ありふれた箱

ありふれた日常が
とても静かに
微笑んでいた


一輪一輪
小さな幸福の花びらは
わたしたちの暮らしの中に
溶け込み
それはまるで
ごく当たり前に
永遠に続いていくかのような
錯覚をさせてしまう

優しい日差しが
朝の食卓を照らし
旬の野菜で彩られた
サラダとスープと
真っ赤なトマトのスパゲッティを
口いっぱいにほおばる
君とわたし


10年前
ことばをいっぱい必要とした
ふたりだった

いまは
ほんの少しのことばと
互いの波長を感じる
静かな眼差しが心地いい


なくしたものと
なくてはならない
大切なもの


青空の下
今日という日を
君と笑顔で迎える朝

それがどれほど
かけがえのない
はじまりであるのか
失ってはじめて
その大きさに
打ちのめされるのでしょう


願わくは
天使の記憶をたどって
この世界の不条理を
白に塗りかえたいけれど

どうしようもなく弱くて
強くて
我が儘で
優しくて
ニヒルで
夢を見ていて
旅人で

そんなあれもこれも
いっぱい詰まった
人間の性(さが)を
誰もがみんな持っていて

生きるとは?
という問いに
こたえはなく
あるいは
無限に広がって
悲しみとよろこびが
ふたり仲良く
手をつないでいた

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