扉

詩「扉」

その扉をどうして恐れるのか
ほんとうのところ
私は知っている

ノックして返事がなかったら
「やっぱりね。」と
苦笑いして
ただ通り過ぎていった

「あなたは
目に見えない縄張りを
とても大事にしているようだけど
踏み込んできたからって
それだからって
命は、磨り減ったりしないよ。
それに、
それは自尊心とは違う種類で
ただの防衛本能だからね。」

電話越しの声が誰だったのか
どこか聞き覚えのあるような
幼い声だった

時計の針が止まったままの部屋の中で
私とあの娘が遊んでいた
無自覚に
周りに溶け込めないでいた
私に
「家の中でこうしてあなたと仲良く遊んでいるけど
学校では話しかけないでね!」と
彼女は
なんでもない事のように
明るく振舞い
それに返すように
明るく頷いた
たった数分の出来事だった

もしもの空の上で
押し殺した心に尋ねてみた

心はいつも君の味方で
君のほんとうの声を
聴いています

眠れない夜明けに
そっと
あの日の悲しみを打ち明けた

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