秋の空に

夏を懐かしむほど
遠い記憶でもないのに
夏は
思い出の欠片を残さないで
走り去っていった

あの麦わら帽子の少女は
何処へ行ってしまったのだろう

赤い風船を追いかけて
青い空を追いかけて
森の中を駆けずり回って
小鳥やリスと演奏していた
同級生の輪の中よりも
森が好きだった
そうして
森の中の
「扉の向こう」に
麦わら帽子の少女を隠した

やがて時が経って
大人になった

溶け込んで見える風景の中に
姿をくらませ
ほろ苦いブラックコーヒーが
まるでレモネードのような味だと
涙を隠した

私の奥底を見透かしているかのように
秋の空は物哀しく
ただひたすらに澄んでいて
時折ノックする
気まぐれな北風に
心は泣いていた

誰も悪くない
それぞれが
日々をまっとうしていて
傷つくことに
反応を見せまいとして
優しさの羽を
磨いているのだ

海へと還る
その日まで
この道は続いていく

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