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「樹木」

出逢った頃より
あの頃よりも
あなたが、好きです。
なんて
面と向かってきみに、言えないけれど

時折のぞかせる
きみらしさに
花ひらく薔薇さえ敵わない
愛の雫が、私の頬を伝う

「君は、ほんとうの苦労を知らないね。
しあわせの量は、自分で作るんだよ。」


ふたりが出逢う前の
あなたを、私は知らない
けれど
軽はずみのない
沈黙を好み
時間をかけて、ことばに変換する姿を
肌で感じて
そうしてふたり
時を重ね
次第に
あなたが歩いてきた哲学が
心の真ん中で、微笑むようになりました


数あることばの群れの中で
あなたが選ぶひとことは
優しく、澄ましていて
そうして鋭い

世界中の学者たちが
どんなに研究しても
その法則の鍵は
きっと見つからないでしょう

それは
それぞれの人生で
育った樹木の沈黙で
できた生命(いのち)だから

降り注ぐ太陽の下
いつかきた海と
ふたりは再会した

「また逢えて、ありがとう!」

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