fuwari
雪が降った 少年は まだ誰も踏み入れていない 未開の地に出会ったかのような 興奮を味わいながら 雪一面の原っぱに 足跡をつけた サクッ サクッ サクッ 心地良い足音 …
どういうわけか 働き蜂が 彼らの好物を せっせ せっせと 街中に ばら撒いた 彼らはその時 満腹だった すると 目の前に 落ちてきた好物は 巧みに彼らに働きかけた …
どんな風景を想い どんな世界に傷ついて やがてそれが 憎しみに変わってしまうのだろう 少年は思った 道端で転んだ傷のように どんな悲しみも 消えてくれたら いいのに …
森は静かに 秋を迎えていた 枯葉の囁き 川のせせらぎが 聞こえて そこら中で金木犀が 香っていた 北の地方では 冬を知らせる雪虫の大群が あちこちで目撃された 木の実の…
重たい時計を背負った小人と 軽い時計をポケットに仕舞い込んだカンガルー それは気まぐれに 季節ごと 代わる代わる この街にやってきて 時の長さを 自在に錯覚させた こ…
ある日 夕日があんまり穏やかに 微笑んでいたので 自分を許してみた すると 心の中にあった 許せない。という鎧が 1枚1枚はがれ落ち 清濁ごちゃまぜの 生身の肉体は 羽根…
静けさの中で 森は緑に色付き スミレや菜の花 勿忘草も 次々に蕾を開いた そんな光景を見るのが 彼女には何よりの 贅沢な時間で 心は一段と弾むのだった 風がそよぎ 揺れ…
あまり言葉を 交わさない 親子だった 何時からだろう いや ずっとずっと昔から ふたりは 戸惑いの日々でした あなたに投げかけて 踵を返した 私の問いは 最後まで 分から…
都会とも田舎とも どこか違った風景の この街は ふと眺めるといつも 朗らかな時を演出していた 街路樹を歩く僕は 悲しいほど美しい冬空に 涙を誘われた 幸せの羽根を乗せ…
あとどれくらい この道は続いているのだろう 私はいま生きている そうして それが永遠ではないことも 生まれた瞬間から約束されている 向こうの見届け人が 遥か遠くに霞…
また冬がやってきた あっという間に日が暮れていく その様は 人生の短さを そっと忍ばせているようで 時の贈り物は深淵だ 未来への眼差しも 季節ごと 年を追うごとに 暗…
不思議なくらい 悲しい記憶が似ている ふたりだった 君にエピソードを話すたびに 「僕もそうだった。」 と返ってきて 同じ香りを どちらからともなく 察知したのか 偶然…
夕暮れ時の ひぐらしの声 熟れたトマトと 揺れる風鈴 クワガタの散歩と 蝉の合唱 ハイビスカスと かき氷 汗だくのキミと 冷やしそうめん スケッチブックに描…
あなたが不自由だと思ったら そこから目を背けて やせ細った暗闇の道を生きるだろう あなたが自由だと思ったら ここから羽を広げて 果てしない空を駆けめぐるだろう 自由…
海を見ていると 心のわだかまりが消えていく ここに存在していることを 無条件に肯定してくれているようで ふっと心がはしゃぐのだ いつからだろう ここからはぐれてしま…
深い深い森の中で 太陽と仲良しの赤い実を 毎日食べている おかっぱの少女が住んでいた 少女を取り囲む大人たちは 外の世界に忙しく 少女が目に入らなかった 耳に聴こえて…
2024年2月12日 22:30
雪が降った少年はまだ誰も踏み入れていない未開の地に出会ったかのような興奮を味わいながら雪一面の原っぱに足跡をつけたサクッ サクッ サクッ心地良い足音寒さに震えた子犬はそんな少年をよそに暖炉を探したおやじは明日の会合を心配して気もそぞろに雪道を歩いて毛糸の手袋を道端に落としたまま帰路についたそれはおやじにとって特別な存在だった雪はロマンチストだった
2024年2月12日 22:17
どういうわけか 働き蜂が彼らの好物をせっせ せっせと街中にばら撒いた 彼らはその時満腹だった すると目の前に落ちてきた好物は巧みに彼らに働きかけた 彼らは拾うつもりはなかったのに迂闊にその好物を手にするとあれよあれよと満腹中枢が破壊されあっという間に日が暮れるまで貪り続けた この惑星の科学者は遺伝子に組み込まれた報酬系ホルモンに目を向けた
2023年12月6日 23:17
どんな風景を想いどんな世界に傷ついてやがてそれが憎しみに変わってしまうのだろう少年は思った道端で転んだ傷のようにどんな悲しみも消えてくれたらいいのに正義と正しさがあやふやな境界線で戦闘していた敵は異なる正義だったこの世界に勧善懲悪の物語のようなすっきりしたコントラストは存在しないそれぞれの立場それぞれの正義心は如何様にも熱くなり時に暴走してサイレ
2023年12月6日 23:13
森は静かに秋を迎えていた枯葉の囁き川のせせらぎが聞こえてそこら中で金木犀が香っていた北の地方では冬を知らせる雪虫の大群があちこちで目撃された木の実の不作川の氾濫季節外れの開花気候は容赦なく変化していて自然はそれを繊細にキャッチしていた変化は唐突に見えて兆しがちゃんとある別に気にも留めないような小さな変化も君との暮らしの中で生まれる細やかな変化も
2023年9月3日 18:45
