マガジンのカバー画像

企画もの

17
今まで参加させて頂いた企画の作品です
運営しているクリエイター

#夏の香りに思いを馳せて

ようやく出会えたあなたは(小説)#夏の香りに思いを馳せて

出会いは図書館の自習室への階段だった。受験勉強の帰りに毎回何かしらの本を借りていたのがみおりで、そのみおりを目で追っていたのが図書館で土日だけバイトをしている大学生のせなだった。 みおりはどうやら恋愛小説が好きらしく、作家の中でも恋愛ものを選んで借りていく。それはカウンター業務をしていればおのずとわかってくることだった。そしてせなは今日も目の前のみおりに無愛想に対応してしまう自分自身に嫌気がさしていた。 この図書館はカウンター業務があるものの、基本的には接客業とは違うため

おばあちゃんと夏祭りと焼き鳥の真相#夏の香りに思いを馳せて

数年前、おばあちゃんが施設に入るということで手伝いに行った。それまでショートステイとして利用していた施設に入居することになったからだ。すっかりがらんとしてしまった部屋の中には入居に必要なものが並べてあった。 パジャマをはじめとする衣料品や、施設で使うためのたくさんの日用品に名前が書いてある。みんな叔母さんの字だ。 庭にある緑の生い茂った植木鉢も目に入ってくる。おばあちゃんがいなくなったら、これからこの家はどうなるんだろうとどうしても考えてしまう。 その日は近所で夏祭りが