「秋」

街中が広告で溢れている
都会は
希望という未来を
人工的に作ろうとしていて
無機質な空を増殖させている
廃墟の街のようだ

いつからか
深呼吸のない未来と
距離を置くようになった


ふたりの暮らしは
都会から少し離れた
大きな公園のそばで
はじまった

とびきりの贅沢というと
余計なものを削ぎ落とし
シンプルで
ささやかで
そうして
静けさ

ことばにしない愛を
ふたりの空間が満たしたとき
沈黙はこの上ない
至福のエッセンスを
降らせる


それはまるで
秋の訪れを知らせる
金木犀のように
さりげなく
刹那に満ちて

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