シンプルな時間

シンプルであること
シンプルになること

それが目下の課題だ


記憶は
休むまもなくはたらいていて
一糸乱れず
アタマの中で上書きされる
ある日の情熱さえ
ふと振り返ってみれば
ぼんやり霞んで
青春を仰いでいた
ふたりの影は
夕陽の空に溶けていった


子供のころの記憶は
無防備で残酷だ
いつかの夕焼けに
海岸でひとり佇む少女は
孤独と安らぎを感じていた


大人になると
記憶は
縮んだり
膨らんだり
光ったりしながら
いちばん大切な思い出を
推敲していく

「それじゃ。またね!」
とひとりになったら
肩の力がすぅーっと抜けた
いつかの月夜の帰り道


秋になると
枯葉がひらひら宙を舞い
誰彼の記憶の欠片が
北風とともに
遠くの岬へ去っていく


時が過ぎ
夢はカタチをかえた
世間知らずだった
あの頃は身の丈より大きく
心のど真ん中で 我が物顔だった
いまは心の片隅で
気ままに
暮らしている

どんな道でも
心は自由であれ!

きみの深いところで
据わっている魂は
いつだって
シンプルなのだ

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