詩「大切なもの」

君が君で

僕が僕である

当たり前なことなのに

ふたりはこれまで何度も

確かめ合った

理想にはめてみたり

片目をつむってみたり

出逢った頃にふたりで描いた肖像画は

どこか本人とは違っていた

距離は近づいて遠のいて

ぶつかって

それからもう一度見つめ合って

微笑みあった


夏の太陽は移り気で

刺激を追いかけて飛んでいた蝶々は

まだ見ぬ幻の向日葵を探してばかりいた

それはまるであの頃の君だった

僕はいつも冷静で

君はそれを不思議そうに

スケッチしていた

同じようにみえて

同じではない

当たり前のことなのに

ふたりで居る

時の長さに甘えていた

君は君で

僕は僕である

当たり前のことなのに

ふたりの頬に

温かな涙が伝った


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