重たい時計を背負った小人と軽い時計をポケットに仕舞い込んだカンガルーそれは気まぐれに季節ごと代わる代わるこの街にやってきて時の長さを自在に錯覚させた この街の指揮者はそれぞれの心の育みにあわせて毎日かかさずタクトを振っていた 永遠に終わらない旅だと嘆いていた亀の親子は沈みゆく夕日を見つめてこの世の定めを知った スピードが増しているのは人間の住む社会でムク
2023年7月5日 23:30
ある日夕日があんまり穏やかに微笑んでいたので自分を許してみたすると心の中にあった許せない。という鎧が1枚1枚はがれ落ち清濁ごちゃまぜの生身の肉体は羽根を広げ安堵と慈しみが身体中を巡ったそうして自分を縛りつけていたジャッチの旗がみるみる小さくなって一輪の花になった橙色のまあるい夕日に折り合いのつけ方を包み隠さず打ち明けた許さないでいた月日の悲しみも
2023年5月13日 16:05
静けさの中で森は緑に色付きスミレや菜の花 勿忘草も次々に蕾を開いたそんな光景を見るのが彼女には何よりの贅沢な時間で心は一段と弾むのだった風がそよぎ揺れるともなく揺れる樹木うたう小鳥たち切り株のベンチに座って彼女がページを走らせているのは漱石の『明暗』だったああでもないこうでもない果てはひょっとして思惑警戒心 猜疑心 打算自惚れ プライド嫉妬 保身エ
2023年4月4日 21:13
あまり言葉を交わさない親子だった何時からだろういやずっとずっと昔からふたりは戸惑いの日々でしたあなたに投げかけて踵を返した私の問いは最後まで分からずじまいのまま幕を閉じた伝えたかった想いは溢れ出るというよりゆっくりと時間をかけて抽出される重たい液体のようで誰にも見られたくもなくそれを自ら認めてしまうことが恥ずかしさでいたたまれないのでしたお別れ
2023年2月25日 13:42
都会とも田舎ともどこか違った風景のこの街はふと眺めるといつも朗らかな時を演出していた街路樹を歩く僕は悲しいほど美しい冬空に涙を誘われた幸せの羽根を乗せた気球がそこかしこに浮遊していてふと手を伸ばせば掴めそうな距離で僕の周りをくるくる回っていた本能と欲望の瞳は幸せを望みそれが快楽なのか幸せなのかぼんやりとした意識の中では認識を取り違えたまま残りの砂時計が物
2023年1月12日 22:17
あとどれくらいこの道は続いているのだろう私はいま生きているそうしてそれが永遠ではないことも生まれた瞬間から約束されている向こうの見届け人が遥か遠くに霞んでいた頃はとうに過ぎていつの間にか周囲のあちらこちらでその足音が聞こえてきたこの先あとどれくらい季節をめぐるのだろう冬の木漏れ日に天使と堕天使がはしゃいでいた人生の最終地点を歩くその背中は何を想う
2022年12月9日 21:36
また冬がやってきたあっという間に日が暮れていくその様は人生の短さをそっと忍ばせているようで時の贈り物は深淵だ未来への眼差しも季節ごと年を追うごとに暗転を変えて行く何ともなしに眺めた街の光景に心が揺さぶられたまらなく愛おしくそれでいて相変わらずつまらないことで右往左往して気が付けば去年の暮れとそれほど変わらない重たい荷物を抱えていたもうすぐ雪が降る
2022年11月4日 22:02
不思議なくらい悲しい記憶が似ているふたりだった君にエピソードを話すたびに「僕もそうだった。」と返ってきて同じ香りをどちらからともなく察知したのか偶然なのかあの日のふたりの出逢いを心から祝福したいいつだって帰りたい場所は街の喧騒から離れた森の小路耳を澄ますと川のせせらぎが聞こえてきて木々は小鳥の訪問を心待ちにしていたそこではあらゆる生き物が深呼吸を
2022年9月26日 22:22
夕暮れ時のひぐらしの声 熟れたトマトと揺れる風鈴クワガタの散歩と蝉の合唱ハイビスカスとかき氷汗だくのキミと冷やしそうめんスケッチブックに描かれた夏の日はやけにキラキラ輝いていて不意打ちに切なさがこみ上げる8月の終わりはしゃぎ疲れた子どもたちが豆腐屋のラッパの声を合図に帰路に着いた頃夏は静かに身支度を整えこの世にさよならを告げたひまわ
2022年8月21日 15:36
あなたが不自由だと思ったらそこから目を背けてやせ細った暗闇の道を生きるだろうあなたが自由だと思ったらここから羽を広げて果てしない空を駆けめぐるだろう自由だと感じる肌感覚は人それぞれだ分岐点であなたのもとへ舞い降りる幸福の遣いは思いがけない姿で現れるずっしりと重たい哲学書を持ってあなたの心の扉を叩いたのは都会の喧騒から離れた山奥で静かに暮らしているひとりの老人だ
2022年7月16日 14:34
海を見ていると心のわだかまりが消えていくここに存在していることを無条件に肯定してくれているようでふっと心がはしゃぐのだいつからだろうここからはぐれてしまうことを恐れるようになったのは太陽をオレンジ色に塗ったらよく見てみなさい太陽はそんな色ですか!と叱れた大多数の正解が教室の片隅で萎縮しているあの子を息苦しくさせていた周りが笑っていたら一生懸命笑おうみんな
2022年6月5日 17:28
深い深い森の中で太陽と仲良しの赤い実を毎日食べているおかっぱの少女が住んでいた少女を取り囲む大人たちは外の世界に忙しく少女が目に入らなかった耳に聴こえてくるのはキャンキャン吠えているようなメソメソ泣いているような音ばかりでそんな大人たちの苦い悲しみが少女の感受性に影響を与えていたまだ言の葉を知らない世界感情は行き場のない出口を探していて少女は口をパクパク動かし