ふたり

何故だろう
わたしたちは
以前とは別の
ふたりになった

ひとりという
空間のだだっ広さに
押しつぶされそうな
あの日の
夏の夕焼け空
遠くではしゃぐ
子供たちの声が
やけに切なく
こだましていた

失くしたくない
宝物

それが何なのか
いつも一緒にいるはずの
君がいない空間で
バラバラに散らばっていた
記憶の欠片が
いっせいに
あたしの心臓に集まった

或る日の朝食の風景
或る夜の夕食の団欒

何よりも
強く優しく
繊細に
殻を破って
身体の内側に
染み込んでいったのは
暮らしの中で
灯る焔
その空間だった
それだけで
充分
心は満ちていく

完全じゃない
人間同士の
限りなく
ミクロで
限りなく
大胆な覚悟の結晶

あの頃のふたりには
見えなかった景色が
またひとつ
拡がっていく

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