「静寂」

いつからか
静けさの中に
身を置くことに
安らぎを覚えるようになった

言葉にすることで
近づく距離という方程式が
私には
実感を伴わない
絵空事のようで

どんなに言葉を重ねても
その熱量は
心をすり抜け
振動から伝わる響きで
瞬く間に破裂してしまうのだった

ふたりが惹かれあったのは
言葉より 瞬きのあなたと
言葉より仕草の私だったから

どんな真実より
ここに生きているあなたが
ほんとうで
目に見えない傷を
互いに
ひとつやふたつ
密かにそっと
持っていて

木枯らしの悪戯で
捲られる
心のページには
淀みないまっさらな
空に叶う生(せい)を
追いかけ続けている
少女の姿があった

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