あっかんべ~

★短編物語★

「もう なんでなん?」
ジーーー キュルキュルキュル
「頼む! お願い!」
ジーーー キュルキュルキュル
「うっそ~」
伸ばして伸ばして伸ばして
私は小銭入れに畳んで入れてあった千円札を一生懸命伸ばして再度入れてみた
ジーーー キュルキュルキュル
「あかんわ」
小銭入れをひっくり返し数えてみる
「あっ!あったわ〜 ギリギリ140円
けど 何が買える?
とにかく寒いねん 温まりたいねん
着込んで ネックウォーマーして手袋して お腹にカイロ貼ってても寒いねん 
お目当てはホットのゆずレモンやけど150円
缶コーヒーかぁ
仕方ない 手を打とう
これで電車が来るまで暖を取れる

ジャラジャラと小銭を流し込んだ
下から10円だけカウントされて残り全部出てきた
なぁ なんでなん?
早朝からケンカ売るのやめてくれへん?
ここは気持ちよー始めたいタイミングやん
じゃらじゃらじゃら
またや けど今度は50円食べたな
「食べたって言うな!」
うるさいわ
じゃぁ 飲み込んだな
「まぁ 許したろ」
何やねん その上から目線
「あったかいん欲しいんやろ 早入れや」
さっきから入れてんのにアンタが吐き出してんねやんか
「暇やから からかってみた」
もしかして さっきの千円札もか?
「あれは違う 機械が受け付けんかった」
もう 吐き出さんといてや
「お陰で早着いたの時間潰せたやろ」
まぁね
「もっと感謝の言葉ってないん?」
微妙やな
「文句多いな〜」
どっちがやねん
「早 押しや
買えるの限られてるやん」
せやかて本当はゆずレモン欲しかってんもん ペットボトルのが良かったんやもん
千円札さえ飲み込んでくれたら買えたのに
「しゃーないやんけ
細かく折り畳んで持ってくるからや」
ポチッ
ガタンゴトン
あ~温かい 幸せや
「人間って ええなぁ」
何が
「ホットのカフェオレ買えて幸せって思えるんやろ」
そりゃそ〜やん
こんなに寒いねんで 
ありがとね
カフェオレ温めててくれて
「当たり前やないか 
それが俺の仕事やから」
確かにそーやな
でも暑い夏も 寒い冬も ここにずっと居ってくれてるお陰で 家等は助かってるねん
感謝されてもええやろ
「ありがとう」
こちらこそ
「気を付けて行っといでな」
うん 私 今日初めて東京に行って来るねん
多分やけど これから月1くらいで行くから またヨロシクね
「そうかぁ 楽しみに待ってるわ」
ほな

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?