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地平線のかなたへ


幸せということばは

とても曖昧だ


なんでもないような

偶然のめぐり合わせのような

絞り出した結晶のような

変幻自在な点滅の星


くすんだ空を見上げ

ごらん!そこらじゅう幸せでいっぱいだ!と

微笑む羊飼いもいれば

こんな世の中、良いことなんて何ひとつありゃしない!と

嘆き悲しむ世捨て人もいる


君は毎日

幸せになるための羽根を磨いていて

負の感情は

君の中の焼却炉で燃やして

跡形もなく浄化している


ある日

わたしは不思議に思って

いつどこでどんな風に

負の灰を消化しているのか

君にたずねた

すると君は

「幸せになりたいのか?

それとも

不幸せでいたいのか?

それを

片時も忘れることなく

突き詰めて唱えていれば

おのずと見えてくるものだよ。」


君はまるで大きな樹木のような

静かな眼差しで

そう打ち明けてくれた

プラスやマイナスも

濁った一滴も

育んだひと呼吸も

わたしの中で生まれて

身体じゅうを駆け巡り

愛か

憎しみか

よろこびか

悲しみか

怒りか

疑いか

虚無か

絶望か

欲望か


その度に心は動き

幸も不幸も分別なく

感情の扉を叩く

叩き続ける


そこに境界線はない

ただ地平線が広がっている


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