「告白」

咄嗟に出たことばは
風に乗って 
あなたの耳に触れ
ぼんやりとした私の一面に
色をつけてしまうだろう

伝えたかったことの
一滴さえ満たしていない
そのことばに
「何故?」
「どうして?」と
投げかけたら
「シンプルになりなさい。」と
心の住人は 
核心を突いてきた

物心がついた頃から
意味のない装いのことばを
まるで全能な
防衛手段のように
誰にも悟られないよう
身につけてきた

楽しさのうちの
半分は
砂でできた
仮面だった

だから
友人のスキンシップを
何より恐れた
触ることで
伝わる
私の体温が
限りなく
冷めていたからだ

教室の中で
フロアの中で
会合の中で
孤独に映る姿が
怖かった

月日は流れ
月夜はふたりを
照らしていた

あの日君は
誰とも話していなかった
周囲の盛り上がりをよそに
戸惑っているようにみえた

それは
偶然入った街の酒場で
まるで一卵性双生児のような
出逢いだった

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