落ち葉を誘う 空はどこまでも 高く澄みきり 雲もうまれない 明日はどんな空だろう 私のこころのように きまぐれに 雨をよぶのか

美しいもの 秋の気配

高い雲間にも 額をすぎる風も ゆれる陽の光も 草陰に潜む虫たちも 息をひそめまっている 熱にうかれた 夏の記憶を消し去る風を セピアの夕暮れ 冴える月 虫の音 ランプの下  ひとり手紙をしたためる時間を ひっそりと ただまっている 静寂にこころひたす そんな秋を

美しいもの 小鳥

朝の光とともに 一羽の小鳥が 小さな希望と喜びの種を たずさえ 窓辺に 舞い降りた 二言三言 くちずさんだ小鳥は わたしの 哀しみの種を  持ち去り 青い空へ まっすぐ 飛び去って行った

美しいもの 遊ぶ

丘の上から ぼーっと ひろがる 青い海を見る 飛ぶ カモメを 目で追い 流れる船を 眺める こころの中で  静かに 冒険する 地図ももたずに 旅にでる 大海に 漕ぎ出し 見知らぬ異国を 訪れる 心のままに 進んでいく まだ見ぬ自分を 探しに行く 空想の世界で 遊ぶ 人間の  豊かな感受性と  どこまでも広がってゆく創造性 人間という生き物の  面白いところ

美しいもの さくら貝

砂にうもれる さくら貝 そっと触れると 指先も ピンクいろに染まりそう   さざ波にあらわれ 淡い想いがゆれうごく 波にふれた 冷たさとあたたかさ ちいさな貝に 秘めるやさしさは 夢見る初恋の 甘さのよう

美しいもの 翠雨 すいう

天から  雨粒がふりそそぐ 一滴の雫が  葉の艶をかえていく 匂い立つように  濃さを増す 若葉色から 翡翠色へ 深い森へと化していく 森は  美しく光る翡翠の玉を 守るように しずかにたたずむ

美しいもの 白百合 しらゆり

あなたに 一輪の 白百合を  捧げます 気高く  孤高に生きてゆく あなたの こころを 讃えたいのです 祈りのことばを織り込むように 深く その白さのなかに生きてほしいのです かたちにならぬ涙を その花弁で ぬぐいたいのです

美しいもの 空

空を あおぐ 遠い記憶をたどるときも 恋しい人を想うときも 悔しい涙をかくすときも 喜びにこころあふれるときも 見上げた空 風に吹かれながら見る空も 電車の窓からながれる空も ビルの隙間のちいさな空も 樹々の間に光る空も 窓越しにみる四角い空も かぎりなく青だった きょうも見上げた空は 希望をふくんだ青だった

美しいもの 夜汽車

冴えた月夜に 夜汽車はすすむ 街の灯りが ポツリ ポツリ とおざかる 窓にうつる横顔は  果敢なくゆれ 長い人生の記憶が 走馬灯のように ながれてゆく 後悔も おかした罪も 小さくなったわだかまりも 愛した孤独も 祈りさえも 静寂にのまれていく 人々の人生をのせた夜汽車は  しずかに たよりない線路をたどってゆく

美しいもの 新緑

木立に分け入る     若草色  萌黄  若葉色  裏葉柳      若苗色  若緑  千草色  白緑 目にも鮮やかな新緑 萌えたつ若いエネルギー かさなる緑青い影のなかを 新風が駆けてゆく 目覚めたばかりの枝葉は われもわれもと  天に向かって手をのばしていく

美しいもの 迷い蝶

あっちの花にしようか この花の色も好き こっちは甘い香りがする ハラハラ ヒラヒラ 風にふかれ 迷う蝶 うしろすがたが 笑いをさそう 日の光に きらめきながら 楽しげに きょうも あしたも 迷うのか