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「問われる心へ」

ある日
春風に後押しされるように
船に乗り込んだ
あれやこれや現実の重石を
海に放り投げ
まるっきり軽くなった
心持ちで
風を切った

深い眠りに就いて
朝ふと目覚めると
昨日の私は何処にもいない
あの気持ちの高揚は
いったい
何だったのだろう
しばらくぼんやりと
時計の針を見つめていた

昨日と今日は
ベルトコンベアにのせられた
旅行鞄のように
繋がってなどいないのだ

真夜中に描いた
明日の模様は
夢見心地に
はしゃいでいるのに
朝目覚めると
跡形もなく消えている

それはまるで
はるか昔に
引退したはずの遊園地で
なにも知らない少女が
たったひとり
無我夢中に遊んでいたら
目の前でガラガラと
崩れ落ちるみたいに
現実は予告なく
残酷な顔を覗かせる

それでも
波に飲まれるな
問われるのは
いつも私であり
それに答えるのも
私なのだから

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